真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百六十話

 

 

 

 

魏に帰還してから次の日。俺は大将に呼び出されて玉座の間に来ていた。

 

 

「北郷一刀並びに秋月純一。貴方達を再び、魏の一員に戻します」

「ああ!」

「ありがたい限りですが……随分、急ですな。大将の事だから、難題を吹っ掛けて来ると思っていたんですが」

 

 

玉座に座り、脚を組ながら俺と一刀を見下ろす大将。開口一番に出された言葉に一刀は元気良く返事をして俺は面食らっていた。

 

 

「私としても、そうするつもりだったわよ。四年前に勝手に消えた事と帰還したのに一ヶ月も戻らなかった事と黙って天下一品武道会に参加した事と袁術の事と……まあ、様々な事を含めた無理難題をね。でもね、昨晩に警備隊と親衛隊、文官、民衆からも二人の帰還を祝う文と二人を魏の警備隊に戻して欲しいと言う嘆願書が大量に来たのよ。将も二人の復帰を願う声が多かったわ。そんな状態で認めない訳にはいかないでしょう」

「大将にしちゃあ甘い……と言いたいけど、それ以外にも理由があるんでしょう?」

 

 

大将からツラツラと俺と一刀を警備隊に戻す理由を話すけど、それだけが理由じゃあるまい。

 

 

「……貴方達を魏に戻さない方が国が荒れそうなのよ。一部では暴動が起きる予兆すらあったわ……まったく、帰って来て一日でこうなるなんてね……私が主義を変えてでも貴方達を戻すのだから、それ相応の働きをなさい。良いわね?」

「了解ですよ、大将」

「皆がそんな風に俺達の帰還を願ってくれていたなんて……」

 

 

大将の言葉に頷く俺と感動している一刀。でも、俺は二つ程、疑問が浮かんでいた。

 

 

「大将……本音は?」

「解決が難しそうな問題が幾つかあるのよ、そういうの得意でしょ?」

 

 

俺の質問に大将はにこやかに答えた。やっぱり、面倒なトラブル抱えてたから早めに解決する為に俺と一刀の帰還を早めたんだな。まあ、そんなこったろうとは思ったよ。昨日、秋蘭から大河の話を聞いた段階で予想は出来ていた。

 

 

「四年も不在だったんだ……存分に励まさせて貰いますよ。それともう一つ、疑問があるんですが」

「………何よ?」

 

 

俺がトラブル解決を受けると言うと大将は満足そうに頷いたが、俺がニヤリと笑みを浮かべながら疑問を口にしようとすると顔が曇った。

 

 

「なんで、玉座から降りようと……いや、体勢を変えないんで?」

「………貴方には関係ないでしょ」

 

 

俺の指摘に顔を背ける大将。あ、これはビンゴか。一刀も気まずそうにしてるし。

 

 

「恐らくだが……大将は俺と一刀の嘆願書を聞いた後に一刀と熱い夜を過ごしたんじゃないか?そして恐らく、激しすぎた為に大将は腰が抜けて立てなくなった。だから大将は立つ事も体勢も変えずに、その姿勢のま……まぁ!?」

「さっさと行きなさい!秋蘭から聞いてるのでしょう!大河の悩みを解決してきなさい!」

 

 

そのまま推理を口にしたら大将から絶が飛んできた。だが、力が入らない状態で投げられても大した速度じゃなかったけど流石にビビった。でも顔真っ赤で可愛いなぁ大将。

 

 

「そんじゃ、大河の事をなんとかしますかね。一刀、警備隊の現状を見ておいてくれ。これ以上、大将とイチャイチャするなよ?」

「純一さん……なんか、怒ってます?」

 

 

俺は投げられた絶を一刀に手渡す。

 

 

「怒ってる?そんな訳無かろう。俺が桂花とイチャイチャ出来なかったのに、テメー等はイチャイチャしてやがったのか、なんて思ってないから安心しろ」

「純一さん、本音が駄々漏れです……なんて言うか、すいません」

「あら、嫉妬?だったら早く解決する事ね」

 

 

俺がボヤきながら玉座の間を後にしようとしたら一刀から謝罪され、大将から煽られた。マジでしっとマスクにでもなってやろうか。

 

 

「しかし……どうするかな」

 

 

玉座の間を出た俺はポツリと呟く。悩みの種は大河だ。昨晩の段階で秋蘭から聞いた大河の現状は酷い物だった。

 

大河は俺と一刀が消えた後、がむしゃらに鍛練に打ち込む様になったらしい。端から見ても無茶だと思える鍛練を。そんな無茶を止めさせて、立ち直らせたのは鳳統らしいのだが、二人は相思相愛にも係わらず、恋人にならないのは俺と一刀の事が負い目になって恋仲には至らなかったとか。そんな状態が四年近くも続き、大河は以前の様な明るさが無くなってしまった。元々大河は恋愛には奥手で、鳳統は恥ずかしがり屋の引っ込み思案だったけど、俺達の一件で拍車が掛かった感じになったのだろう。

平和祭も俺や一刀が居ないのに楽しむなんて出来ないと参加していなかった。天下一品武道会にも不参加。その結果、俺の昨日の復帰劇を見れなかったと、めちゃくちゃへこんだらしい。その結果、現在も意気消沈中で今までの事もあり、魏の将や警備隊の面々では励ましたりしても効果がなかった。ならば、トラブル解決の達人に頼もうとの事だ。

 

 

「真面目な大河らしいと言えばらしい……か」

 

 

俺は煙草に火を灯して、大河の凝り固まった頭をどう解してやろうかと思考を走らせた。まあ、ぶっちゃけ俺と一刀が居なくなったのが原因なんだし、俺がやるしかないよな。

 

 




『しっとマスク』
『突撃!パッパラ隊』の登場キャラクター。
目の周りに炎の縁取りが施された白マスクを装着したプロレスラーの様な格好をした戦士。
イチャつくカップルを殲滅する為に生まれた戦士で理不尽な理由を付けてはバレンタインやクリスマス等、恋人がイチャつくイベントを潰して回るテロ行為を辞さない。


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