真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第四話

 

 

「……………知らない天井だ」

 

 

朝一番起きてから出た一言。うん、昨日の事は夢オチだったなんて事はなかった。

実は朝起きたら元通りなんて淡い希望も持っていたのだがそうはいかないらしい。

 

 

「やれやれ……っと」

 

 

布団から体を出して体を伸ばす。パキポキと骨が鳴る辺り、運動不足なのだろう。

これからどうするかな……昨日は泊めてもらえたけど今日はそうはいかないだろうし……兎に角、朝飯かな。そう思った俺は寝間着からワイシャツとズボンに着替える。ジャケットは家を出る時でいいや。ネクタイを適当に絞めて部屋の戸を開けて外に出れば昨日出会った猫耳が見えた。

 

 

「おはよう荀彧」

「ア、アンタ誰よ!?」

 

 

 

わーお……本気で一晩たったら人の事、忘れてるよこの子。

 

 

「昨日、会ったばかりだろうが……」

「昨日……ああ、アンタね。昨日と服が違うから間違えたわ」

 

 

つまり荀彧は昨日は俺の顔を覚えたのではなく服で覚えていたらしい。スーツに負けたよ俺の存在。

荀彧と朝の挨拶を済ませて食堂に向かえば既に荀緄さんが席に着いて待っていた。

 

 

「おはようございます母様」

「おはようございます荀緄さん」

「あらあら、おはようございます桂花ちゃん、純一さん」

 

 

荀緄さんは昨日と変わらずニコニコと挨拶をしてくれた。本当に荀彧との差が凄いな、この人。

そんな事を思いながら進む朝食。荀彧の罵倒がBGMの朝食とはこれ如何に?

時おり、気は滅入ったが朝食を済ませて、さてこれからどうしようかと思った所で荀緄さんが俺に話しかけてきた。

 

 

「時に純一さん、これ読めますか?」

「凄く……漢字です。じゃなくて読めませんね」

 

 

荀緄さんから渡された紙には漢字で一文が書かれていたがサッパリ読めない。そうなんだよな忘れかけてたけど、ここは中国。文字は全て漢文なわけで。

 

 

「はん、やっぱり男は無能ね」

「あらあら、桂花ちゃん。純一さんは異国の地から漢に来たんですよ。それも誘拐されたとなれば仕方のない事です」

 

 

俺を見て悪い笑みを浮かべる荀彧。黙ってりゃ可愛いのに……

対する荀緄さんはメッと荀彧を叱る。アンタ等、本当に対極の性格だな。

 

 

「と言うわけで純一さん。暫く我が家に泊まってくださいな。文字やこの国の風習を教えて差し上げます」

「あ、はい………って、ええっ!?」

「母様!?」

 

 

荀緄さんの提案に俺は頷いたけど意味を理解して俺は驚いた。当然、荀彧も驚いてる。

 

 

 

「純一さんは桂花ちゃんを救ってくれて、更に異国の地で困ってるんですもの見過ごせないわ。はい決定」

「ちょ、ちょっと母様!」

 

 

荀緄さんはニコニコとしながら次々に物事を決めてしまう。荀彧は席を立ち、荀緄さんに詰め寄る。

 

 

「母様、私は反対です!恩なら一泊させた事で返したでしょうし、何より男なんか住まわせるなんて!」

「桂花ちゃん、命を救われた恩義は一泊じゃ返せないわ。それに困ってる人を見捨てるのは荀家の恥よ。それに純一さんは異国の方なのでしょう?この国にも異国の知を知る事は益にもなるわ」

 

 

荀緄さんは荀彧の意見を一刀両断する。流石に家長の言葉ともあり、荀彧は納得してないけど荀緄さんの意見が正しいと思ったのか話はそこで終わった。

 

 

「……仕官の準備があるから失礼します」

「はーい、頑張ってね」

 

 

 

荀彧は諦めたのかさっさっと食堂から出ていってしまう。出る時に俺をキッと睨み付けて行った。いや、どんだけ嫌われてんの俺?荀緄さんは『あらあらー』と笑っていた。

その後、俺は暇をもて余していた。と言うのも荀緄さんから『授業は午後からにしますからお昼までは好きに過ごしてください』と言われた為に手持ちぶさたなのだ。

 

 

 

「おう、お客人」

「っと?」

 

 

ボーッと中庭を眺めていたら後ろから話しかけれた。振り返ると如何にも屈強な男の人が立っていた。

 

