真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百九十一話

 

 

◆◇side真桜◆◇

 

 

副長が少し前に隊長と帰ってきた。四年前の大戦の後に天の国に帰ってもうた副長と隊長はひょっこりとアッサリと。

ウチ等が二人がいなくなった後にどれ程、苦しんだかも知らんでヘラっといつもの笑みを浮かべて。

 

しかも、ほんの少しの間で副長は呉の思春や雪蓮様と良い感じになりつつあった。そして副長と隊長の不在の間に三国の平和を乱しかねない真似をしでかした袁術……美羽を連れて。

 

 

「まったく……人の気もしらんで……」

 

 

ウチは副長に見せたろと、買っておいたお洒落な服を着て欲しいと副長に頼まれて着ようとしている。副長は工房の外でウチの着替えを待ってる。

ブツブツと言いながら今着ている服を脱ぐウチ。

 

 

「でもウチ……なんで、こんなイライラしてんやろ……」

 

 

副長が朴念仁なのもいつもの事だったけど。ウチは今の副長を見ているとモヤモヤが止まらない。いつもの副長やのに……

 

 

「スケベやなんやと言われても覗きには来うへんし……しっかりしーや種馬!」

 

 

服を脱いでお洒落着に着替えようとした所でイライラが頂点に達しようとしていた。種馬やなんやと言われても副長は中々手を出そうとしない。桂花相手なら手が早い様だが他の皆には中々手を出そうとしない。四年前でさえ、ウチから迫って漸く一夜を過ごす事が出来た程だ。

 

 

「視線がヤラしい癖に……こんな可愛いの着たら少しは積極的になってくれるんやろか?」

 

 

普段着ない様な沙和や栄華様が好みそうな服に袖を通して長い靴下を履く。工房に設置してある姿見の鏡で自身を確認する。

 

 

「副長……ホンマにこんなん好きなんかなぁ……」

 

 

副長はお洒落同好会の責任者なんかやっとるから沙和や栄華様とお洒落な話をようしとる。ウチも混ざって話をするべきやったか?

 

 

「うー……」

 

 

鏡と睨めっこをする。沙和や凪は可愛いと言うてくれたけどイマイチ自信が持てへんわ。寧ろ、もっと肌を晒して積極的になった方が副長を誘えるんちゃうか?

 

 

「はぁー……ウチは凪と違うて積極的になれへんし、沙和みたいに女女してへんからなぁ……あ」

 

 

そこまで言って気付く。ウチは副長に『求めて欲しい・積極的になって欲しい』と不満を口にしながら自分から迫った事がない。それどころか副長を煽っておきながら土壇場でへたれてる事が多……いや、完全に受け身で……

 

 

「あ、あかん……ウチ、副長に偉そうに言うといて……」

 

 

ウチはズーンと沈んでまう。さっきまでウチは副長のヘタレと思っておきながら自分の方がヘタレやん。そっか……イライラしとったけど自分自身にもイライラしてたんやなぁ。

 

 

「そんなんアカンわ……よし、副長に目に物見せたる!」

 

 

ウチはグッと拳を握って気合を入れて扉を開く。今回はウチが主導権を握って副長を……

 

 

「お、似合ってんな真桜。普段の服装も良いけど着飾っても可愛いじゃないか」

「……へぅ」

 

 

扉を開けて副長に今のウチの姿を見せると副長は笑みを浮かべてウチの事をベタ褒めしてくれた。その瞬間、ウチの顔は熱くなり、月っちみたいな声が出てもうた。アカン、副長の顔がマトモに見られへん。


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