真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第八十話

 

 

 

俺が大河にK.O.されて情けない師匠をしている間に袁紹、袁術の陣営に動きがあった。

袁紹と袁術の軍は兵士の数は多いが武将が少ない。故に魏を挟む形で二面的に数で攻めてくるだろうと予想されていたのだが此処で予想外の事が起きた。

なんと袁紹と袁術の両軍は手を組んで一つの軍となり此方に決戦を挑んできたのだ。流石、袁家……こちらの予想の斜め上を行くな。

 

 

「普通、こういう時って相手を囲ったり、挟み撃ちにしないか?」

「馬鹿なだけよ。どうせ『勇猛果敢に攻め入るのですわ』とか言って顔良や田豊の意見を無視してるのよ」

 

 

俺の呟きに桂花が答えた。うん、その姿が容易に想像できる。と言うか桂花もイラついていた様に見える。あ、そう言えば桂花は一時期、袁紹の所に居たんだった。苦労したのね……

 

 

「兎に角……兵を集結させて戦えるというなら、こちらに負ける要素は何もないわ。ただ、警戒すべきは……」

「……袁術の客将の孫策の一党かと」

 

 

孫策か。確かにあの人ナチュラルに強かった。あれで客将ってんだから。いつまでも袁術に飼われる感じじゃないな。

 

 

「そういうことね。だから袁術の主力には春蘭、貴女に当たってもらうわ。第二陣の全権を任せるから、孫策が出てきたら貴女の判断で行動なさい」

 

 

 

春蘭が孫策の相手か……マトモに孫策の相手できるのは、この陣営じゃ春蘭と霞くらいか?

 

 

「相手はどうしようもない馬鹿だけれど、河北四州を治め、孫策を飼い殺す袁一族よ。負ける相手ではないけれど、油断して勝てる相手でもないわ。これより我等は、大陸の全てを手に入れる!皆、その始めの一歩を勝利で飾りなさい。いいわね!」

 

 

俺が考え事をしている間に軍議は終わっていた。大将の言葉を締めに皆が動き始める。俺も部屋から出ようかと思ったのだが大将に呼び止められた。

 

 

「一刀と純一は残りなさい。話す事があるわ」

 

 

と俺と一刀は居残り決定。はて、何かしたっけな?俺の疑問を余所に皆が出ていって俺と一刀と大将が残る。

 

 

「さて……二人を残した理由だけど……華雄の事よ」

「華雄の事……また何かやらかした?」

「華雄が何か問題を起こしたら即、俺の所に報告が来る筈だが?」

 

 

大将の言葉に一刀と俺は同時に首を傾げた。最近は何も問題なかった筈だが。

 

 

「今じゃないわ……これからよ。私達がこれから戦うのは袁紹、袁術、孫策よ……この意味わかるわね?」

 

 

あ……そっか。袁紹は董卓の恨み。そして孫策は因縁を持った相手の娘。下手すりゃ華雄が命令無視の暴走をするかもしれない。

 

 

「貴方は華雄の手綱をしっかりと握りなさい。霞は自制が効くだろうけど華雄は危なげなのだから」

「華雄の場合、手綱を持つ人間を引きずってまで突撃しそうだけど」

 

 

大将と一刀は俺を見ながらコメントを溢す。いや、どうしろと?

 

 

「どうにかして華雄の手綱を握っていなさい。貴方はある意味、麗羽以上に予想が付かないんだから」

「こっちの予想の右斜め遥か上空を飛んでいきますよね純一さんって」

 

 

誉めてもいないし、人をミスター・○ーンみたいに言うな一刀よ。

 

 

「はいはい。ま、華雄の事は任されたよ」

 

 

俺は軽い溜め息を溢し、玉座の間を出る。しかし華雄の手綱を握れか……

 

 

「反董卓連合の時は縄で縛って開門できないようにしようとしたらしいが……」

 

 

あの時、散々挑発されてキレそうになったのを霞が必死に押さえ、更に部下は縄で華雄を縛って突撃させないようにしようとしたらしい。

結局、華雄を縛る前に突撃を許してしまったらしいが……

 

 

「いざとなったら……マジで華雄を縄で縛るか?」

「純一殿。先程の会……ぎ……」

 

 

玉座の間を出て警備隊の詰め所に戻る途中で稟と遭遇した。稟はさっきの会議で聞きたいことでもあったのか俺に歩み寄る途中だったのだが俺の独り言をバッチリと聞かれてしまった。

 

 

「じゅ……純一殿が華雄を縄で縛り……あまつさえ、その体を……プーッ!」

 

 

俺の独り言を聞いた稟は妄想を加速させて鼻血を出して倒れた。今回のオチはお前か稟。


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