真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百六十五話

 

 

 

 

所変わって俺の部屋で二人きりの甘い夜を……なんて訳もなく。

 

 

「だから……美羽の事は誤解だっての」

「でも一緒に寝たんでしょ」

 

 

あれから桂花の誤解を解こうと頑張っていたのだが難航していた。美羽が夜寝る時に一人で寝るのが怖いと言うので荀家に滞在していた時は添い寝をしてやっていたのだ。

美羽はそれを純粋に『安心した』と言いたかったのだろうが、周囲はそう認識しなかったのだ。現に部屋に戻るまでに何人かの視線が痛かった。桂花の誤解を解いたら明日から皆の誤解を解きに回らないとなぁ。

 

 

「つーか、なんでその話を聞いたんだよ」

「母様と袁術とお茶をする事になって、アンタが荀家に滞在してた時の事を聞いたのよ。それで袁術からアンタに助けられた話とか、荀家でアンタに尽くしてたとか自慢気に話してたわよ……」

 

 

俺の疑問に桂花はギロッと俺を睨みながら告げる。成る程、荀緄さんが絡んでる辺り分かっていて見逃したな。いや、心の中で笑っていたのが正しいか。

 

 

「桂花、荀緄さんはその時、何か言ってたか?」

「袁術の話を楽しそうに聞いてたわよ。ええ、本当に楽しそうにね……」

 

 

怒り心頭の桂花は気付いてないんだろうなぁ…… 荀緄さんは荀家での事は当然把握してるから美羽の事は微笑ましく見ていて、勘違いしてる桂花の事を見て楽しそうにしてたんだろう。

 

 

「さっきも言ったが誤解だ。美羽は一人で寝るのが怖いと言うから添い寝をしていただけで……」

「…………もん……」

 

 

俺の何度目になるか分からない事情説明と言う名の言い訳に桂花は座っていた椅子から俺の寝台に寝転がると何かを呟いた。俺も立ち上がり、寝台に寝転んだ桂花の顔を覗き込むと桂花は涙目で頬を膨らませていた。

 

 

 

「私だって……寂しかったもん……」

「ごふっ!」

 

 

俺の心臓をゲイ・ボルク・オルタナティブが貫いた。久しぶりに吐血しそうになった。こんちくしょう、どんだけ可愛いんだよ!禁欲生活をしていた俺には破壊力があり過ぎる!

 

 

「ああ、もう……」

 

 

俺は自分の髪をわしゃわしゃと乱暴に掻く。前に桂花は俺に『私の心を掻き乱す』とか『アンタの所為で仕事に集中出来ない』とか言ってたけど桂花の方がよっぽどだよ。

 

 

「桂花……俺、大将から今の魏の抱えている問題を解決していけって言われてるんだ。大河の事とか警備隊の事とか、三国の同盟の事もだろう。轢いては蜀や呉の事にも拘らせるつもりなんだろうな」

「ちょっと、何を……ひゃっ!?」

 

 

俺は寝台に片膝を乗せ、寝台に寝転ぶ桂花に覆い被さる様な態勢になり、指を絡ませながら右手を握る。指を絡ませながら手を握られた桂花は驚きと、これから先の事を期待したのか妙な悲鳴を上げた。

 

 

「大将から『桂花とイチャイチャしたいなら早く問題を片付ける事ね』なんて言われたけど……大河の事は解決したんだし、少しくらいは……良いよな?」

「ば、馬鹿……華琳様の命は幾つかあったんでしょ……一つ片付いたからって……んむっ!?」

 

 

俺の言葉に反論しようとした桂花の唇を奪う。突然の事態に体が強張る桂花。俺はそれを無視せてキスを続けた。

 

 

「ん、んぅ……ぅぅ……」

 

 

キスしながら舌を絡ませる。驚いていた桂花だが今は受け入れてくれて、されるがままだ。桂花の強張った体から力が抜けていくのがわかる。

 

 

 

「あ……あきつきぃ……」

 

 

濃厚なキスを終えると桂花はトロンとした表情で俺を見詰めている。うん、少しだけなんて言ったけど、こんな桂花を目の前にしたら『少し』なんて無理です。

 

 

俺は桂花を見詰めながら繋いだ手を先程よりも強く握ると桂花も恥ずかしそうにしながら顔を赤くして握り返してくれた。

それは桂花なりの返事となり……桂花は今夜、俺の部屋に泊まる事が確定した。

 




『ゲイ・ボルク・オルタナティブ(貫き穿つ死翔の槍)』
「Fate/Grand Order」に登場するスカサハの対人宝具。
クー・フーリンが持つゲイ・ボルクと同型の二本の槍で、刺し穿つ死棘の槍で敵の動きを止め、突き穿つ死翔の槍を思わせる槍の投擲によって突き穿つ連続攻撃

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