真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第四十五話

つ、疲れた……いや、何が疲れたって……各諸侯の皆さんが俺と胡軫の戦いを見ていたらしく、俺は少しばかり有名になっていた。曰く『天の御使いと同郷の者』『警備隊副長』『気を使う戦士』『天の種馬兄弟』『女ったらし』

後半二つは悪意を感じる呼び名だよな。まあ、そんな感じで歩いてるだけで各諸侯の皆さんが声を掛けてくる。

中でも一番疲れたのは袁紹だった。なんせ……

 

 

『あら、アナタが華琳さんの所の下男二号ですの?汜水関での働き結構でしたわ。まつ毛一本分の好感をもって差し上げますわ、オーホッホッホッ!』

『斗詩はアタイのだからな!絶対にやらないからな!』

『もう、麗羽様!文ちゃん!ごめんなさい秋月さん。お体を大事にしてくださいね』

『アナタも苦労してますね。頑張ってください』

 

 

とまあ……袁紹、文醜、顔良、田豊の順に慌ただしく言いまくられて去っていった。マトモに労ってくれたの顔良と田豊だけだよ……

一刀達と合流すると一刀を筆頭に皆が来てくれた。いや、それは嬉しいんだがチビッ子三人は俺に抱きついてきたのだが左腕が痛む為にめちゃくちゃ声を殺して叫んだ。まあ、察した秋蘭が季衣達を引き剥がしてくれて助かった。

秋蘭は春蘭が怪我をした時に凄い取り乱した様だが今は平常心を取り戻したと言っていた……でも自分で大丈夫って言うのは信用できな……あ、はい。俺もですよね。

 

その後、北郷警備隊と共に行動する事になったが……一刀達は俺を取り囲むように歩く。これ以上怪我をさせない為?どんだけ危なっかしいと思われてんだよ。確かに重症になって帰ってきたのは事実だが正直、息が詰まるわ。

 

少し離れるか……煙管も吸いたいし。とりあえず少し路地に入って一服。はー……落ち着くわ。

一刀達と少し離れて街中を探索していたらなんか怪しげな一行が……ってあれは呂布?

 

 

「あ……秋月」

「……よう」

 

 

やっほーと挨拶をしそうな雰囲気で呂布が挨拶してきた。一刀から虎牢関での戦いの話は聞いたけど三国一の武将には見えないよなホントに。

 

 

「あ……怪我……してる」

「ん、ああ……汜水関でちょっとな……」

 

 

呂布は俺の怪我が気になった様だ。「痛い?」と上目使いで聞いてくる。会って直ぐに怪我に気づいて気遣いできるのは優しい証拠。是非とも魏の皆さんにも見習ってほしい。

 

 

「ちょ、ちょっと恋!見付かったらヤバイのよ!?」

「あ、ごめんなさい」

「え、詠ちゃん……」

 

 

すると呂布と共に居た少女が呂布に声を掛ける。三つ編みに眼鏡にツリ目……委員長タイプだな。つーか呂布の後ろには。その子の他にも女の子が。こっちはなんか上品な子だ。箱入り娘って感じの。着ている服も立派だし貴族の娘とかかな?

 

 

「副長、離れないでください!」

「勝手に動くなウジ虫なのー!」

「心配掛けすぎやで!」

「純一さん、何かあったら大変なんですから!」

 

 

等と思っていたら一刀達が来た。過保護すぎんだよ今のお前等。

 

 

「げ、曹操の所の……」

「へぅ……」

 

ん?この三つ編みちゃんは何かを警戒し始めた。箱入り娘ちゃんは怯えてる。呂布は……って待った待った!完全に戦闘体制に入ってる!

 

 

「ちょっと待ったお前等。呂布も戦わないでくれ、な?」

「………ん」

 

 

俺の言葉に従ってくれた呂布。助かった……流石に戦いになったら止められそうにも無かったから。

 

 

「ちょっと恋!なんでソイツの言うことを聞いてんの!?」

「………秋月、良い人」

 

 

三つ編みちゃんの怒鳴りにも呂布はこてんと首を傾げながら答えた。ああ、なんか小動物みたいで可愛い。

 

 

「だからって……」

「なあ、嬢ちゃん……呂布の真名呼んでるけど親しいんだ?」

 

 

俺は思った事を口にした。うん、俺の脳裏に掠めた予想が当たったらとんでもない事だ。まさかだよ……うん、まさかだ。

 

 

「もしかして君たち……」

「な、何よ……」

 

 

じっと三つ編みちゃんを眺めてしまう。この怯え方はやはり……

 

 

「董卓に連れてこられて何かされた……」

「ち、違うこの子は董卓じゃない!」

 

 

俺と三つ編みちゃんの声が重なる。ん?俺はてっきり董卓に連れてこられた何処かの貴族の娘かと思ったんだが……ん?『この子は董卓じゃない?』って……え?もしかして……

 

 

「キミが……董卓?」

「へぅ……」

 

 

俺が聞くと箱入り娘ちゃんの方は俯いてしまった。え、当たり?いやいや、まさかでしょ正史で暴虐とか呼ばれたのが……

 

 

