真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第八話

 

 

 

 

 

 

荀緄さんから頼まれたお使いで、普段住む街から少し離れた街へと行く事になった俺。と言っても町の商人が馬車でその街まで行くので相乗りさせて貰っているのだが。

 

思えばこれが俺がこの世界に来てから初めての遠出となる。荀彧と会ってから今まで荀家の屋敷に居候していたし、買い物や頼まれ事も街の中でしかしてなかったからな。顔不さんからは、外を知るのが一番の蓄えとなるなんて言われた。

 

 

「兄ちゃんは……この辺りの人なのかい?」

「ん……ああ、いや。俺は日……いや、少し離れた国から来たんだ」

 

 

商人さんから話し掛けられて思わず、俺は『日本』と言い掛けた。三國志の頃だと日本の呼び名は……いいや思い出せそうにない。

 

 

「いや、変わった服だと思ってな」

「これは俺の国じゃ仕事着なんですよ。文官が着る服って言えば良いのかな?」

 

 

そう、俺は久々にスーツに袖を通した。鍛練の時にスーツを着てると普通に汚れるしな。まあ、普段からワイシャツにネクタイで過ごしてはいたのだ。だが今回は他所に行く子ともあって久々に上着にも袖を通した。うん、仕事に行く時みたいな気持ちになってきてる。

 

 

「そうかい。他の国じゃ文官さんはこんな服を……」

 

 

商人さんは何処か感心した風に俺のスーツを見ていた。うん、嘘は言ってない。

なんて雑談をしていたら街に着いた。んーっ朝から馬車に揺られていたから体が痛い。

商人さんにお礼をした後に街中をブラリと散策。

少し買い食いをしながら頼まれていたお使いを済ませた。

 

 

「お母さん、あれ買って」

「はいはい」

 

 

手を繋ぎながら街行く親子。平和なもんだ。俺が三國志と思われる世界に来てから暫くたったけど俺の目には平和な光景が広がっている。

だが見知らぬ街や村では黄巾の連中が暴れてるらしい……そう思うと……少しモヤモヤする。

タバコに火をつけて一服。最近、こうやって自分を落ち着かせる事に慣れてきたな……あ、二箱有った内の一箱目が無くなりそう。吸いすぎたな。

 

 

「て、敵襲だぁーっ!」

「っ!?」

 

 

ボンヤリと空に消えていく煙を見ていた俺だが突然の町民の声にタバコの灰がポロっと落ちた。

 

 

「門を閉めろ!」

「早く家の中に!」

 

 

ざわざわし始めた街の仲で俺は逃げ惑う人達と一緒に逃げようとしたが先程の親子の子供が転んで怪我をしてしまっていた。

 

 

「おい、大丈夫か?」

「い、痛いよ……痛いよぅ……」

 

 

俺は思わず、転んだ子供に駆け寄るが子供は擦り傷が出来て泣いていた。こんな子供が泣いている……なのに俺は逃げるだけか?今の俺は気を使う事も出来るのに?飄々と荀家にお世話になっているだけなのか?

 

 

「そっか……痛いよな」

「………おじちゃん?」

 

 

突如、変わった俺の態度に目の前の子供は泣き止んだ。いや、泣き止んだのは結構だが『おじちゃん』は止めて。俺はまだ20代だから。

俺はポンと子供の頭に手を乗せて笑みを浮かべる。

 

 

「泣くなよ、男の子だろ?」

「う、うん……」

「あ、ありがとうございます。さ、早く逃げるわよ!」

 

 

俺の言葉に男の子は完全に泣き止んでくれた。その直後、母親が男の子を連れて行く。母親ははぐれた子供の面倒を見てくれた俺に礼を言うと避難していく人達の中に消えていった。

 

 

「さて……と」

 

 

俺はタバコを地面に投げると足で踏んで消す。目指すは街の外に来ている馬鹿共の所。

 

 

 

「行けーっ!」「攻めろ、攻めろ!」

「街に入れさせるな!」「もっと防柵を作るんだ!」

 

 

街の塀の近くでは街に入ろうとする黄巾の連中と街に入れまいと防戦の軍。いや、義勇軍かな。

さて、義勇軍の手伝いをするか。

 

 

「はーい、ちょっくらゴメンなさいよ」

「え、ちょっとお兄さん何してんねん!?」

 

 

俺は黄巾の連中が揃ってる門の近くへと歩いていく。何やら坊柵用の材料を集めていた女の子が俺に手を伸ばしていたが時間も無いし、早々と済ませるか。

俺は両手を前に突き出す。その先には黄巾の皆さん。

 

 

「かぁ…めぇ…はぁ…めぇ……」

「な、気が集まって……凪みたいに気使いかいな!?」

 

 

俺の両手に集まり始めた気の塊に驚く女の子。いや、今気づいたけど関西弁だよな、この子。まあ、気にせずにいってみよう。

 

 

「波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「どっひやぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

俺のかめはめ波に驚いた女の子は尻餅を着いていた。そして俺のかめはめ波は防柵を作っていた義勇軍の人達の隙間を縫って黄巾の皆さんへとまっしぐら。

着弾したかめはめ波は黄巾の皆さんを吹っ飛ばして、その勢いをそのままに空へと消えていった。なるほど、前に荀家の塀を破壊した時に気弾は空へと消えたと聞いたがこんな感じだったのか。そういや、今回は気の消費が少ない気がする。

俺は唖然としている街の皆さんを尻目に門へと近付く。

 

 

「今ので敵の勢いは削れましたから、そのまま防柵を作ってください」

「あ、ああ……だがアンタは?」

 

 

俺はタバコに火を灯しながら街の外へ視線を向けた。そこには、かめはめ波の余波で苦しむ黄巾の皆さん。門の辺りから見ると……まあ、沢山控えてらっしゃる。

町民の方が俺に何者かを聞いてくるが……まあ、通りすがりの未来人です。何処の謎転校生だ俺は。

 

 

「………ま、少なくともアナタ方の味方ですよ。それに……」

「なんなんだテメェ!」

 

 

俺が町民へ話しかけてる途中で黄巾の一人が俺に向かって叫ぶ。良いこと、言おうと思ったのにチクショウ。

ま、でも……覚悟は決まったさ。うん。俺はタバコを少し強めに吸って煙をフゥーと吐く。煙は俺の前に小さな線を引いた。

 

 

「この白線からは……ここから先は全面通行止めだ。通りたきゃ今のをもう2、3回は喰らう覚悟をしろや」

 

 

俺の言葉に黄巾の連中はビビった様子だ。うん、この調子でいければ良いのだが……








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