真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第三話

 

 

 

 

ハッキリ言えばしくじった。荀彧は先程の俺の失言から俺が何者かを超怪しんでる。まさか『僕、未来から来たんだよ!』とか言えねーし。

 

 

「なんで、私が曹操様の所に仕官しようと思ってるの知ってるのよ!」

「ああー……ええっと……」

 

 

荀彧は俺のネクタイを引っ張りながら叫ぶ。地味に苦しいんで止めて。

 

 

「話すと……長いんだけど」

「長くてもいいから話して……って男が近寄らないでよ!」

 

 

荀彧から近付いたのに何故か俺が悪い事にされた。解せぬ。

その後、少し嘘をついた。曹操や袁紹が俺の居た国でも有名だと言う事。そして最近、袁紹の下を去った軍師の噂を聞いたと話した。

 

 

「それで私が荀彧だって気付いたって事?」

「正直予想外だった……女の子だったし」

 

 

荀彧の言葉に俺は思った事を口にした。いや、だって三國志の武将って大概男だし。

 

 

「女の子で……って今、有名な武将は大抵女性よ?」

「俺の聞いた噂では男だったんだが。荀彧も男で曹操もだぞ」

 

 

俺の発言に荀彧はザッと退いた。うん、想像して青ざめたんだね。

 

 

「私が男ってあり得ないわよ!」

「ですよねー」

 

 

うーんと腕を組んで悩む俺に荀彧は耳元で叫ぶ。キーンと耳鳴りがして五月蝿い。結局、荀彧は納得はしていないがそれ以上の追求はしてこなかった。うん、疑いの目線は消えてない。

 

 

「それで……なんでアンタはこの国に居たのよ?」

「いや、それがサッパリ。自宅で寝ていた筈なんだけど……」

 

 

荀彧の質問にジェスチャーを交えて説明。俺が知りたいっての。

 

 

「何、拐われて来たって事?」

「むしろそっちの方が話が早かったんだけどな」

 

 

拐われたとなれば犯人がいる筈。そうなれば犯人探して捕まえる所だ。だがしかし俺は自宅に居たし、仮に犯人が居たとしてもアパートに居た俺を拉致して1800年前の中国に送り込むって壮大なアホな話あり得ないでしょ。

 

 

「つまり、無能なアンタは自分の居た国から漢に来るまで気が付かぬまま拐われて無人の広野に棄てられたって訳ね?」

「言葉の端々にトゲがあるけど、概ねそんな感じかな」

 

 

とてつもないアホを見る目で荀彧は俺を見る。少なくとも俺はMじゃないからその目は止めて。

なんてアホな会話を繰り広げている間に町に到着した。

 

 

「はーあっ。とんでもない日だったわ」

「まったくだ」

 

 

荀彧の言葉に頷く俺。うんうん、あっという間だったけど凄い体験をしたもんだ。

 

 

「で……アンタ、いつまでついてくるのよ?」

「っと……そうだったな。しかし俺には行く宛が……」

 

 

そう話をしながら荀彧に着いてきたが町に着いたからと言って俺に行く宛がある訳じゃない。

 

 

「ふふん、良い気味ね」

 

 

そして俺の不幸を笑ってるよ、この猫耳フードちゃんは……

なんて思っていたら近くの屋敷から女性が数名出てきた。

 

 

「お帰りなさいませ、お嬢様」

「ええ、今帰ったわ」

 

 

屋敷から現れた女性達は荀彧の知り合いか?いや、でもお嬢様とか言ってるし……あ、もしかしてこの時代のメイドさん?。

っと思ったら全員が俺を指差して口をパクパクさせてる。……何事?

 

 

 

「「お、お嬢様が男連れで帰られたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」

「は?………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「………どゆこと?」

 

 

女性達の悲鳴に近い絶叫が鳴り響く。荀彧がそれと同時に叫ぶが俺には何がなんだか。

 

 

「ど、どうしましょう!?」

「ま、まずは荀緄様にご報告を!?」

「宴です!宴の準備を!」

 

 

バタバタと再び屋敷に慌ただしく戻っていく女性達。いや、マジで何事?

