◆◇side一刀◇◆
今日から純一さんが大河と修行をするって言ってた。どんな修行をする事にしたんだろう?
すると鍛練場から純一さんの声が聞こえてきた。
「答えろ、大河!流派、東方不敗は!!」
「お、王者の風よ!」
何処かで聞いた様な掛け声だ。まさかと思って鍛練場を覗いてみると案の定だった。
「全新!」
「系列!」
「「天破侠乱!!」」
純一さんと大河は殴り合いながら叫び続け最後に互いの拳をブツけた所で動きを止める。
「「見よ!東方は赤く燃えているぅぅぅぅ!!」」
締めの言葉を声高らかに決めた二人。いや、何をノリノリでやってるんですか……
「うーむ。天の国の修行とは変わってるんだな」
その光景を見た華雄の感想を聞けたけど、アレは修行じゃなくて単なる挨拶だから。
「さて……軽い運動をした所で本格的に修行を開始する」
「は、はいッス!」
あ、流石にアレを修行とは言わないんだ。でもいったいどんな修行をする気なんだろう……
「と言いたい所だが、ぶっちゃけ大河は素で俺よりも強い。だから俺が教える事が無い」
「そ、そんな……自分は師匠に……」
まさかの純一さんの発言にショックを受けている大河。それを純一さんが待ったを掛けた。
「待て待て、修行をしないとは言ってないだろ。俺も強くならなきゃならないから修行は俺も一緒にする」
「師匠と一緒に……」
純一さんと一緒に修行と聞いて大河はパアッと明るい表情になった。
「では修行を始める前に……これに着替えろ」
「これは……師匠が着てる胴着ッスか!」
純一さんが取り出したのは亀仙流の胴着。デザイン的には子供の頃の悟空の形だ。因みに純一さんは最初から胴着を着ている。
大河は嬉しそうに着替えを始めたけど……本当に女の子に見間違えそうだよ。
「師匠、この重りは何ッスか?」
「それは手首と足首に付けるんだよ。重りが体の負担となって、修行の効果を高めるぞ」
純一さんが大河に渡したのはリストバンド型になっている重り。中には鉛が入ってるらしく、見た目以上に重くなってる。更に背中にはリュックみたいに重りを入れた袋を背負ってる。
「よし、これで準備万端だな」
「お、重いッス……」
胴着と重りを装備した大河は純一さんと違って動き辛そうだ。季衣、流琉、香風みたいに大河もスーパーチビッ子かと思ったけど違うのかな?
「その重りは普段から負荷を掛ける事で体を鍛える。大河、取り敢えず鍛練場の回りを十周走ってこい」
「はいッス!」
純一さんの指示を受けて大河は走り出すが直ぐに重りに負けて足取りが悪くなる。
その光景を見ていたら純一さんが次の準備のために荷物を置いてある俺と華雄の場所まで歩いてきた。
「でも意外でしたよ。大河があんなに動けなくなるなんて」
「実を言うと大河の重りは俺の倍くらいなんだが……それであんだけ動けるんだからアイツも十分規格外だよ」
俺の疑問に純一さんからはスゴい言葉が飛び出した。やっぱこの世界は子供でも規格外な存在ばかりだと改めて思い知らされた。
『流派東方不敗式挨拶』
流派東方不敗の人間同士の出会った際の挨拶であり、互いに殴りあって力量を見るなどの行為も含まれている。