真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第四十八話

 

 

 

 

 

 

 

◆◇side桂花◆◇

 

 

 

「そう……そう言う事……」

 

 

私は今、華琳様の天幕で董卓達の話を聞いていた。先程、都の偵察に出ていた北郷達。その最中、秋月が董卓達を見つけて董卓達の保護を考えた。北郷達は董卓の正体がバレない様に陣営に戻ると華琳様に上申を申し出た。

華琳様は董卓の話と北郷達の補足説明を静かに聞いておられた。今、この場には華琳様、私、春蘭、秋蘭、北郷、董卓、賈駆、華雄、呂布、陳宮。

そして董卓の保護を考えた当の馬鹿は……

 

 

「ギャアアアアァァァァァッ!痛い、痛い!ギブ、ギブ!ノオォォォォォっ!?」

「大人しくしてください副長!」

 

 

医療用に立てた天幕からあの馬鹿の悲鳴と軍医の叫びが聞こえる。華琳様に怪我をするなと言われて舌の根も乾かぬ内に怪我をして来たんだから当然の罰よね。

董卓の話を聞く限りだと董卓の自害を止めた際に素手で刃を掴んだとか言ってたけど……

 

 

「あ、あの……」

「純一の事なら今は忘れなさい。あれも罰の一貫よ」

 

 

董卓は秋月の悲鳴が気になってるみたいね。まあ、あんな風に聞こえれば気になるのも当然だけど。聞こえ方からすれば治療を受けてると言うよりも拷問みたいだしね。

 

 

「さて、董卓……純一の考えだし、一刀の口添えもある。更に私に益があるから申し出を受けるわ」

「あ、ありがとうござ……」

「ただし」

 

 

華琳様の寛大なお心に董卓が礼を言おうとしたけど華琳様はそれを遮った。

 

 

「董卓、賈駆の両名は死んでもらうわ」

「なっ!?保護を受けてくれるんじゃないの!?」

 

 

華琳様のお言葉に賈駆が驚いている。助かると思った矢先に言われたら驚くわよね。

 

 

「董卓と賈駆の名はもう大陸中に知れ渡ってるわ。それを庇えば私に不利益となるの」

「……でもっ!」

 

 

そう、暴虐董卓を保護すれば華琳様の立場が危うくなる。そうならない方法は一つ、董卓と賈駆が死ぬ事だけ。

でも華琳様は約束を違える方じゃないわ……恐らく……って春蘭や秋蘭も驚いてるけど側近なら華琳様のお考えを察しなさいよ。

 

 

「わからないの?董卓と賈駆の名は有名になりすぎてるのよ。逆を言えばそれ以外はあまり知られていない」

「…………あ、名を捨てろって事か!」

 

 

私が口を開くと北郷は華琳様の意図を察した様だ。もっと早くに気付きなさいよ鈍感。

 

 

「そう言う事よ。董卓と賈駆は名を捨てなさい。でなければ私でも貴女達を匿うのは不可能よ」

「わかりました……従います」

「月っ!?」

 

 

華琳様の提案……いえ、譲歩に董卓が頷き、賈駆が抗議の声を上げたけど董卓は賈駆の手を取った。

 

 

「詠ちゃん……私達は秋月さんに全部を任せたんだよ?その秋月さんは大将さん……曹操様の判断に従うって……私は秋月さんをこれ以上苦しめたくないの。それに私達が受け入れれば華雄さんも恋ちゃんもねねちゃんも皆一緒なんだよ?」

「うぅ……月……」

 

 

董卓の言葉に唸る賈駆。秋月の提案ってのが気に入らないけど確かに今の条件が最大の譲歩だからこれ以上は望めない筈よ。

 

 

「曹操、本当に僕達をどうにかしないの?」

「くどい。この曹孟徳に二言は無い!」

 

 

最後に念を押す賈駆に華琳様の激が飛ぶ。最後まで疑いの目をしていた賈駆だけど董卓の言葉に最後は頷いて礼を言った。当然よね。

 

 

「礼なら純一になさい、私は利があるから動くだけ。董卓軍の兵士と呂布、華雄を組み込めるのは非常に大きいわ」

「は、はい……」

 

 

歯に衣を着せぬ華琳様の発言に董卓は戸惑ってる。

 

 

「さて……董卓と賈駆はこの場で真名を渡しなさい。これより董卓と賈駆を名乗る事を禁ずるわ」

「はい……私の真名は月。曹操様にお預けします」

「もう真名だけの名になるのね………詠よ」

「……恋」

「音々音なのです」

「……………」

 

 

董卓と賈駆は思うところがあるのだろうけど仕方の無い事よ。その後も呂布と陳宮の真名は聞いたけど華雄だけは黙っていた。

 

 

「…………申し訳ないが私には真名が無い。私が物心がつく前に親は他界した。故に私は真名を授かる事が無かった……私に渡せる名は華雄……これのみだ」

「そう……なら華雄で結構よ」

 

 

話はここまでと華雄との会話を打ち切った華琳様。あまり踏み込む気はないとの意思表示。多分、華雄は気づいてないけど……

 

 

「月……貴女達の任せる仕事は後々伝えるわ……今は純一にその事を話してきなさい」

「は、はい!」

 

 

華琳様のお言葉に董卓……いえ、月は嬉しそうに天幕を出ていった。それに続いて詠や華雄、恋、音々音も出ていく。

 

 

「桂花も行ってくれる?純一の怪我も気になるし……あの子達の今後も考えたいの。一刀、警備隊の件だけど……」

「……承知しました」

 

 

私にも秋月の所へ行けとの指示を出した華琳様はすぐに北郷との会話を始めた。多分、月達の今後を話すのね。

そっちも気になるけど……今は怪我をしたあの馬鹿の所へ行かなきゃね。まったく……余計な心配ばかり掛けさせるんだから……

 


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