真・恋姫†無双 北郷警備隊副長   作:残月
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第九十話

 

 

 

「副長さんもまた珍しいものを発注しますな」

「悪いね、無茶言って」

 

 

俺は服屋の親父さんに、とあるデザインを書いた服の案を渡して作るように頼んでいた。最初に発注書を見て、首を傾げた親父さんは間違っていない。俺がそれだけアホな服の案を出したのだから。

 

 

「ああ、いえいえ!副長さんのお陰でウチの店は儲かってるんですから副長さんの頼みなら作ってみせます!」

「そっか。じゃあヨロシク頼みます」

 

 

親父さんに改めて服の注文を頼んだ後に俺は服屋を後にする。今回、頼んだ服はぶっちゃけ新しい技開発の為に必要な物だ。あの発注書通りに作れたとして、後は俺次第。だがこれが上手くいけば俺の強さは更なる段階へ……やめとこ、何らかのフラグにしか思えないわ。

 

 

「と……あれは……」

 

 

煙管に火を灯して城へ帰ろうとしたのだが、その途中の茶屋で見かけたのは……おいおい、マジですか!?

茶屋に居たのは月、詠、華雄、顔良。何やら危険な取り合わせだ。何があったらこの面子で茶屋に揃うんだよ!

これは何があったか確かめなくては……とりあえず気付かれないように茶屋に入って客を装って話を聞くか。

こそこそと店に入り、月達の死角になる席に座り、話をこっそりと聞く事に。

なんせ、顔良は反董卓連合を決めた袁紹の部下だった。その事に関して今まで問題が起きなかった方が凄いとも思えるが、この状況は大丈夫か?まあ、まずは会話を聞いて……

 

 

「じゃあ……月ちