真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第六十七話

 

 

 

初めてラディッツに会ったときのピッコロって、こんな気持ちだったんだね。勝てる気がしないよ。

不意打ちに放った、かめはめ波は全く通用しなかった……さて、どうする?

 

①操気弾

②猛虎落地勢

③邪王炎殺黒龍波

④セクシーコマンドー

 

 

ダメだ……ろくな選択肢が出てこない。俺が自爆するか負ける未来しか見えない。

①かめはめ波が通用しなかったんだから操気弾なんか絶対に効かない。

②謝って済むなら、こんな戦いは起きなかったし、この状態で恋が止まるとは思えない。

③右腕が使い物にならなくなるっての……しかも恋なら黒龍波返しとかしそうだし。

④論外だ。使ったら女性陣が総出で俺を殺しに来るな。

 

 

「………行く」

 

 

って、考えてる時間も無い!恋は方天戟を振りかぶって俺に迫る。

 

 

「危なっ!?」

「……避けた?」

 

 

迫る方天戟をギリギリで避ける事が出来た……と言うか恋も手加減してくれてるんだろうな。じゃなかったら俺が恋の攻撃を避けられる筈がない。

 

 

「仕方がないな……ならば見せてやるよ」

「………?」

 

 

俺の台詞に恋は小首を傾げる。ああ、もう……可愛いな恋は。って和んでる場合じゃない。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ………界王拳!」

「………変わった?」

 

 

そう、俺が使ったのは界王拳。ここ暫く鍛練が出来なかった代わりに俺は体内の気のコントロールを独学でだがやっていた。その結果、短時間だが界王拳擬きが使える様になった。だが、この技はデメリットの方が大きい。

 

 

「だあっ!」

「………恋も……本気で行く」

 

 

俺の蹴りを防いだ恋は俺の強さが先程までと違う事に気付いて、目付きが変わった。あ、コレはマジの目だ。

放たれる方天戟の一撃を身を低くして避けた俺は勢いをそのままにアッパーを放つがアッサリと見切られて避けられてしまう。

 

 

「す、すごい……恋と戦えてるなんて……」

「いつもの副長じゃないみたいなのー」

 

 

詠の驚愕の声と沙和の意外そうな声が聞こえた。沙和は後で覚えとけよコンチキショウ。

なんて意識が少し逸れた所でスッと力が抜ける感覚が来た。げ……まさか、もう!?

 

 

「や、やば……」

「………秋月!」

 

 

俺の意識が飛びそうになったと同時に桂花の声が聞こえた気がした。

俺は体から力が抜けて前のめりに倒れそうになる。あ、ヤバい…………と思ったら、なんか顔に柔らかい物が……

目を開けてそれを確認すると、そこには恋の胸が。

あ、そっか……倒れた拍子に恋の胸に顔を埋めてしまったのか……アハハー

 

 

「何をしてんのよ!(のですかー!)」

「ぐふぉっ!?」

 

 

背中に凄まじい衝撃が!振り返れないけど多分、桂花とねねが同時に俺の背中に飛び蹴りを入れたな。超痛い!

 

 

「やれやれね。純一、その技……恋と一時的にとは言ってもマトモに戦えたのは見事よ。でも時間制限付きでは話になら無いわ」

「ごもっともです……」

 

 

大将はアッサリと界王拳擬きの欠点を見抜いていた。そう、俺の界王拳は体内の気を爆発的に消費する為に発動時間が極端に短い。多分1分くらいだ。しかも本来の界王拳と違って、いきなり力が抜けてしまうので、今みたいに急に体が動かなくなる。車やバイクがガス欠で急に動きが止まるのと同じだな。

アレだな、急に力が抜けて動けなくなるのはマリオがスターで無敵状態になるけど時間が来たら解除されて、その直後にクリボーにやられる的な。

 

 

「で……いつまで恋の胸に顔を埋める気?」

「い、いや……体が動かないから……俺にはどうにも……」

 

 

絶対零度の様に冷えきった詠の声に俺はマジでビビった。いや、だって本当に背筋が冷たくなってるんだもんよ。恋は恋でなんか俺の頭を撫でてるし。

 