「き、貴様等!董卓様から離れろ!さもなくばこの華雄の斧の錆としてくれるぞ!」

「か、華雄!?」

 

 

否定したかったけど追加情報。もとい華雄が息を切らしながら走ってきた。もう確定だ、三つ編みちゃんも華雄の名を呼んでるし。

 

 

「ちょっと落ち着いて華雄。えっと……キミが董卓で間違いないなかな?」

「………はい」

「月!」

 

 

俺が膝をつき目線を合わせた状態で話し掛けると答えてくれた。そっか……この子が……

 

 

「先程此方の方に……居た、華雄!」

「むっ!?」

 

 

俺の後ろで何やら聞き覚えのある声が。振り返ってみると関羽と張飛、そして見知らぬ青髪の少女。

 

 

「あ、秋月殿!?お体は宜しいのですか?」

「ああ、休ませてもらったら随分良くなったよ。心配かけさせたな」

 

 

俺を視界に納めると関羽は俺に話しかけてくる。ヤバイな……まだ情報整理が済んでない。

 

 

「それよりも関羽はなんで此処に?」

「先程、華雄が凄い早さで駆け抜けていくのが見えたので、その先に董卓が居るのではと思い追いかけてきたのですが……」

 

 

その勘、当たってるよ。事実、董卓が目の前に居るんだし……

 

 

「ぐ……」

「ど、どうすれば……」

 

 

華雄と三つ編みちゃんはなんか凄い追い詰められてるし……上手く行くかな?行き当たりばったりだけど、出たとこ勝負だな。

 

 

「ああ……華雄が此処に居たのは間違いじゃないが……居るのは董卓の所で働いていた子達だけだぞ」

「…………え?」

 

 

俺はポンと三つ編みちゃんの背を叩いた。三つ編みちゃんはポカンとしている。

 

 

「董卓は各地から貴族の子や優秀な人材を集めていたみたいなんだ。この子達もその一部だな。華雄や呂布はその子達の事を気にかけていたから心配で走ってきたんだよ」

「そ、そうなのですか?董卓は人拐いみたいな事までしていたとは……」

 

 

よし、いい感じに騙されてくれてる。

 

 

「待て貴様、何を勝手な事を……私は董卓様の……むぐっ!?」

「少し黙っていてくれ華雄。それで俺達は街の様子を探っている間に困っていたこの子達を見つけてな。華雄は俺達がこの子達に乱暴したと勘違いしてたみたいで気が立ってるんだ。それに俺や関羽は汜水関で華雄と戦っただろ尚更だ」

 

 

余計な事を口走ろうとした華雄の口を背後に回り込んで右手で塞ぐ。なんかムグムグと不満を口にしたけど今は無視。

 

 

「ふむ……では秋月殿はどうなさるおつもりですかな?」

「っと……キミは?」

 

 

黙っていた青髪の少女が前に出て来た。初めてみる子だ。

 

 

「おや、自己紹介もせずに失礼しました。私の名は趙雲、今は劉備軍に所属しております」

「秋月純一だ。そこの天の御使いと同郷って言えばわかるかな?」

 

 

趙雲ってマジかよ……関羽、張飛、趙雲と揃ってんのかよ!

 

 

「おや……ではアナタが種馬兄……」

「すいません、その噂の出所を教えてください。即、殲滅しに行くので」

 

 

どんだけ噂になってんだよ!事実無根だ!

 

 

「おや、違うとでも?今も華雄への情熱的な包容が見られますが?」

「情熱的って……そんなんじゃ……」

 

 

趙雲の言葉にチラリと華雄を見る……………………耳まで赤くなっていた。

 

 

「後ろから羽織る様に抱き締めて更に口を塞ぐ……更に耳元には常に貴殿の吐息が……」

「わかったから止めてくれ。華雄も離すから暴れたり、話の腰を折らないでくれる?」

「………ん、ぷぁ……」

 

 

ヤバい、趙雲にニヤニヤした笑みは弄る気満々の笑みだ。焦った俺は華雄から手を離したのだが華雄はペタンとその場に座り込んでしまった。え……何、今の可愛い声と仕草。

 

 

「ほう……これはこれは流石は種馬兄」

「いや………これはですね……」

 

 

いや、あの……なんか、よくない流れなのは分かる。華雄さん、もしかしてアナタは男への耐性0ですか?

あ、董卓と三つ編みちゃんが華雄へ駆け寄ったけど顔が赤い。いや、待って。なんか俺が100%悪者みたいになってるんだけど。

 

 

「あわわ……」 

「だ、大胆なのー」

「もう……ウチならいつでも……」

「す、凄いです純一さん」

 

 

いや、お前等も顔を赤くして見入るな。否定っつーかフォローしろよ!

 

 

「ごほん……兎に角、この子等は俺達が保護をする。関羽達も似たような子がいたら優しくしてやってくれ」

「そ、そうですね……では秋月殿も体をお大事に」

「バイバイなのだオジちゃん!」

「おやおや、夜がお楽しみですな」

 

 

俺は話題を変える為に強引に話を進めたが関羽達は何かを勘違いしたまま行ってしまう。趙雲よ、それはドラクエの宿屋の台詞だ。

さて、後は……混乱しきってる、この子等に話を聞かなきゃな……


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