華雄隊の指導を任された俺は昼飯時に一刀と凪、華雄と合流して今朝方、大将から頼まれた事を話した。その内容に一刀と凪は苦笑い。華雄は頭を抱えていた。
「すまない秋月。私の監督不届きだ」
「いんや、そればっかりじゃないさ」
華雄は頭を下げるが悪いのは華雄ばかりじゃない。そもそも他の国に下って元上司がその国の方針にしたがってるのに元部下が言う事を聞かないってのが間違ってる。会社だったら人事に殴り込みを掛けるレベルだ。
「ま、兎に角……俺と華雄は当分の間、華雄隊の指導に当たる事になる」
「純一さんと華雄だけでやるんですか?」
俺の言葉に一刀が尤もな事を聞いてくる。うん、それだけじゃないんだな、これが。
「指導をするのは俺と華雄と……恋とねねだ」
「え……大丈夫なんですか?」
俺の発言に一刀、凪、華雄がピタリと動きを止めた。残り二人の気持ちを代弁するかの様に凪が尋ねてくる。
その大丈夫はどっちの意味だ?恋が指導の立場で大丈夫って事か?それとも兵士達の身の安全が大丈夫かって事か?まあ、両方かな。
「いつまでも恋とねねを遊ばせておく訳にはイカンと言う事でな……流石に指導は無理だからどちらかと言えば模擬戦の相手かな」
「その段階で華雄隊が駄目になるんじゃ……」
うん、一刀のご指摘ごもっとも。だが、それも狙いの一つでもある。
「確かに大半は恐れを成したり、再起不能になる可能性も高い。だが逆を言えばそれを乗り越えれば最高の兵士にもなる……と言う事か?」
「流石……理解が早くて助かる」
華雄は真っ先に俺の考えに気づいたみたいだ。それともう一つ。
「付け加えると……恋には『手加減』を覚えさせたいってのもある。あのままじゃ他の将との鍛練にも支障を与えかねん」
「そう……ですね……」
俺の言葉に恋との鍛練を思い出したのか凪がブルッと震えた。
俺は参加しなかったのだが魏の武将が数人集まっての鍛練があったらしく、そこに凪も参加していた。そんな中で春蘭が恋に『本気で来い』と自殺志願者としか思えない一言を放つ。その後の事は言うに及ばず。鍛練に参加した者を全員叩きのめした恋は『お腹すいた』とその場を後にした。
今でこそ、味方だが本気の恋と戦うって洒落にもならん。
そして皆には話さなかったが、ねねの話だと『恋殿はあれでも無意識に手加減してるのです。本当の意味での本気は誰も見た事が無い筈なのですぞ』と言っていた。
流石にねねの大言壮語と思いたいが……恋だからなぁ。
「とまあ……色んな意味で今回の華雄隊の指導は今後の魏のあり方にも影響を及ぼすぞ」
「責任重大すぎますよ」
少し遠い目をした俺に一刀のツッコミが入るが話を続ける。
「今後の華雄隊のあり方だが……まず恋との鍛練で一部の精鋭を選ぶ。選考した精鋭は独立した部隊へ……と言うか俺の部隊になる。残りの者は指導を受けさせつつ問題だった猪突猛進を直して改めて華雄の部下へと迎え入れる形になるな」
「待て秋月。私は既に将ではないのだぞ。それを……」
俺の説明に華雄が横やりを入れる。ま、その通りなんだけどさ。
「華雄が警備隊の……俺の補佐になってるけど、さっきも話した通り一部の精鋭が俺の部隊になるんだ。その補佐役にも部隊を預けた方が良いって話になってな」
「む、むう……」
俺の言葉に華雄は口を紡ぐがまだ納得してない様子。
「そうですね……隊長には私達、三羽烏が居ますけど副長や補佐の華雄さんだけ部隊が無い状態でしたから丁度良いのでは?」
「だが……しかしな」
凪のナイスフォローが入るがまだ納得してない。しょうがないトドメの一言と行きますか。
「実はな……大将からの言伝てだが華雄には俺の補佐の他に役職が与えられる予定だ。多分、その役職の為にも部隊は必要になる筈だぞ」
「ん……うぅ……わかった」
最後の最後で漸く首を縦に振ってくれた華雄。多分、大将は未だに少し後ろ向きの華雄を立ち直らせろって意味も含めて話をしたんだな、多分。
「でも純一さん。精鋭部隊って……まさかスペシャルファイティングポーズを?」
「誰がギニュー特戦隊を作るなんて言ったよ?ファイティングポーズしろってか?」
いくら強くてもあのノリは嫌すぎる。技も基本的には隙だらけだし。でもあの当時のベジータよりも強いんだよな。
でもリクームの技はどれもアカン……と言うか失敗するのが目に見えてるし。イレイザーガンとか原作通りになりそうだしファイナルポーズなんか絶対にしたくない。ってかやったら味方に殺されかねない。
『スペシャルファイティングポーズ』
ギニュー特選隊が登場、出動時に使われているポーズ。
エリート部隊が掛け声と共に変なポーズを取る様子はかなりシュールでフリーザは毎回唖然としながら汗を流してる。
ゲーム等ではポーズをする事でステータスが上昇したりもする。
『イレイザーガン』
大きく開いた口にエネルギーを溜め、強力な気攻波を発射する。その破壊力は星の形を変える程。口から放つ為に強制的に口を閉められると自爆する。
『ファイナルポーズ』
中腰になり相手に尻を向けた妙なポーズをとる。厳密には相手を攻撃する技ではないが、ジースの台詞によれば「リクームの十八番」らしい