真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百八十四話

 

 

◆◇side桂花◆◇

 

 

 

 

私は今……非常に悩んでる。仕事の事?戦の事?内政のこと?どれも違う……私を悩ませる1番の要因、それは……

 

 

「もう、意固地になっちゃってー」

「仕事の邪魔をするなら消えてくれないかしら?」

 

 

何故か私の部屋で酒盛りをする呉王に頭を痛めていた。あの馬鹿が城に侵入した賊に斬り殺されかけ、その容疑者が孫堅なのだと疑いがあってから孫策と周瑜があの馬鹿の所へ入り浸り、真名を許されるまでに至っている。

それはまだ良い。人の心にスルリと入り込むのは、あの馬鹿がいつもする事だ。性格的にも孫策と相性が良いのも腹立たしいが認めよう。でも、私が雪連に絡まれるのは納得がいかない。

 

 

「純一が寂しがってるんだから会いに行ってあげればいいのにー」

「あの馬鹿には良い薬になるわよ。ちょっとは懲りれば良いのよ」

 

 

雪蓮が私の頬を指で突いてくる。馴れ馴れしいこの態度に私は仮にも呉の王に接する態度じゃないとは分かっているけど、口調が荒くなるのは仕方ないと思う。

そう……あの人垂らしは呉王ですら、たらし込んでいるのだ……それに見ている限りでは祭は公言しているが冥琳や思春もあの馬鹿には惹かれている様にも見える。

 

 

「素直じゃないわねー。この間みたいに『それは私の役目よ!』くらい言ってくれないと張り合いがないわよ」

「何よ、張り合いって。それよりも国に帰って仕事しなさいよ、呉王」

 

 

ケラケラと笑う雪蓮に私は呉に帰れと促す。明らかに私を弄ろうとする姿勢にイライラしていた私は仕事をしない呉王を睨む。

 

 

「私の跡目として蓮華に仕事を任せてるのよ。他の子達にも仕事を徐々に任せなきゃだから私はギリギリまで手を出さないと決めてるの」

「あの馬鹿が仕事をサボる時の言い訳と同じよね」

 

 

クイッと酒を呷る雪蓮。どうにも雪蓮の思考や行動があの馬鹿に似通ってイライラする。私がこんな風にイライラしてるってのに、あの馬鹿は……

 

 

「純一の今の状態は桂花もよく分かってるでしょ。動けないんだから純一からは会いに来れないのよ。貴女も仕事をサボって愛しい人に会いに行けば良いじゃない」

「私はアンタと違って華琳様に任された仕事に責任を持ってるんのよ。あの馬鹿には態々、会いに……行くなん……て……」

 

 

雪蓮の言葉を否定しながら私の手は止まってしまう。気が付けば体が震えていた。ふと顔を見上げると雪蓮の真面目な顔が目の前にあった。

 

 

「あの時、確かに私は桂花を煽ったけど無意味に煽った訳じゃないのよ?私は正直……四年前のあの時から純一の事は気に入ってたからね。桂花がそんな態度をするなら私が純一の事を貰っちゃうわよ」

「何よ、あの馬鹿は私のよ!」

 

 

雪蓮の言葉は挑発だとは分かっていても反応してしまう。私はバン!と机を叩きながら立ち上がる。

 

 

「その割には純一の事を名前で呼ばないのね。あの日から桂花ったら純一の事を秋月とも呼ばずに『あの馬鹿』なんて呼んでるし」

「それは……あの馬鹿にはそれで充分だからよ」

 

 

雪蓮の試す様な表情に私は椅子に座り直して溜息を溢す。こんな事を言いたい訳じゃないのに私の口からは自然と悪態が出てしまう。秋月の事を名前で呼びたいのに、いざ口にしようとすると私は躊躇ってしまう。

 

 

「私が言うのもなんだけどね……居るのが当たり前なんて思わない方がいいわよ。桂花も四年前に経験したから分かるでしょうし、私も母様が居なくなった時は辛かったもの……再会できるかもしれない話が上がったらこんな形だったけど」

「それは……わかってるわよ」

 

 

愛しい人や親しい人が居なくなってしまう恐怖は魏の者ならば全員が知っている。特に目の前で秋月が消えてしまった私にとっては尚更だ。秋月は以前、心の傷は天の国では『とらうま』と言うのだと教えてくれた。虎と馬が心の傷ってどう言う意味なのか聞きたかったけど時間が無かった。

 

 

「ねぇ、桂花……さっきも言ったけどね私は純一が気に入ってるの。それこそ呉に連れて帰りたいくらいにね。桂花がそんなんじゃ冗談抜きで連れて帰るわよ?」

「そんなの……勝手にすれば……」

「副長が逃げたぞー!」

「どんだけ回復が早いんだ、あの人!?」

「捕まえろ!逃したら警備隊の責任になるぞ!」

 

 

雪蓮の発言に私は勝手にしろと言おうとしてしまったがバタバタと廊下を複数の人間が叫びながら走るのが聞こえた。そして、その会話の内容から重傷の筈の馬鹿が脱走したのだと理解する。

 

 

「あの馬鹿!」

「純一ったら元気ねー。捕まえるなら私も行こうかしら」

 

 

私が部屋を飛び出すと雪蓮も付いてきた。本当に心配させてばかりなんだから、あの馬鹿は!

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇side雪蓮◆◇

 

 

 

 

純一が医務室から逃げ出した事を聞いた瞬間に部屋から飛び出した桂花に私は笑ってしまう。何故ならば口や態度で散々、純一に悪態をついていた桂花が純一を真っ先に心配して仕事を放り出して部屋を飛び出したのだから。

 

 

「本当に……妬けちゃうわね」

 

 

純一と桂花は通じ合っている。桂花は口では喧嘩をしたり、そっぽを向いたりしてるけど心の底では純一を心から心配してる。純一は桂花の罵詈雑言をサラッと聞き流してる上に、それでも桂花を愛する事に迷いがない。

 

 

「待つのだ、治療だと言うておろうが!」

「待ちなさいよ、うっふん!」

「華佗抜きでテメェ等みたいな奴等の怪しげな治療を受けられる訳ねーだろ!食らえ、激烈光弾!」

 

 

そんな事を思っていたら中庭で純一が卑弥呼と貂蟬に襲われて戦っていた。この大陸一と言われている華佗の助手じゃなきゃ怪しさ抜群だもんね。純一の放った技は私や桂花が居る様な離れた場所からでも激しい光が見えるくらいの凄い技だった。

 

問題なのは気弾が命中したにも関わらず平然とした様子で立っている卑弥呼と貂蟬の存在かしら。

 




『激烈光弾』
ドラゴンボールのキャラ、ピッコロが使用した技。
両手を胸の前で構え、指先だけを合わせて掌に大きな光弾を生み出して撃ち出す技。威力も凄まじく戦いの場となっていた孤島の三分の一を消し飛ばす破壊力を秘めていた。

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