真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第八十八話

 

 

 

◇◆side文官◇◆

 

 

私は名もない文官。私は魏の文官として書庫で日々働いているのですが、少し前から魏へと来ていた警備隊の副長、秋月純一様の事をお話しします。

副長さんは荀彧様のご実家で文を学んだらしく、字は少々乱れていましたが読み書きは問題なくこなされる方でした。

副長さんと荀彧様は仲が悪い様に見えて実際は仲が良く……と言いますか、荀彧様が素直になれていないだけなのですが……これは城に使える者達の総意かと思います。

このお話はそんなお二人の身に起こったお話なのです。

 

 

これは、とある日。

副長さんが所用で書庫に入らしたのですが荀彧様も偶然居合わせて荀彧様は副長さんにキツいお言葉を浴びせていました。一通りお言葉を聞いた副長さんは再び、仕事に戻っていきました。後程、お話を聞いたら『もう慣れた』との返答が……やはり只者では無いと実感します。

 

それは兎も角、副長さんはお人好しで自身の仕事がお済みになった後も文官の手伝いを始めていました。バタバタと書庫を走る副長さんに荀彧様の機嫌は悪くなっていきました。

何故なら、副長さんに仕事をお願いしている文官の大半が女性だったからなのです。

副長さんは文官の間でも評判が良く、話題にもよく上がります。それ故に、ここぞとばかりに女性文官達は副長さんに仕事を頼んでいます。

そしてそれに比例して荀彧様の機嫌も悪くなっていってます。荀彧様はフンと鼻を鳴らすと自身の仕事へ戻ってしまいました。

荀彧様はご自身が欲しい本の一つが高い所においてあり、目一杯手を伸ばして本を取ろうとしていますが、無常にも少し届かないでいる。すぐ横に置いてある足場を使えばいいのでしょうが荀彧様は意地になっているのか一向に足場を利用する気配がありませんでした。私は差し出がましいと思いながらもお手伝いをしようと思ったら本を抱えたままの副長さんが彼女の隣に行き、目当てであろう本を取る。

 

 

「ほら、これだろ?」

「あ、秋……あ、ありがとう」

 

 

不意に助けが来た事に驚いた荀彧様でしたけど、それが副長さんだと気付いて顔を赤くされていました。上司に言うべき言葉ではないのですが非常に可愛いです。

 

 

「ったく……意地張らないで足場を使えよな」

「そ、そうね……次からはそうするわ」

 

 

副長さんの指摘に荀彧様は顔を赤くしたまま頷きました。以前の荀彧様でしたら、こんな対応は無かったかと思うとドキドキです。

 

 

「足場を使わないなら俺を呼べよ。そのくらいなら手伝えるんだからよ」

「あ……う、うん」

 

 

副長さんの笑みに顔を赤らめたまま頷く荀彧様。甘い、とてつもなく甘酸っぱいですよ、お二人共!

 

 

「じゃ、また後でな」

「あ、待って秋月!」

 

 

そのまま立ち去ろうとする副長さんを呼び止めようとした荀彧様。呼び止められた副長さんは勢い良く振り返ってしまいました。

 

 

「ん、どうした桂花?」

「きゃっ!?」

 

 

振り返った副長さんの肘が荀彧様の胸の辺りに当たってしまいます。

 

 

「あ、悪い桂花。アバラは大丈夫だったか?」

「え……アバラ?」

 

 

副長さんは荀彧様の安否を気にしている様ですが遠目で見ていた私には別の意味で安否が気になりました。だって……

 

 

「ああ、今強く当たっちまったからな。痛くなかったか?」

「………あのね、秋月」

 

 

副長さんは本当に純粋に荀彧様の事が心配なのでしょうが……荀彧様は自身の胸に手を当ててプルプルと震えてらっしゃいます。私はハラハラとお二人のお話を聞いていました。

 

 

「アバラじゃなくて……胸なんだけど……」

「………………………………………え」

 

 

荀彧様は涙目になって副長さんに訴えかけ、副長さんは「あ、ヤバい」と言った表情になってます。

数分後、荀彧様が椅子に座って足を組み、見下ろされる形で床に正座している副長さんの姿が。

書庫の中なので非常に目立ってますが誰も言い出せません。

この光景は曹操様が書庫にいらっしゃるまで続いていました。

 

このお二人が素直に好き合うのは、いつ頃のお話になるのでしょうか?

今日も女性文官の間では噂話が絶えません。








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