真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百七十五話

 

 

 

隠密機動訓練は俺の勝利で幕を閉じた。これにより甘寧と周泰の罰ゲームが決定した。そして甘寧と周泰に仕留められた連中は本来なら体の一部に落書きをされる罰ゲームを受けるのだが俺が勝利した事で罰ゲームは免れた。その事はめっちゃ感謝された。まあ、だいばくはつの巻き添えを食らわせた事は抗議されたけど。

 

 

「ああ、ちょっとその書類取って」

「…………ああ」

 

 

隠密機動訓練の翌日となった本日。俺は専用の仕事部屋で書類仕事に勤しんでいた。五年もいなかったんだ、やる事は山の様にある。処理をする順番を決めて資料を読み解きながら作業を進める。俺は側に控えているメイドに欲しい資料を頼むと、そのメイドさんは不満たっぷりに間を空けてから返事を返す。おいおい、その服を着ている人間が不満そうな顔をしちゃダメだよ。スマイル、スマイル。

 

 

「甘寧……不満は分かるが罰なんだから」

「分かっている……だが私はこんなヒラヒラした服なんて着た事が無い」

 

 

そう今現在、俺の側でメイド服に身を包んでいるのは甘寧なのだ。俺が甘寧と周泰に課した罰は『一週間、甘寧と周泰は俺と一刀のメイドとして働く事。その際に仕事の手伝いもする事』としたのだ。

甘寧は俺に、周泰は一刀に仕える事になり、二人には月と詠とは違うメイド服を着てもらった。うん、思った通りめちゃくちゃ似合ってる。甘寧はクールなメイドで周泰は、にこやかメイドって感じだな。

 

 

「側仕えならまだ良い……だが服まで変える必要があるのか?」

「それも仕事の一環だ。後で必要になるから。それに呉の人達も似合ってるって言ってただろ?」

 

 

罰ゲームの側仕えはまだしもメイド服に不満の甘寧。呉の人達にメイド服を披露した際に顔を真っ赤にしていた。だが、そんな甘寧の姿を皆が褒めた。それが恥ずかしさを加速させたのか即座に着替えようとしたので罰ゲームの最中はそれを着ている様に厳命した。まあ、孫策と祭さんは笑いを堪えていた感があるが。

メイド服を着た甘寧は髪をお団子じゃなくて髪を下ろしたストレートになっているのだが似合ってるな。

 

 

「貴様……何をニヤニヤしている。サッサッと仕事を済ませろ」

「うん、見ていただけだから許して欲しい。それとメイドならもう少し優しい指摘にしようか」

 

 

何処から取り出したのか甘寧は刀を俺の首に添えている。顔が赤くなっている辺り思考を読まれたか?だって似合ってるんだもの。

 

 

「失礼します、秋月さん。そろそろ会議の時間……あら、似合ってますね、思春さん」

「もうそんな時間か。甘寧、次は別の場所での会議だから移動しよう」

 

 

俺の首に甘寧の刀が添えられているのだが栄華は動じなかった。この手の状況に慣れているから、いつもの事と処理された様だ。いや、それもどうなんだろう。

 

 

「会議?警備隊の会議か?」

「いんや、魏のおしゃれ同好会の会議。主に服の意匠を考えたり、様々な意見を聞いて改善したりする会議かな。この会議は街の経済にも関わってくる話になってくるな」

 

 

甘寧の疑問に俺は立ち上がり、ジャケットを羽織りながら答える。俺の返答を聞いた甘寧は何故か考える仕草を見せた。

 

 

「貴様は警備隊の副長ではないのか?何故、服の意匠を貴様が考える。それに朝から貴様の側仕えしていて思ったが、何故街の警備隊の副長が親衛隊の血風蓮の運用を考える?何故、からくり同好会とやらの予算を話し合う?何故、書庫に納められる本の選抜をした?何故、料理の調理法の指導をした?明らかに役職と仕事が釣り合っていないぞ」

「客観的に言われると、なんで警備隊以外の仕事が舞い込んで来てるのか不思議でならないな……」

 

 

甘寧の指摘に俺も首を傾げる。確かに警備隊の以外の仕事をなんでこんなにしてるんだろう?前からこうだったから疑問にも思わなかったな。まして俺が不在だった頃の状況を確認する為に手広く資料を読んだから甘寧の疑問も尚更である。

 

 

「どれも秋月さんが創設から話に絡んでいるからでしょう。貴方が絡まなかったらここまで大きな話になっていませんよ」

「何処にでも首を突っ込むのは同じか貴様」

「仕事を安請け合いしすぎた感じがして来た。俺は本来、責任者なんか似合わないんだが」

 

 

冷静になってみると、ただのサラリーマンだった俺がこんな様々な所の責任者になってるのはおかしいって。ちょっと仕事を見直したくなってきた。

 

 

「因みにですが……お姉様から『純一は責任者から外す気は無いから励みなさい』と言伝を預かっています。お姉様も秋月さんの意匠の服を楽しみにしていたご様子でしたので」

「流石、大将……アッサリと逃げ道を塞ぎやがった」

「そんなに素晴らしいのか貴様の服の意匠は?正直、私は服には興味が無いから分からんな」

 

 

栄華から告げられた大将の一言。相変わらず俺の思考の先読みが完璧である。そんな俺に甘寧は『服に興味が無い』と言う。

 

 

「それなら安心しろ甘寧。これから行う会議で甘寧には俺の意匠した服を着てもらうから。服への興味も湧くかもしれんぞ」

「………なんだと?」

 

 

俺の一言に固まる甘寧。そりゃそうかこれから甘寧には着せ替えのモデルになってもらうのだから。楽しみだなぁ……俺は今、我ながら悪い顔をしていると思う。

 


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