真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百九十五話

 

 

 

一刀と警備隊の部下の面々に連れられて現場に到着したのは良いものの……どうしたもんかなぁこれは。

 

 

「おーほっほっほっ!」

「せいやぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「ぐわぁっ!」

「つ、強い!?」

「囲め囲め!」

「数で圧倒するんだ!」

 

 

パピヨンマスクを付けた貂蟬と趙雲が大暴れをしていた。兵士の他にも将が何人か混ざって大乱闘である。

近くに居た人達から事情聴取をすると喧嘩をしていた魏、蜀、呉の兵士達を諌める為に舞い降りた華蝶仮面1号(趙雲)。しかし、徐々に押され始めた頃に何処からともなく華蝶仮面2号(貂蟬)が現れ、1号と2号が共同戦線を初めて将数名と兵士達を全滅させた……って事らしい。

 

 

「ハーハッハッハッ!三国の平和を守らんとする将や兵士がこの様とはなんと情けない。喧嘩の切っ掛けも些細な事であるのも呆れたものよ!これからは心を入れ替えて職務に励むが良いわ!」

「そうよん。おサボりしちゃダメよ。それに人の悪口を言ったり、悪い噂を鵜呑みにするのも良くないわん」

 

 

二人とも良い事は言ってるんだけどなぁ……あの格好で話の内容が頭に入りづらい。

 

 

「あれ……趙雲と貂蟬ですよね?」

「あまり考えたくはないけどそうらしいな。なんでパピヨンマスクで変装してんのかは知らんが。蝶人パピヨンと良い勝負……相手があんなんなら、なんちゃってシルバースキンを持ってくるべきだったな」

 

 

俺がなんちゃってシルバースキンを装備して奴等がパピヨンマスク装備してれば、めちゃくちゃ良い絵になるわ。ってそんな事を考えてる場合じゃなかったな。

 

 

「そこの正義の味方さん。街の人達に被害が出る前に喧嘩を止めてくれた事に警備隊の副長として感謝をしたいけど事情聴取もあるから此方に同行を願いたいんだがよろしいかな?」

「おや、女人を誘うには些か無粋な呼びかけですな」

 

 

俺が声を掛けると華蝶仮面1号(趙雲)は笑みを浮かべながら既に撤退する動きを見せている。ちゅーか、ナンパじゃないっての。

 

 

「あら、騒ぎが大きくなっちゃマズイわねん。此処らでお暇しましょうかしらん!」

「逃すか、円舞光輪脚!」

 

 

華蝶仮面2号(貂蟬)が跳躍して逃げようとしたので撃ち落とす様に円舞光輪脚を放ったのだが華蝶仮面2号(貂蟬)はそのままジャンプして逃げて行った。前回の激烈光弾の時もそうだけど自信無くすなぁ……最近、技の失敗が減ってきたのに大したダメージに繋がってないんだもん。

 

 

「ふむ、2号は無事に逃げおおせた様だな。そして生憎ですが、私も多忙な身……失礼させて頂く!」

 

 

空の彼方へと飛んで行った2号を見送る1号。円舞光輪脚が命中したのにそのままジャンプ力だけで見えなくなるまで跳躍するってどんだけ?Z戦士か。そして1号も民家の屋根に一っ飛びすると屋根から屋根へと飛び移ってあっという間に姿が見えなくなってしまった。

 

 

「副長……いかが致しましょう?」

「取り敢えず、そこら辺に転がってる連中を拘束、詰所まで連行しろ。噂話の出所を聞き出せ」

「最近、噂話が話題に上がってましたよね?俺達に関する事が」

 

 

逃げた正義の味方(笑)は兎も角、往来で喧嘩をしていた奴等は逮捕しなきゃならない。それに喧嘩の最初の原因である噂話の事も気になるし。

 

 

「あら?もう終わっちゃてたの?」

「雪蓮?もしかして暴れられると思って……来たんだろうな」

 

 

気絶している連中や怪我人を連れて行ってる最中、雪蓮が走ってきた。手には以前、渡した武器があるので……まあ、そう言う事なんだろう。

 

 

「もう……試し斬りが出来ると思ったのにぃ……」

「ま、まあまあ……」

「新しい武器を作っても使う機会が少ないか……それも考えものだな」

 

 

不満そうな雪蓮を一刀が宥めて俺も少し考えてしまう。

まあ、平和な世の中になっていざこざも無い太平の世になってるんだ。小競り合いが多くあっても戦に発展する事がほぼ無いんじゃ退屈でし、鈍ってくるか……ん?戦が無くて小競り合いが多い?

