真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百六十七話

 

 

 

 

美羽のメイド服姿に「いいね!」と親指を立てた後、俺は再び大将の居る玉座の間に戻ろうと歩いていた。

どうやら、俺が大河のトラブルを解決している最中に美羽の身の振り方が決まったらしいので、何故俺に話がなかったのかを聞く為にだ。まあ……十中八九、大将のイタズラだろう。前からこんな感じで意地の悪い事をしてくれたからな。因みに月と詠は美羽に仕事を教える為に休憩室に残った為に俺は一人で行動している。

 

 

「ほれ、どんどん行くで一刀っ!」

「うわ、ちょっ……危なっ!」

 

 

近道にと中庭を通ろうと思ったら剣戟が聞こえてきたので、ちょっと顔を出して見ると一刀と霞が戦っていた。霞はいつもの飛龍偃月刀ではなく刃を落とした模擬刀だ。一刀も同じ物を持って戦っている。ほう、思ったよりも勝負になってるな。霞の剣を一刀は悲鳴を上げながらも、しっかりと受け止めている。

 

 

「うぅむ……よもや北郷が霞と模擬戦出来る程になっているとは」

「多少、腰は引けているが太刀筋は以前よりも良くなっている。見事な物だ」

「隊長……」

 

 

周囲にはギャラリーも出来ていて春蘭、秋蘭、凪が一刀と霞の模擬戦を見ながら評価を下している。春蘭達は知らない事だが一刀は天の国……即ち、現代では天才と評される程に剣道が強くなっていた。まあ、この世界で強くなったから現代で通用する様になったのが正しいのだが、一刀はあれから、この世界に帰ってからの事を考えて剣道にのめり込んでいて、俺の仕事の助手をしていた時には荒事も少なからずあった。それで度胸も付いたんだろう。

 

俺は一刀の成長を見ていたから驚きはしないが春蘭達からしてみれば、戦いに向かない筈の一刀が手加減してるとは言っても霞と戦えている事に驚きを隠せないって感じだな。

 

 

「一刀……」

 

 

おっと……なんて事を思っていたら大将が柱の影から姿を現して一刀と霞の戦いに魅入ってる。暫く会わない内に逞しくなった一刀の意外な成長に驚かされてるな、アレは。

 

 

「大将、一刀は強くなったでしょう?」

「純一、美羽の事は解決したのかしら?」

 

 

背後から投げ掛けた俺の問いに大将は振り返らずに答えた。一時も目を離したくないってか?乙女だねー。だって玉座の間か執務室に居る筈なのに一刀の稽古を聞き付けて見に来てるんだもんよ。まあ、今は余計な事は言わんとこ。

 

 

「最初から解決済みだったんでしょう?まあ、その辺りは後々追及させて貰いますが、もうちょっと前で一刀の勇姿を見学したらどうだ?」

「そうね……警備隊の隊長の今の実力を測るには丁度良いかもね」

 

 

俺の問いにスタスタと先に歩き始める大将。まったく素直じゃないんだから。

 

 

「華琳様!」

「華琳様、北郷ですが……」

「ええ、見ていたわ。強くなったのね……一刀は。手加減してるとは言っても霞と渡り合うのは驚いたわ」

「はい。私も以前、隊長と手合わせした時に感じましたが隊長は武術の才能があると思います。あの太刀筋を見る限り、隊長は天の国で余程鍛錬を積んだのですね」

 

 

中庭に現れた大将を出迎える春蘭と秋蘭。凪は大将の言葉に頷きながら同意していた。俺は黙って大将の後を追った。美羽の事を問いただしたい気分ではあるものの、これから面白い物が見れそうだからだ。

 

 

「隙ありやっ!」

「わあっ、まいった!」

 

 

霞がビシッと剣を突き付けると一刀は降参した。まあ、剣道で全国レベルになったとは言っても三国武将が相手じゃそりゃ勝てんわな。

 

 

「なんや、強くなったなぁ一刀!本格的に鍛えりゃ本当に将に成れるかもしれへんで!ウチが毎日、稽古付けたろか?」

「霞の稽古に毎日付き合ってたら、強くなる前に倒れちゃうよ。純一さんじゃないんだから」

「でも、本当にお強くなられましたね、隊長!」

 

 

霞は一刀との模擬戦を終えて上機嫌になっている。嬉しかったんだろうなぁ、惚れた男が自分と同じ土俵に上がれるかも知れないってのが。

 

 

「はははっ俺も警備隊の隊長なんだから、それに恥ないくらいの強さは持とうと思ったんだ。前から純一さんには頼りっぱなしだったし」

「そうだったんですね……隊長の天の国での話も聞いてみたいです」

 

 

謙虚な一刀に凪の一刀に対する評価は更に上がってるな。まあ、元々凪は一刀ぞっこんだから今更だけど。

 

 

「うん、話したいけど夕御飯の時にでもしよう。純一さんが城内の問題解決に勤しんでるから俺は警備隊と街の様子を見に行くつもりだったんだ」

「あ、それで警備隊の詰所から出てきたん?ごめんなぁ、邪魔してもうたわ」

 

 

一刀は今の警備隊の状態を見てから街に行く予定だった様だ。霞は久しぶりに会えた一刀に仕事よりも稽古に付き合わせた事を詫びていた。

 

 

「いや、良いよ。警備隊の連中が揃うまでに素振りをしていたのも緊張してたからだったんだし。お陰で緊張もほぐれたよ。じゃあ行ってきます」

「うん……気ぃつけてな」

「ああ……久しぶりの街なんだ。迷子になるなよ?」

「え、あ……はい、ご武運を」

「華琳様の為に働いてこい」

「報告……楽しみにしてるわよ」

 

 

一刀の「行ってきます」と共に繰り出された、爽やかな笑顔。仕事に行く前に緊張していたと言う割には頼り甲斐のある雰囲気になった一刀に霞、秋蘭、凪は呆けていた。春蘭はいつも通りな感じだったが大将はちょっと素っ気ない感じの対応に見えたが……いや、これはもしや……先日の事もあってニヤけるのを我慢してるな。

 

 

「惚れた……いや、惚れ直したか?」

「「「「っ!」」」」

「何を言っている。当然ではないか」

 

 

俺の一言に大将、凪、霞、秋蘭はギクっと体を震わせた。ビンゴ、大当たりだな。そして通常運転の春蘭。いや、ある意味凄いよ、その対応も。

 

 

「そっかそっかー……いやぁ面白い事になりそうだなぁ、うん」

「副長……副長がそんな顔をする時は大抵、悪巧みをしている時ですよね?何を考えているんですか?」

 

 

いやいや、こんな面白くなりそうな状態を放っておくなんて出来ないよ。大河と龐統の事もそうだけど……ちぃとばかり背中を押してやろうじゃないの。

 

 




ちょっと長くなりそうなので分割。

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