 

「奥様から聞いたがお嬢様を助けてくれたそうだな」

「奥様って荀緄さんですか?それにお嬢様って荀彧ですか?」

 

 

思わず立ち上がりながら質問をぶつけてしまう。つーか、この人、背高いな。185㎝くらいはありそうだ。

 

 

「ああ、そうだ。荀家の家長が荀緄奥様。その御息女が荀彧様って訳よ」

 

 

ハッハッハッと笑う男性。ああ見えて荀彧ってお嬢様なんだな。

 

 

「おっと申し遅れた。ワシは『顔不』荀家の警護を任されとる者だ」

「俺は秋月純一です」

 

 

自己紹介されたので俺も頭を下げた。なんかこの人、『武人』って感じがするな。

 

 

「おう、それでな。奥様から聞いたのだが、お嬢様を助けた際に三人も倒したとか」

「不意討ちで油断してた所を叩いただけですよ」

 

 

顔不さんは誉めてくれたけど正面切っての戦いは無理だろう。相手も刃物持ってたし。

 

 

「何を言う、不意討ちでも三人倒せば良いものよ。それにお嬢様を守りながらなら尚の事だ」

「ああー……その……」

 

 

ヤバい。なんか顔不さんの口振りから荀家での俺の評価が妙に高い気がする。持ち上げないで!俺、ただのサラリーマンだから!

 

 

「どれ、ちっと手合わせでも………」

「あ、あのですね……俺には武術の心得なんかは無くてですね……」

 

 

なんか雲行きが怪しくなってきた。俺は漫画とかアニメで格闘技のマネ事とかしたけど本格的なのは無いって!

 

 

「安心しろ、手加減するから」

「お願い、通じて俺の意図!」

 

 

ハッハッハッと笑いながら俺の襟首を掴んで引きずる顔不さん。いやー!嫌な予感しかしない!と思っていたのだが予想とは違って顔不さん、優しかったよ。

 

武術の心得が無いことも歩き方で察したみたいで簡単な組手程度で済ませてくれた。逆を言えば顔不さんが本気を出せば俺は簡単にボコボコにされてしまう訳だが悲しいから考えない様にしよう。

 

 

「しかし秋月殿は武の才がありそうだ。どうだ、鍛えてみぬか?」

「俺に……武の才が?」

 

 

組手で疲れて座り込んでいたのだが顔不さんの話に起き上がる。今まで会社勤めばかりで武道なんかした事ないから意外な一言だった。

 

 

「特に『気』の才能がありそうだ。本気で鍛えれば武将になるのも夢ではないぞ」

「いや、武将って大袈裟な……って気?」

 

 

顔不さんは俺が武将になれる程の力があるって言うけどそれは過大評価だって。思わず苦笑いしたが俺は顔不さんの言った一言に動きを止める。え、今『気』って言った。

 

 

「気……ですか?」

「ああ、気功だ。ワシも少しは修練した身。秋月殿の中から中々の気を感じ取れるぞ」

 

 

え、マジですか?気功なんて漫画の世界の話だと思ってた。

 

 

「ふむ。ちっとやってみるか」

「え、あ、はい」

 

 

なんて考え事をしていたら顔不さんが俺の前にドカッと座る。そして手を合掌の様に合わせた後、力を込める仕草を見せた。すると顔不さんの両手の間には小さな光が……ってスゲー!

 

 

「これが……気なんですか?」

「そうだ。体の中に流れる気を制御し、普段とは違う力を見せる。それが『気』だ」

 

 

俺の質問に答えてくれた顔不さんはフゥと一息。それと同時に光は消えた。

 

 

「ハッハッハッ、興味が湧いたか?」

「そりゃもう!」

 

 

顔不さんは不適な顔で笑っていた。そして俺は大興奮。何故なら空想の産物だと思っていた事を修得出来るかもしれないってテンション上がるわ!

その後、俺は顔不さん指導の下、気を練る鍛練を始めた。

顔不さん曰く、俺の気に対する筋は悪くない所か寧ろ早い修得らしい。

 

その後、テンションが上がった俺は荀緄さんの言っていた『午後からの授業』をスッカリ忘れてしまい、涙目で怒っている荀緄さんに顔不さんと共に平謝りをする事となった。

因みにそんな俺達を見て荀彧は「これだから男は……」と鼻で笑っていた。




今回出た『顔不』はオリジナルキャラです








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