一刀から鋭いツッコミを貰った後、各々の担当する地域へと向かう為に再度、別れて警邏に励む。とは言っても俺の担当はもうすぐ終わるので後は城に帰るだけだ。
「旦那!」
「っと……服屋の親父さんか」
不意に呼ばれた渾名。そう、俺は此処の職人さん達に『旦那』と呼ばれているのだ。と言うのも魏に来てから俺は大将から許可を貰った後に、この国の職人さん達に服や武器、料理の話を色々と話したのだ。
その結果、俺は頼りになる知恵袋として職人さん達と仲良くなり、今では旦那と呼ばれるようになっていた。ちょっと銀さんみたいな気分だ。
「旦那、見てくださいよ!旦那に教えて貰った天の国の服、もうバカ売れですよ!」
「そりゃ良かった。教えた甲斐もあるよ」
服屋の親父は興奮気味に俺に話しかけてくる。この世界では何故か、現代と変わらん服や小物があるから教えても大丈夫だろうと現代で流行ってる服や昔流行った服を教えた途端に服屋の親父はそれを作り始めた。
まあ、俺の趣味も多少は入ってる。月や詠のメイド服なんて良い例だ。
「それで旦那……旦那に頼まれてた服、出来ましたぜ」
「ナイス……じゃなくて、ありがとう」
服屋の親父は風呂敷に包んだ服を俺に手渡す。少々大きめだが、それは服が数着入ってるからに他ならない。
「しかし……今回も良い仕事が出来ました。曹洪様や于禁様にもお礼を」
「ああ、必ずしとくよ」
コソコソと話す俺と服屋の親父。実は服に関しては栄華の全面バックアップがあったりするのだ。以前にも話したが俺の服のアイディアで経済が潤う&可愛い服が得られると二重取りの状況に栄華が『国で支援します』と言い放ったのだ。まあ、流石に贔屓になるから表立っては言わないけどね。
実はこの話は服屋だけに収まらない話なのだ。
例えば武器屋だが、カラクリ好きな真桜が俺の発案の武器を作り、武器屋の親父がそれに感化されて色々作り、強い武具が出来るなら我等も協力すると春蘭以下、武将が話をする程。
更に料理屋は大将や凪といったグルメな者達が率先している。料理人である流琉や秋蘭が様々な天の国の料理を作り上げ、それを大将や凪が試食して市場に話が通る。
それぞれが趣味にハマり、更に国が潤い、人の為になる。こんな良い循環が魏では起きている。まあ、それに付け込んでくる悪い奴等も居るがそこは警備隊の出番だ。
そんなこんなで、国の重鎮がそれぞれにバックアップしている様な状況なのだ。だが、おおっぴらに国の支援の形じゃ体裁の問題もあるので俺や一刀が間に入って調整をする形なのだ。その過程で俺の私事も入っても問題はあるまい。
だって今回頼んだ服とか詠に絶対に似合う筈だし。
「皆様には絶対に似合う服だと確信を得ております」
「ありがとう服屋の親父。俺も、同じ意見だ」
俺と服屋の親父は熱い握手を交わしていた。この親父も中々のやり手である。
この後、服屋を後にした俺だが武器屋と料理屋で同じやり取りをする事になった。
とりあえず頼んどいた木刀が来たから一刀に渡しとくか。