それが以前の乱世の頃なら分かるが平和な世の中になって小競り合いが尽きない。魏の警備隊の問題もそうだったが、今も俺や一刀の悪い噂が流れて、こうした小競り合いが起きている。

 

なんか何処かの誰かが意図的に仕組んでいるんじゃないかと思えてきたな。ま、俺みたいなのが気付くくらいなんだ大将や軍師組はとっくに気付いてんだろ。今度、聞いてみるか。

 

 

「それはそうと純一?聞いたわよ。凪と鍛錬してたそうじゃない!狡いわよ、私のは断ったのにー!」

「そりゃこの間の話だろ。今日はどれくらい動ける様になったかの慣らしって所だ。雪蓮と鍛錬したらそれこそまた怪我人に逆戻りするって」

 

 

雪蓮は頬を膨らましながら俺に詰め寄る。復帰後に呉でも戦闘力がトップクラス人間と戦えるかっての。あれ、でも雪蓮との戦いは孫堅さん対策としては有効なのかも……ちょっと相談してみるか。

 

 

「ねえ、お願い純一!先っちょだけ!先っちょだけでいいから!」

「誤解を招く発言をするな!」

 

 

雪蓮は余程、俺と戦いたかったのかとんでもない事を口走り始めていた。往来で誤解を招く発言は辞めなさい!

 

 

「ふ、副長……寧ろお相手をされた方が良いのでは?」

「孫策様ですから副長と鍛錬するまで叫ばれる可能性があるかと」

「曹操様や荀彧様達には我々から報告をさせて頂きます故にどうか……」

「お前等……余程、俺を怪我人に仕立て上げたいらしいな」

「警備隊からの報告でしたけど一部の将が平和な世に武を持て余して喧嘩に発展したとかって聞きますし……少し発散させた方が良いんじゃ?」

 

 

警備隊の部下達が俺と雪蓮が戦う事に賛同し、反論すると一刀も戦いを推奨してきた。

 

 

「仕方ない……か。わーったよ。雪蓮、あくまでも鍛錬って事を忘れないでくれよ?」

「やったあ!そうこなくっちゃ!先に鍛錬場を抑えてくるわね!」

 

 

そう言って雪蓮は俺との戦いを待ち望んでいたからこその歓喜の声を上げて鍛錬場へと先に行ってしまう。場所の確保をする辺り、本気の度合いが感じ取れるな。

 

 

「それに……このまま怠惰な平和が続くのも良く無いか。少しは刺激が無いと第三話の悲劇になりかねん」

「純一さんが言うとシャレになりませんね」

 

 

こうして俺は雪蓮と鍛錬と言う名のマジバトルをする事となった。取り敢えず自爆技は控えて肉弾戦の準備をしとこう。なんちゃってシルバースキンを着ないとマトモに相手が出来なさそうだし。

 




『蝶人パピヨン』
武装錬金、主人公武藤カズキのライバル。
元々は人間だったが病弱な体(死の病に瀕していた)を放棄し強い肉体を得る為に自身を人型ホムンクルスへと変貌を遂げた……かに見えたが様々な邪魔が入った為にホムンクルスへの進化が不完全なモノとなってしまい、死ににくい体になったが死の病が治らずに体に残る結果となり『永遠の命と死の病が混在する体』となってしまった。
美的センスが独特で蝶をあしらったデザインを好み、特にパピヨンマスクは自身が人間を捨てた証である事を主張している。



『円舞光輪脚』
「海の大陸NOA」の主人公リュークの妹のキッチェが使用する技。
元々は父親のリューヤが教えた技で回し蹴りと共に三日月型の波動を相手に叩きつける技。威力にムラがあり、ダメージを与える事が出来ない程の低威力かと思えば戦車からの砲弾を打ち落とす等、威力が定まらない。



『第三話の悲劇』
一部のアニメにおいて第三話目で主要キャラクターが退場(死亡)するフラグ。
日常、ほのぼのした話、誰かが救われた等の穏やかな展開から一転して主要キャラクターが死亡する展開でアニメの裏に存在する残酷な設定を際立たせる展開。またキャラクターの死が今後の話のキーポイントにもなる。

主要なキャラクターを上げるなら『機動戦艦ナデシコ/ダイゴウジガイ』『魔法少女まどかマギカ/巴マミ』『Angel Beats!/岩沢まさみ』等、物語のキーとなるキャラが多くに存在している。

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