真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第二百九十七話

 

 

 

どうして、こうなった?

私、秋月純一は頭をフル回転させていた。

 

昨日、雪蓮と模擬戦をして体力と気を使い果たして、もう終わりってなった所で流れ込む様に酒盛りとなり途中から桂花や華雄が参加して酒やツマミを運んでいた美羽が雪蓮に捕まり弄られていた。そうこうしている内に疲れからか華雄が眠り始め、雪蓮は美羽を抱き枕に俺の寝台で寝始めた。桂花は俺の肩に頭を乗せた状態で寝ていたので起こさない様に体勢をゆっくり変えて俺の腕を枕にする様に一緒に寝た。

 

ここ迄は良い。ちゃんと記憶がある。問題はここからだ。

 

 

美羽を抱いて寝ていた筈の雪蓮が何故か俺の手を握り、腕を絡ませながら眠っていたのだ。しかも恋人握り。

俺の片腕は桂花の枕としていて動けない。そして反対側は雪蓮にホールドされている。俺は完全に身動きを封じられていた。

 

 

マズい……何がマズいって、この状況下で身動きが取れないって事は誰かが俺の部屋に来て、この惨状を見たら間違いなく誤解するって事だ。

だが落ち着け、俺。先ずは桂花か雪蓮を起こして……いや、ちょっと待て。このパターンは前にも……

 

 

「秋月、起きているか?雪蓮が部屋に戻ってないって呉の人達が慌てていたんだけ……ど……」

「………」

 

 

馬超が俺の部屋に入りながら質問をして……動きがピシッと固まる。

それに対して俺は頭を抱えたかった。耳を塞ぎたかった。しかし両腕の自由が無い以上、それは不可能であり叶わぬ願いだった。

そして馬超の顔がみるみる赤くなっていく。耳まで真っ赤になり、頭から湯気が出そうな感じになり……

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「ぐぼはっ!?」

 

 

一瞬で間合いを詰めた五虎大将軍の渾身の一撃をノーガードで受けた俺の意識は一瞬で掻き消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇side一刀◆◇

 

 

玉座の間の空気がとてつもなく重い。朝早くから純一さんの部屋を訪ねた馬超は重なり合って寝ていた純一さん、桂花、孫策さんを見て悲鳴をあげながら純一さんの腹に重い一撃を叩き込んだのだとか。

そんな事があったから朝早くから将や軍師が呼び出され、ほぼ全員集合となった所で華琳が口を開いた。

 

 

「翠……何か言い分はあるかしら?」

「……ナイデス」

 

 

玉座から見下ろす華琳はとてつもなく重圧があり、馬超はその雰囲気に飲まれたから、本心から純一さんに申し訳ないと思ってるからか俯いたままだった。

 

 

「まったく……これから蜀や呉に一刀や純一を派遣しようと考えてたのに出鼻を挫かれたわね。このまま純一や一刀を送り出したら蜀や呉は使者を返り討ちにするなんて噂が出るわよ。それに純一なら兎も角、一刀を送り出す気にはならないわね」

「その秋月ですが……現在、華佗と美羽が治療にあたってます。華佗の診察では肋骨にヒビが入ってる可能性があるそうです。桂花や雪蓮に被害が無かったのは咄嗟に秋月が庇ったからだと思われます」

 

 

華琳の側に控えていた秋蘭が報告をした。自分の身よりも桂花や孫策さんを庇うのがらしいと言うか……

 

 

「あ、あはは……ねぇ冥琳、華琳?足崩しても良いかしら?」

「あら、面白い冗談を言うわね孫策伯符殿。誰の所為で天の御使兄弟の片割れが傷付いていると思ってるのかしら?」

「直接手を下したのは翠だけど貴女にも直接的な原因がある事を忘れてないわよね?」

 

 

玉座の間で呉の一団が揃っている場で孫策さんは正座をさせられて首から『私は悪い子です』と書かれたプレートを下げていた。

 

 

「確かにちょっと悪戯が過ぎたかもだけど……」

「あら、そのちょっとで秋月は死にかけたのよ?」

 

 

孫策さんの一言に華琳はニッコリと笑いながら黙らせた。その笑顔が怖いです。

 

 

「蜀の身としては申し訳ないと言う他ありませんな。特に翠は初心なものですから」

「その初心な心の持ち主の重い一撃で友好国を敵対国に変える所だったんだがな」

 

 

趙雲の謝罪を華雄が切り捨てる。流石に怒ってるな、アレは。

 

 

「曹操殿……此度の問題、誠に申し訳ない。跡目を孫権様に継いだとはいっても先日まで王だった者が他国の重鎮を傷付ける様な事をした。どの様に詫びても許されない事だろう」

「わ、私も……本当にすまない事をした!」

「ちょっと冥琳!?」

 

 

すると周瑜さんが深々と華琳に頭を下げた。馬超も同じ様に頭を下げ、突然の事態に孫策さんも慌ててる。

 

 

「困った事に……本来、一番許さないと言っていい筈の純一が許しちゃいそうなのよね。『ああ、良いって良いって。気にすんな』って言いそうだもの」

「ああ、言いそうですね……」

「言いますね……あれは」

 

 

華琳、秋蘭、春蘭が呆れて困った様にしている。華琳達の発言にその場の全員が「言いそうだ……」と想像しやすかった。

そんな時だった。華佗と美羽が純一さんの治療を終わらせた報告で玉座の間に通された。

 

 

「すまない、失礼するぞ。純一の治療が終わったから報告させてもらう。俺の鍼と袁術の治癒気功で今、出来る限りの治療した。もう意識も戻っているから大丈夫だ」

「ええ、ご苦労様。華佗、貴方と美羽に治療を任せて正解だったわ」

「その純一はどうしたんや?意識戻ったんやろ?ほんでなんで美羽は顔真っ赤やねん」

 

 

最初から治療を終えたら来るように華佗に伝えてあったらしく華琳は華佗が玉座の間に来て労いの言葉を掛けていた。そして霞の疑問通り、美羽の顔は真っ赤でスカートの端をギュッと握ってモジモジとしていた。

 

 

「意識が戻った純一と荀彧殿が内密な話をし始めたのでな。俺達は席を外させてもらったよ。あのままでは馬に蹴られてしまいそうだったからな」

 

 

華佗の説明に華雄、真桜、斗詩、ねねのこめかみに青筋が走った様に見えた。月と詠はこの場には居ないけど複雑な顔をしてるんだろうなぁ……

あ、孫策さんと馬超も大分複雑そうな顔してる。祭さんは笑ってるけど。

 

 

後で純一さんの様子見に行くのが色んな意味で怖いよ。

 

 

 


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