真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月

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第八十六話

 

 

 

 

顔良の案内をした次の日。書類仕事を終えた俺は大河と組手をしていた。いつものように俺が劣勢だったのだが、俺は起死回生の一手に懸けた。

 

 

「行くぞ、シャイニングフィン……痛ったー!?」

「師匠ーっ!?」

 

 

気を右手に一気に集中させたら右手の指がビキッと嫌な音を立てた。鋭い痛みに俺はその場に倒れ混む。

 

 

「くお……あああぁぁぁぁぁ………」

「し、師匠、師匠!?」

 

 

大河が俺を案じて身を揺さぶるが右手がヤバイくらいに痛い。

 

 

「あ、秋月さん!?しっかりしてください!?」

「純一さん!」

「副長!」

 

 

俺の悲鳴を聞き付けたのか顔良や一刀、凪も来たようだ。いや、顔は上げてないから声での判断なんだが。この後、俺は四人に運ばれて医務室へと搬送された。

 

 

 

 

 

「副長……どうやったら右手の指を同時に5本も突き指するんですか?」

「いやぁ……右手に気を集中したらビキッときたわ」

 

 

最近、俺の専属となりつつある医師のジト目を視線から反らしながら答えた。なんとも最近は遠慮がなくなってきたな、この人も。

 

 

「副長……以前は普通に気を手に込めてましたよね?」

「ん、ああ……今回使った技は掌全体に気を込めて相手の顔に叩き込む技だったんだが……」

 

 

手に気を集中させるのには慣れてきた筈だったんだがなぁ……

 

 

「…………副長、もしかして掌だけではなく指にも気を込めましたか?」

「ああ、掌の気を叩き込んだら指先の握力で相手を逃がさない技だから」

 

 

凪の質問に答えた俺だが凪は、その答えに得心が行ったという表情になる。

 

 

「はぁ……それが原因です。気を一定の箇所に集中させるにはそれ相応の気を操らねばならないのです。指先に集めたり、すぐに放つだけなら兎も角、気を指先と掌に集中させれば器……つまり副長の手が保たなかったのでしょう」

「あー……なるほどね」

 

 

凪の説明で指五本を同時に突き指するミラクルを引き起こした原因がわかった。

今までは拳に気を集中したり、掌だけだったのを指先にまで範囲を伸ばしたのが原因だったのか。しかも全体を気で覆うのではなく指に気を這わせた結果、俺の手は気を保つ事が出来ずに崩壊……とまでは行かなくとも突き指状態になったと。

 

 

「副長の体は怪我の見本市ですな。若い医師達の勉強になります」

「この国の医療に貢献できて何よりだよ」

「アンタ……皮肉を言われてる自覚を持ちなさいよ」

 

 

随分な言われようだがマジで医療貢献になってるだけに笑えない話だ。だが俺の身を持って若い医師の勉強に役立てるのならば……なんて思ってたら後ろからツッコミが入る。振り返れば呆れ顔の桂花が居た。

 

 

「桂花、来てたのか?」

「そこの馬鹿が怪我をしたって報告を聞いたから見に来たのよ」

 

 

一刀が桂花の来訪に驚くと桂花はサラっと理由を述べて俺の方へと歩みを進める。

 

 

「ったく……アンタは!」

「ほーひ、ひたひって……」

 

 

桂花は流石に怪我人を叩く気にはならなかったのか俺の頬を両手でつねっていた。

 

 

「アンタね……忙しくなりそうな時に余計な心配させるんじゃないわよ!」

「ほりゃ……わるかっはな」

 

 

桂花は俺の頬をつねったまま叱るが俺はこんな状態じゃ喋れないってのに。

 

 

「あれ、それじゃ桂花ちゃんは仕事を差し置いて秋月さんのお見舞いに来たんですか?」

「っ!!」

 

 

そこで桂花の行動に驚いた顔良が思った事を口にした。まあ、袁紹の所に居た時代の桂花しか知らないなら、そりゃ驚くか。桂花は桂花で自分の行動を指摘されて顔を赤くしてるし。可愛いなぁ。

 

 

 

 

 

 

こんな風に思ってもらえて……俺もそろそろ決めるべきかな。一刀や大河に冷やかされ、二人に罵声を浴びせる桂花にそれを止めようと宥める凪と顔良を見ながら……俺はぼんやりとそんな事を思っていた。

 


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