 

「だが、そのままと言う訳にもいかんだろう。私が運んでやる」

「え……うわっ!?」

 

 

華雄の声が聞こえたと思ったら急に体が浮いた。視線を上げれば華雄が俺を抱き上げていた。お姫様だっこで。

 

 

「あの……華雄?流石に男がこの抱き方されると恥ずかしいんだが」

「ふ……お前は体が動かないのだから我慢しろ。私に身を委ねていればいい」

 

 

俺の言葉に華雄はキランと星が出そうな笑みを浮かべた。あらやだ、イケメン。

そのまま、華雄は俺を部屋まで運ぼうとするが桂花が呼び止める。

 

 

「ちょ、ちょっと!秋月はこの後、私と警備隊の会議だったのよ。部屋に行くなら私も行くわよ!」

「あ……純一さんがお部屋に戻るなら私も……」

「そうね、その体じゃ仕事になら無いでしょ手伝うわ」

 

 

桂花を皮切りに月と詠も同伴を申し出てくれた。真桜も着いてこようとはしたけど、お前はこの場の後片付けがあるだろうが。

 

 

「あっとそうだ……大将」

「なによ?」

 

 

俺は力が入らない体を無理をしながら大将に話しかける。華雄に頼んで顔を近づけて貰ってから大将の耳元に手を添えて……

 

 

「さっき一刀……カッコ良かっただろ?ちゃんとカッコ良かったって言ってやれよ?」

「~~~~っ!」

 

 

大将だけに聞こえる様にボソッと言ってやると大将は顔を赤くした。やはりな。さっきの一刀と春蘭の戦いの時に一刀を見詰める顔が所謂『恋する乙女』になっていた。ギャラリーは当然、戦いを見ていたから大将の表情を気にしている者は居なかったから知っているのは俺だけだろう。

 

 

「バカを言ってないで、さっさっと体を治しなさい!」

「いだっ!あー……体は夜には治ると思う。体力が無くなっただけだし、休めば治るさ」

 

 

大将のデコピンか額にヒット。体が動かない状態でのデコピンって結構痛い。

周囲には大将が怒って顔が赤くなったように見えているが、ありゃ図星を指摘されて顔が赤くなった口だな。

 

 

「ちょっと……華琳さまと何を話したのよ?」

「んー……今後のあり方かな?」

 

 

桂花に質問されるが……うん、間違ってない筈。大将と一刀か……面白くなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みにこの後、部屋に戻った俺だが……

 

 

「純一さん、お茶をどうぞ」

「大体ね、アンタは普段から……」

「秋月、先程の界王拳だが……」

「なあなあ、副長。からくり同好会の次の活動なんやけど……」

「ちゃんと寝て休まないとダメなのですぞ!」

「なんで、ねねも秋月と一緒の布団で寝てるのよ!」

 

 

この日、俺の部屋に月、桂花、華雄、真桜、ねね、詠が見舞いとして入り浸っていた。

ねね、心配してきてくれたのは嬉しいけど俺の布団に潜り込むのは止めなさい。




『猛虎落地勢』
らんま1/2の無差別格闘の早乙女流に伝わる奥義。
怒り狂う相手の前で、即座に平身低頭身を投げ出し、深々と謝罪の意を述べて相手の怒りを逸らす。
要するに、ただの土下座である。

『邪王炎殺黒龍波』
幽々白書、飛影の最強の技。自らの妖気を餌に魔界の炎の黒龍を召喚し、放つことで相手を焼き尽くす技。 

『黒龍波返し』
黒龍波を受け止めて術者に投げ返す力業。武威が使用。

『セクシーコマンド』
すごいよマサルさんのタイトルにもなっている格闘技。
通常の格闘技によく使われる『フェイント』を技に昇華している。分かりやすく言えば、相手の隙を無理矢理引き出す為、楽に攻撃を当てられる。
技の中にズボンを下ろしたり、チャックを開けたまま戦うなど若干、下ネタが多い。

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