真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第四十三話

 

 

 

◆◇side桂花◇◆

 

 

汜水関に向かった秋月は孫策や関羽達と何か談笑をしたかと思えば何故か料理を始めた。その料理の匂いが此方の陣営まで流れてきている。

その匂いに春蘭や季衣は腹を鳴らして涎を垂らしている。秋蘭や流琉は今度教えて貰おうかと呟いている。あの馬鹿、敵の陣地の目の前で何してんのよ!

 

 

「なるほど……散々侮辱した後で相手に舐めた態度をとる……挑発としては効果的だわ」

「華琳様!」

 

 

私が汜水関を見ていたら華琳様が隣に立っていた。華琳様が声を掛けてくださるまで私が気づかないなんて……

 

 

「心配かしら、純一の事?」

「ま、まさか!あんな馬鹿、死んでしまえばと……」

 

 

華琳様は優しげな微笑みで聞いてくださるけど私はそんな事はちっとも思っていない。私が言葉を重ねようとすると汜水関の扉が開き始めた。

 

 

「上手くいったようね。各員は戦闘準備のまま待機。純一が戻り次第、行進の準備を……」

「あの華琳様……秋月はそのまま戦う姿勢に入っていますが……」

 

 

華琳様のお言葉を春蘭が申し訳なさそうに遮る。だがその事よりも私も華琳様も汜水関に視線を移した。そこには汜水関の将と戦っている秋月の姿が。あの馬鹿、即座に撤退して来なさいよ!?

 

 

「退く間を逃してしまった様ね……」

「秋月はあれで間を読むのに長けています。恐らく、秋月の予想以上に速くあの将が出てきたのでしょう」

 

 

華琳様のお言葉に秋蘭が同意と解説を交えて頷いた。私はその言葉を聞きながら、あの馬鹿から視線を移せなかった。

秋月は明らかに自身よりも格上相手に挑むなんて無謀すぎる!

 

 

「かあっ!」

「硬度10ダイヤモンドパ……グウッ!?」

 

 

あの馬鹿は将の攻撃をなんとか防いだ様だけど一撃で足下が覚束ない状態になっている。遠目で見ても左腕に故障を感じているのは明らかだ。

将は笑みを浮かべて秋月と話をしていた様だが棍を振り上げた。真っ直ぐに振り下ろして馬鹿の頭を砕く気なのっ!?

 

 

「他も気になるのでな……貴様への興味は尽きぬがこれで終いよ!」

「……っ!」

 

 

将の一振りを秋月は十字に構えた。あの馬鹿、受け止められる訳ないでしょ!

 

 

「いぎっ!?」

「何っ!?」

 

 

将の棍を秋月は受け止めていた。受け止めた際に秋月の痛そうな声が響く。自身の一撃を止められた事に驚いたのか将は動きを止めてしまう。その好機を見逃さなかった秋月は交差していた両腕を左腕を残して外すと右腕を腰元に引き撃ち抜いた。

 

 

「スペシウムアタックっ!」

「ぬおおっ!?」

 

 

秋月の一撃に将も効いたのか後退りをして膝を着いた。しかし問題はそこからだった。秋月はそのまま倒れてしまったのだ。

 

 

「秋月っ!」

「秋月殿!?」

 

 

孫策や関羽の秋月を心配する声が聞こえた。それよりも秋月は……

 

 

「ちぃ……よもやコレほどとは……だが」

 

 

一撃を食らった将は殴られた部分を一撫ですると立ち上がり、持っていた棍を秋月に向けた。まさかっ!?

 

 

「お主が未熟で助かった……このまま成長しては強敵となりうるからな。では、さらばだ!」

「秋月っ!」

「させるかぁっ!」

 

 

私はこんな所から声を出しても意味はないと分かっていても秋月の名を叫んだ。将の棍は無慈悲に秋月に……と思ったが、なんと孫策が助けに入った。なんで孫策が!?

 

 

「ちぃ!邪魔を……」

「退きや胡軫!汜水関はもうアカン!」

 

 

胡軫は邪魔された事に苛立ちを感じつつ関羽と戦おうとしたが張遼の言葉に舌打ちをした後にその場から退いていった。

良かった……アイツは無事だ……

 

 

「桂花、良かったわね」

「はい、一時はどうなるか……と……」

 

 

華琳様のお言葉に振り返りながら言葉を出したのだが途中で飲み込んだ。振り返ると華琳様、春蘭、秋蘭、季衣、流琉がニヤニヤとしていたから……

 

 

「ん、んんぅ……あの馬鹿、もっと上手く戦いなさいよね」

「はーい、こんにちは」

 

 

私は咳払いをしながら皆に背を向けた。ああ、もうっ!

その場の空気に耐えられないと思っていたのだが、その空気を破る様に孫策が現れた。共に来ていた呉の兵隊達に担がれながら秋月も一緒だ。気が枯渇して眠っていた時と同じような状態だからやはり先程の光は秋月の気なのだろう。

 

 

「孫策。私の軍の者が面倒をかけたわね。」

「構わないわよ。彼のお陰で汜水関を落とせたんだもの」

 

 

そう……確かに秋月の行動で華雄や先程の将は汜水関から出てきた。秋月が将と戦ったから孫策は華雄と戦い、関羽と張飛はその部下と戦えた。結果を見れば秋月の助力はかなり大きい。

 

 

「汜水関は彼のお陰で落とせたけど、彼自身の命は私が救ったわ」

「そうね……なら純一に関する貸し借りは無しね。春蘭の件は別にするわ」

 

 

孫策と華琳様の会話は正に王の会話。私たちは割り込めないわね。

 

 

「期待しないで待ってるわ……って言いたいけど彼の働きを見たら期待しちゃうかも」

 

 

そう言って孫策は軍医から治療を受けている秋月を見て楽しそうに笑った。コイツ……まさか孫策にも……

 

 

「ま、そう言う訳で。じゃーねー」

 

 

孫策はそのままヒラヒラと手を振りながら去っていった。その後も関羽や張飛も共に戦った身として心配だったと見舞いに現れ、更に顔良も秋月の負傷を聞いて様子を見に来ていた。

更に関羽からは興味深い話を聞けた。なんでも秋月は関羽を見た際に『愛美』と呼んだらしい。単なる人違いだったそうけど……そう……思わず名を呼ぶような女が居たのね。

 

 

「……う……うぅ……」

「アンタって……本当に馬鹿よね」

 

 

苦しそうにしたまま寝込む秋月。私はその隣に座ると秋月の顔を覗き込む。後々、問い詰める事が増えたわね。覚悟しときなさいよ。






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