 

 

「なぁ、荀彧……今のは……」

「全部……アンタの所為よ!!」

 

 

何事かと聞こうと思ったら、気合いの入った言葉と共に荀彧のアッパーが放たれて的確に俺の顎を捉えた。超痛い。

 

 

「あらあら、まあまあ」

「げ、母様……」

 

 

俺が痛む顎を押さえていたら屋敷から荀彧そっくりの女性が出てきた。背は荀彧と似て低いが荀彧と違って髪型はロングヘアー。目元は少々タレ目で何処か優しげな雰囲気の人だった。

 

 

「御初にお目にかかります。荀家の長をしております荀緄と申します」

「っと……秋月純一です」

 

 

おっとりとした雰囲気だが、しっかりとした口調で挨拶されたので俺も慌てて頭を下げた。

 

 

「それで桂花ちゃんと、どの様なご関係で?」

「母様!?」

「えーっと……ご関係と言いますか……」

 

 

俺と荀彧の関係が気になるご様子の荀緄さん。つーか桂花って荀彧の事で良いんだよな?

俺は少し割愛しながらも荀彧との出会いから今に至るまでを説明した。

 

 

「あらあらー。じゃあ桂花ちゃんの命の恩人なのですね」

「違います」

 

 

俺の説明に荀緄さんは『あらあら』と笑いながら話を聞いていた。荀彧は即座に否定するが荀緄さんが荀彧の額に指を指してメッと叱る。

 

 

「駄目よ桂花ちゃん、命の恩人にそんな言い方しちゃ。純一さんが助けてくれなきゃ桂花ちゃんは今ごろ、その野盗の皆さんに○○が××で△されて……」

「あああ、もうっ!黙って母様!」

 

 

突如マシンガントークになった荀緄さん。しかも内容が猥談だし。荀彧が慌てて止めてるけど凄いこと口走り始めたよ。

 

 

「もう桂花ちゃんたら」

「溜め息を吐きたいのは私の方です……」

 

 

なんとか荀緄さんの口を押さえて猥談マシンガントークを止めた荀彧だが明らかに疲れた表情になっていた。

 

 

「兎に角、桂花ちゃんがお世話になりましたから今夜は泊まって行ってくださいな」

「……………私は部屋に戻りますから!」

 

 

荀彧を助けた礼として荀緄さんは俺を泊めてくれるらしい。正直、凄く助かったけど荀彧は男の俺が泊まる事に当然、不満があるらしく不機嫌な顔でズンズン歩いて屋敷の中へと行ってしまう。

 

 

「あらあら、桂花ちゃんったら。純一さんは夕飯もご馳走しますから楽しんでいって下さいね」

「え、ちょっ荀緄さん!?」

 

 

荀緄さんは俺の腕にスルリと腕を絡めると楽しそうに「あらあらー」と笑ってる。ある意味、恐るべし。

その後、夕飯をご馳走になってお酒も振る舞われた。中国のお酒って白酒だっけ?アルコール度数は高かった気がする。

 

 

「………フゥー」

 

 

俺は食休みと酒で熱くなった体の火照りを冷ます為に外でタバコを吸っていた。

本当になんなんだろうな……この状況。

 

 

朝目覚めたら見知らぬ広野に居て、チンピラに絡まれた女の子助けたら歴史の偉人で、その荀彧が女の子で、毒舌吐かれて、荀緄さんのお礼と猥談トーク聞かされて……

 

 

「何このラインナップ……」

 

 

今日一日を振り返ると非常にアホらしい。こんな事を他の人に話したらバカにされるかイカれてると思われるわ。

そう言えば夕飯の前に別れてから荀彧と会ってないな。あの様子じゃ俺には会いたくないんだろうけど。そんな事を思いながら俺はタバコを消して、あてがわれた部屋に行って寝る事にした。




荀緄は史実では荀彧の父親です。恋姫世界観で女性に変更しました







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