真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百九十二話

 

 

珍しいお洒落着をした真桜を褒めたのだが真桜はマトモにこっちを見ようとしない。デートと思って一緒に歩いているのだが、反応がイマイチである。なんなんだか。

 

 

「よう、副長さん。新しい女かい?」

「見る度に他の女の子連れてるねぇ」

「これ、真桜だよ。それと誤解を生む発言は止めてくれ」

「うー……ひぅ!」

 

 

道行、街の人達に揶揄われる。ほぼお決まりとなった会話も懐かしいと思う反面、やはり真桜の反応がおかしい。以前なら便乗して来る筈なのだが今は俺を睨みながら唸る。しかも目が合ったら反らされた。なんか調子狂うな。そう思いながら煙管に火を灯す。

 

 

「なぁ、真桜……俺なんかしたか?それとも体調でも悪いか?」

「はぁ……無自覚なんやから……」

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

「こら、暴れんな!?」

 

 

真桜のリアクションにまたオレ何かやっちゃいました?なんて思う。まあ、無自覚に女の子を怒らせるのもザラだからバカに出来たもんじゃないな俺も。なんて思ってたらガッシャーン!と派手な音と共に悲鳴が聞こえた。真桜とアイコンタクトの後で悲鳴のした方に走り出す。

 

 

「ありゃま……どうしたの、これ?」

「あ、副長さん。なんでも、あの若いのが女に振られたとかでやけ酒してたみたいなんだが……悪酔いが過ぎたみたいでな」

「うわ、しょーもな」

 

 

現場に到着すると若いのが昼間から酔っ払って店先で暴れていた。真桜は非難の声を上げたが俺としては気持ちが分かるだけになんとも言えんな。

 

 

「巡回の警備隊が来るまで時間が掛かりそうだし……」

「ウチ等でやってまいますか、と?」

 

 

俺が拳を握りながら一歩出ようとすると真桜も一緒に来ようとしたので手で制する。

 

 

「そんな格好してる時は大人しくしてな。いつもは守る側だろうけど、たまには守られる側になってろよ」

「副長……」

 

 

俺は真桜の頭にポンと手を落としてから暴れてる酔っぱらいに歩み寄る。

 

 

「おい、落ち着きんさいな若いの」

「うるせえ、種馬!お前なんかに俺ぶふあっ!?」

「「迷わず殴った!?」」

 

 

俺が声を掛けると酔っぱらいから罵倒が飛んできたので速攻で対処したら周囲のギャラリーがほぼ同時に叫んだ。

 

 

「誰が種無しの種馬だって?酔っ払ってるからって言っていい事と悪い事があんだろ?あ?」

「だ、誰もそんな事は……言ってな……」

「すげぇ無理矢理だ……」

 

 

殴られた鼻を押さえながら反論しようとする酔っぱらい。殴られた痛みと鼻血で少し酔いが醒めたな。取り敢えずは狙い通りだ。仗助並みの無理矢理変換した甲斐もある。

 

 

「で、女の子に振られて酒を飲む。そこまでは良い。気持ちもよく分かる。だからって他の人に迷惑かけちゃいかん。そこまでは理解できるか?」

「は、はい……すみませんでした」

 

 

俺がしゃがみ込んで酔っぱらいと視線を合わせる。さっきまでの暴れっぷりは酔いと勢いだったな。一度、酔いも勢いも醒めたからまだ酔ってるけど大分、素の状態になってるみたいだ。

もう大丈夫そうだな、と思った所で雨が降ってきて、ついでに騒ぎを聞きつけた警備隊が数名走ってきた。

 

 

「副長、お手を煩わせてしまい申し訳ありません」

「偶々、近くに居たからな。それよかコイツを詰所まで連行。それと店の片付けを手伝ってやんな。若いの、お前さんは詰所に行ってコイツ等に話を聞いてもらいな」

「「はっ!」」

「は、はい……」

 

 

警備隊の一人が真っ先に俺に気付いて頭を下げてきたので指示を出して後を任せる事に。警備隊の面々は返事を綺麗に返して、酔っぱらいは大人しく連行されていった。酒は飲んでも飲まれるなってね。雨も降ってきたから頭も冷えるだろ。

 

 

「なあ、副長……さっきの奴の気持ちが分かるってどう言う事なん?」

「ん?ん、んー……天の国に戻された時に……お前達に会えなかった時に酒に溺れてたからな。」

 

 

現代に戻った時は桂花達に会えない寂しさから酒に溺れてた。財布と肝臓に優しくないと思いながらもやめられなかった。

 

 

「ふ、ふーん……ウチ等の事が忘れられなかったんや」

「ったりめーだろ。お前達以上に大切なもんがあるもんかよ。それと……コレ着とけ」

 

 

先程とは違いニヤニヤしてる真桜に俺は着ていたスーツの上着を着させた。雨に打たれて白いシャツが透けて下着が見えている。真桜の普段の服装を思えば透けてビキニが見えるのは気にしなさそうな気もするがそのままって訳にもいかんからな。

 

 

「取り敢えず帰るか。もう少し周りたかったが雨じゃ仕方ないからな」

「あ、うん……副長。その前にこの服……返すわ」

 

 

真桜に一緒に帰る様に促すと真桜は上着を脱ごうとしていた。

 

 

「さっきも言ったが透けてんだよ。城に戻るまでは着とけ」

「うー……」

 

 

俺の一言に納得しない様に唸る真桜。この後、城に戻るまでの間に何度も同じやりとりをした。そして城に戻るや否や真桜はまた上着を脱ごうとする。

 

 

「なぁ、副長……コレやっぱ脱いでええ?副長の匂いに包まれてるみたいになるねん」

「なるほど、殴られたいんだな?」

 

 

それなりの年頃の男性に体臭の話を振るな。泣くぞマジで。俺が拳を握ると真桜は俯いていた顔を上げた。その顔は真っ赤で何かに耐えている様な顔だった。

 

 

「あかんねん……コレ着てると……ずっと、副長に抱かれてるみたいで気が狂いそうになるぅ……」

「真桜……そう言うのは殺し文句って言うんだ」

 

 

顔を真っ赤にしたままプルプルと震える真桜を俺は抱きしめた。そしてそのまま部屋へと連れ込んだ。

 

 

 





『またオレ何かやっちゃいました?』
なろう系小説によくあるセリフ。
主人公が『常識外れの能力を持った主人公が無自覚に無双をする』『自身の偉業を自覚しない』等の状況で使われる事が多い。


『このヘアースタイルがサザエさんみてェーだとォ?』
ジョジョ第四部の主人公、東方仗助のセリフ。
仗助は自慢のリーゼントを馬鹿にされる・貶される等の発言を聞くとキレるのだが、その際に相手の発言をナナメに受け取る事が多い。
原作では「そのアトムみてーな頭」→「サザエさんみたいな頭」
スピンオフでは「変な前髪をプラプラ」→「ほかほか焼きたての食パン」と謎変換される。

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