◆◇side一刀◆◇
「また医務室に逆戻りとは……純一さんも強くなったと思ってたんですけど」
「重傷だった上に枯渇気味だった気を振り絞れば当然です……私としては副長の技をマトモに浴びて平然としている卑弥呼さんや貂蟬さんが信じられないんですが……」
「十二の難行を乗り越えたヘラクレスの化身なんじゃないか、アイツ等……」
卑弥呼と貂蟬と戦った純一さんはまた医務室に逆戻りをしていた。いや、正確には医務室で寝ていた純一さんを卑弥呼と貂蟬が治療と称してナニかをしようとしたらしく純一さんが逃亡の後にバトルに発展し、気を使い果たして倒れた……って言うのが事の顛末らしい。
監視役の凪が止めたにも関わらず、卑弥呼と貂蟬は純一さんに迫ろうとして、純一さんは正に気力を振り絞って激烈光弾を放ったのだが二人はノーダメージだったみたいで純一さんは別の意味で凹んでる。
「秋月の技が単純に見た目だけで威力が無かったのではないのか?」
「いえ、私は目の前で見てましたけど副長の気弾の威力は以前よりも遥かに上がっています。それをマトモに食らって傷も付かなかったので恐らく私の気弾でも卑弥呼さんや貂蟬さんに傷を付けるのは不可能かと」
見舞いに来ていた春蘭が純一さんの力不足を指摘するが凪が否定した。それを加味して考えると、あの二人の異常性が際立つな。
「あの連中に気を用いた技は効きにくいのかも知れんな……あのガタイならマッハ突きでも食らわせてみるか……」
「それを放ったらアンタの手の方が潰れるでしょ。そう言えば卑弥呼と貂蟬は?」
「ああ、奴等ならば華琳様の御前に召集されたぞ。事情聴取だそうだ。華琳様の護衛には恋や華雄、秋蘭が揃っている。私も参列したかったが私は秋月の護衛を言い渡されてな。それと桂花や風、凛の軍師や雪蓮も呼ばれていた様だが」
純一さんの考えに自爆要素が含まれている事にツッコミを入れる。その純一さんを重傷に追い込んだ張本人二人の姿が無いと疑問に思うと春蘭が意外にも答えを知っていた。春蘭を事情聴取から外したのは話が進まなくなりそうだからだな。恋は静かに話を聞くだろうし、華雄と秋蘭は将として冷静沈着に対応出来るからだろうし。まあ、純一さんの護衛も必要だから采配として春蘭が来たって事か。件の襲撃者の事もあるし……それと桂花はいつまで怒ってんだろ。真っ先に見舞いに来ると思ってたんだけど。
「しかし、華佗が居ない時に卑弥呼と貂蟬が暴走するとは思わなかったな」
「一応、治療の為だと言っていたみたいですが…… 華佗さんも関係しているのでしょうか?」
「アイツ等には感謝してるし、一定程度の信用もしているが今回は身の危険の方が優ったよ。お前等想像してみ?浅黒い筋肉から湯気が出る程に興奮しながら迫られる恐怖を」
「私なら迷わず斬るな」
卑弥呼と貂蟬の行動に疑問を持った俺と凪だが純一さんの一言に顔を青くした。春蘭は真顔で斬ると断言した。
「まあ、卑弥呼と貂蟬の事とか襲撃者の事とかも気になるけど……俺としては大河の事を気に掛けたいんだがな」
「大河の?何かあったんですか?」
「師でありながら弟子より弱い事を気にしているのか?」
フゥーと息を吐きながら寝台に寝込む純一さん。大河の事で悩んでいたらしい。春蘭のストレートな言い分に「うっ……」と言葉を詰まらせる純一さん。
「そっちの事は兎も角……大河と龐統の事でな」
ハァーっと純一さんは深い溜息を零した。大河の事は警備隊の報告とか聞いたけど特に問題なさそうだったけど何かあったのかな?
『バーサーカー(Fate/stay night)』
第五次聖杯戦争に呼び出されたバーサーカーのサーヴァント。真名はヘラクレス。ギリシャ神話における二代英雄の一人。
宝具の一つとして『十二の試練』という物があり、神話においてヘラクレスが生前踏破した十二の偉業の具現化した。現界中致命傷を負っても11回まで蘇生する事が出来る、究極の鎧と化した彼の肉体そのもの。
コレを攻略するには12回まで殺し切るか又は12の命を同時に刈り取るしかないとの事。
『マッハ突き』
刃牙シリーズで愚地克巳が使用した技。
背骨から足の親指、手首に至る関節。全身二十七箇所を回転、連動させる事で驚異的な加速を生み、瞬間的に音速に達する正拳突き。
烈海王には『実戦向きではない』と評された。その後、この技を更に昇華した『真・マッハ突き』が編み出される。ただし威力がありすぎて自身の手がボロボロになる。