真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百九十三話

 

 

 

 

◆◇side馬超◆◇

 

 

私は蜀からの遣いとして魏に来ていた。その最中で天の御使い兄弟が帰ってきた。その事で魏の民は歓喜に震えていた。

 

 

でも私は複雑な気持ちになっていた。

かつて私の敵討の邪魔をした男。母様の遺言を託された男。女にだらしない種馬。凄まじい気の使い手。弱く情けない男。乱世を鎮めた御使兄弟の兄。

 

私はアイツに対する感情が複雑に入り乱れてる。

だが、そんな感情を掻き乱すかの様にアイツは魏に戻って来てからめちゃくちゃだったと思う。

 

魏で開催された天下一品武道会で変装して参加し猪々子と思春を倒したかと思えば恋と互角に戦いを繰り広げ、大怪我をしたかと思えば異常な回復速度で復帰していた。

そして正式に魏に復帰して曹魏内部の問題点の改善に奔走した……と思えば弟子の大河と戦ったり魏の警備隊の半数と乱闘騒ぎを起こしたり、隠密機動訓練では明命や思春をだし抜いて勝利を収めた。勝者の権限で思春に侍女の真似事をさせたりとやりたい放題だった気がしてイライラしたけど。その後、調子に乗り過ぎて思春に仕留められたらしいけど。

 

その翌日には何故か桂花を思いっきり甘やかしていた。見ているこっちが恥ずかしくなるくらいに甘々な二人に私はモヤモヤしたものを胸に抱えながら仕事の合間にそれを見せ付けられていた。秋月に惚れている女の子達の視線も凄かったとは思ったが。

私はこのモヤモヤと以前の因縁も含めて今度の鍛錬の時に叩きのめしてやろうと考えていた……しかし、それは叶わなかった。

 

ある日、秋月は闇討ちをされ重傷を負ったのだ。私は何度も秋月と戦ったから知っているが秋月は強い。馬鹿みたいに振る舞ったり、種馬と陰口を叩かれているが実力は本物だ。気の力を使い、言葉巧みに場の流れを変えてしまう不思議な男が重傷に追いやられるなんて。信じられなかった私は他の将達と一緒に秋月の見舞いに行って言葉を失った。

 

秋月専属となっている医師と助手が慌ただしく秋月の全身に切り刻まれた傷を縫い合わせ、袁術……美羽が泣きながら医療気功で傷を塞ぎ、華佗が鍼で気を注入していた。

 

私はその光景を見て冷水を浴びた気持ちになる……まるで母様の死を知った時の様な……皆の必死の治療が続き秋月は一命を取り留めた。華佗の助手の卑弥呼や貂蟬の話では秋月は意識せずに自身の気で内気功で回復をしていたらしい。前から化け物じみた回復力だとは思っていたけどまさか、そんな事をしていたとは……

 

そんな話を聞いた後、秋月を闇討ちした容疑者に呉の先代である孫堅が上げられた。それを聞いた呉の面々は秋月の見舞いを切り上げて会議が行われていた。突如姿を消した先代が何故、御使の兄を襲ったか。何故、今になって戻って来たのか

 

皆が対策や対応に追われる最中、秋月に無理をさせない為に将か侍女が監視に付く事になった。なんで怪我人に監視を?と思ったけど秋月は過去にも度々、怪我をしながら無茶をして更に重傷になった事があったらしい。

 

だからって監視を……って思ったけど、翌日に貂蟬と卑弥呼に襲われかけて気を使って倒れたらしい。倒れたばっかりなのに何をしてんだアイツは……

その後も雪蓮達と武器の品評をしたり、真桜と逢い引きしていたりとうろちょろしていた。

 

 

その後、数日に渡り秋月は監視付きで休養になっていた筈なんだけど……

 

 

「副長……真桜と何かありましたか?」

「何故、そんな事を聞く?」

 

 

凪と鈍った体を鍛え直す為に組み手をしていたのだが凪が秋月に問い掛けをしていた。

 

 

