真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百七十三話

 

 

あれから数日。やって来ました隠密訓練。俺と一刀は隠密訓練に参加する将と兵隊達を連れて甘寧と周泰が潜む森へと移動している。

 

 

「うぅ……遂にこの日がやって来てしまった……」

「また、あの恥ずかしめを受けるのか……」

「アレで彼女に嫌われそうになったんだよなぁ……」

「くやしい……でも……」

 

 

「兵士達の顔が一様に暗いですね」

「最後の奴はちょっとおかしい気もするがな」

 

 

兵士達の呟きを耳にしながら先を歩く俺と一刀。その顔は死刑を待つ囚人の様になっている。まあ、兵士どころか将の顔色も悪いんだけど。

魏からは秋蘭と流琉。蜀からは馬超と馬岱。因みに呉からは参加無し。何故ならば甘寧と周泰は呉からの参加だし、手の内を知っているから狩られる側は不参加となっているのだ。逃げたとも言う。

 

 

「久しぶりだね、純一さん!」

「馬岱か、久しぶりだな。元気……みたいだな」

 

 

一刀との会話に参加して来たのは馬岱だった。過去に戦った経験はあったが元々悪い印象は互いに無かったから馴染むのも早かった。しかし……明るく振る舞ってはいるが顔色は悪い

 

 

「馬岱もこの訓練に参加した事があるのか?」

「う、うん……」

 

 

俺の言葉に明らかに暗い表情になる。余程のトラウマが植え付けられたなコレは。

 

 

「なんて書かれたんだ?」

「い、言えないよ……」

 

 

俺の疑問に馬岱は顔を真っ赤にして一歩下がった。本当に何を書かれたんだか……

 

 

「純一さん、下手したらセクハラ扱いになりますよ。なんか余程の事を書かれたって、みんな口にしてましたし」

「警備隊の兵士達も被害者だったって言ってたか。まあ、この話題は一旦終わりにしよう」

 

 

一刀からの指摘に迂闊だったと反省する。馬岱は一歩下がった状態で顔を真っ赤にしたままだった。明るい小悪魔みたいな馬岱が羞恥に駆られてる……うん、ギルティな光景だ。だが今の問題は馬岱よりも……

 

 

「………っ」

 

 

見られとる……俺、めっちゃ馬超に睨まれてる。四年前の恨みは未だに続いていた様だ。思えば甘寧と馬超って俺が恨みを買ったであろう将のツートップだ。訓練に乗じて消されかねないな今日。

そんな風に雑談と考え事をしていたら甘寧と周泰が潜む森に到着。

 

 

「さて……これから隠密訓練に参加するに辺り……今回から新しく追加された事を説明しよう。訓練に参加している皆に与えられる権利として報酬が定められた」

「あ、新しく追加された報酬?」

「なんなんだ?」

 

 

森に入る前に秋蘭から俺が案を出して決まったルールの説明が入る。大将に話を通したら凄い笑顔になってたからなぁ。

 

 

「我々はいつも隠密訓練で狩られる側になっていたが、逆に森に潜む甘寧と周泰を捕まえた場合……捕まえた者を好きにできる権利が与えられる事となった。つまり将だろうが兵士だろうが甘寧か周泰を捕らえる事が出来たら彼女達を好きにしても良いとの事だ。ただし、常識の範囲内でのはなしになるがな」

「「「お、おお……おおおおおおおおおっ!!」」」

 

 

秋蘭の説明に兵士達が湧き上がった。そう今回から追加されたルールに『狩られる側が狩る側を仕留める・捕らえた場合、捕らえた者を好きに指示を下せる権利』が与えられる事になったのだ。

 

 

「このルールを考えたの純一さんですよね?なんで、このルールを盛り込んだんですか?」

「狩られる側が狩る側になってしまえば冷静な心境にはならないだろ。少しでも揺さぶりを掛けられればと思ってな。ついでを言うなら兵士達のテンションも上がっただろ。どうせ訓練するなら、やる気を出してもらった方が良いだろ」

「流石は副長!」

「我々の事を考えて下さった!」

「そこに痺れる憧れるぅ!」

 

 

 

一刀が俺の発案だと言う事を即座に看破した。付き合いが長いだけの事はあるな。俺が報酬を取り決めた事が兵士達が湧き上がる。それと最後の奴、俺は無理矢理キスとかしないから間違えんな。

 

 

「因みにだが……甘寧と周泰にもこの件は伝えられてある……『そんな欲望を抱いた奴から消していくから覚悟しておけ』との事だ」

「俺も毎回の事だが……将相手に夢を抱くなら命懸けだからな?」

 

 

秋蘭がコホンと咳払いをしながら甘寧からの伝言を伝えて、今まで種馬扱いされ散々死にかけた俺の言葉に兵士達のテンションは分かりやすく落ちた。ほぼ全員が渋い顔をしている。

 

 

「なんで、ろくブル風リアクションなんですか……これ仕込んだの絶対に純一さんでしょ。他国にまで変な文化を伝えないでくださいよ」

「いやぁ……面白くて、つい」

 

 

兵士達のリアクションが俺の仕込みである事を見抜いた一刀。実は森に来るまでの間に蜀の兵士達や魏の若者達と話をした時に『天の国』の話題の時に少しだけ面白がって教えてみたのだ。そしたら皆マネをするもんだから笑っちゃったよ。

 

 

「ま、棚ぼたでも捕まえられる事を祈ろう。そもそも訓練なんだから真面目にな?」

「「「はいっ!」」」

 

 

俺が森を指差しながら告げると兵士達は元気よく返してくれた。よし、そろそろ森に入るとしますか……それはそうと馬超からの視線がより一層厳しくなったなぁ……まあ、仕方ないけど。

 

 




『そこに痺れる憧れる』
「ジョジョの奇妙な冒険」第一部でジョナサンの恋人のエリナに無理やりキスをしたディオを称えた、取り巻き二人の一言。


『ろくブル風リアクション』
「ろくでなしブルース」で良く見られるリアクション。誰かがボケたり、奇抜な事が起きると周囲のキャラが『渋い顔をしながら舌を出して手を上げる』ポーズをする。

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