「いえ……真桜が妙に艶々していたので」

「凪も色恋に目ざとくなったなぁ。まあ想像の通りだと言っておこう」

 

 

凪の疑問に答えた秋月。その発言を聞いた凪は顔を真っ赤にした。そして凪は秋月の胴着の襟を掴むと豪快ながらも見事な投げ技で秋月を上空に投げ飛ばした。

 

 

「怪我も治り切らない内に何をしてるんですか!?」

「何って……ナニかな。それは兎も角、教えた大雪山おろしを習得しているとは見事だな……だが俺を空中に投げ飛ばしたのは失敗したな!」

 

 

秋月は上空に投げ飛ばされながらも何故か冷静だった。そして空中で体勢を整えた秋月は勢い良く落下して来たと思ったら凪の頭に頭突きをした。それだけでも凄いのに……

 

 

「これぞマリポーサ式マッスルリベンジャー!」

「ぐ、痛っ!どうやって……いたっ!何回も頭突きを……あうっ!?」

 

 

秋月は何度も凪の頭に頭突きを繰り返していた。頭突きをした反動で飛び上がり、再度頭突きをしてまた反動で飛び上がり頭突きをする。前に北郷が『純一さんは気の力を使って無茶苦茶するから』と言っていたし、秋月の気の使い方は何処か凪や気の使い手とは違って見えた。あ、凪が頭突きを避けて顔面から地面に落ちた。

 

 

「ぐふっ!?やはりリングじゃなきゃダメか、この技……」

「だ、大丈夫ですか副長!?」

「アイツは本当にどうしようもない奴だな……」

 

 

私は母様の仇と……憎いとさえ思っていた秋月。でも今はあのどうしようなく情けなさと頼もしさと安らぎを合わせ持つアイツから目が離せなくなっていた。取り敢えず医務室には連れて行ってやるか。その後であの時の事を謝ろう。

 

 

 




『大雪山おろし』
ゲッターロボシリーズで巴武蔵が編み出したゲッター3の技。
掴んだ相手を自身を中心として竜巻のように振り回した後に上空に投げ、地面に叩きつける技。
ゲームでは車弁慶やゲッター3担当のパイロットが使用する。
初期のスパロボでは竜巻が発生し『世界最後の日』では伸縮自在なゲッター3の腕に敵を巻きつけ、擬似台風が発生する演出が組み込まれた。
アニメ、ゲーム、漫画等で派生技として『大雪山おろし二段返し』『真大雪山おろし』『大雪山おろしパンチ』『大雪山おろし次元竜巻返し』等、様々な技が編み出された。


『マッスル・リベンジャー(偽)』
キン肉マンに登場した必殺技でキン肉族三大奥義……の間違った解釈の技。マリポーサ式マッスル・リベンジャーとも呼ばれる。

キン肉族三大奥義の一つして壁画に描かれているヒントを元にキン肉マンマリポーサが編み出したマッスル・リベンジャーで上空から相手に頭突きを繰り返し、マットに沈めていき技を食らった者は最終的にマットに埋められて身動きが取れなくなる。

しかし、この技は本来のマッスル・リベンジャーではなくマリポーサがキン肉族三大奥義の壁画の解釈を間違えた為に本来のマッスル・リベンジャーとはかけ離れた別の技となった(壁画の絵は技の攻め手と受け手が頭突きをしている絵でありマリポーサは上の人物が下の人物に頭突きをしている絵だと勘違いした)
あまりにも間違えた技に先祖(シルバーマン)が怒ったのか技を繰り出したマリポーサはロビンマスクに技を攻略され、壁画から放たれた光線打たれて黒焦げになった挙句、ロビンスペシャルでK.O.されると言う顛末を迎えた。
後のシリーズでマリポーサはマッスル・リベンジャー(偽)を改良したアステカセメタリーと言う技を編み出した。
偽物と言う評価のマッスルリベンジャー(偽)だが技自体はロビンマスクをK.O.寸前に追い込むなど十分過ぎる完成度を持つ。

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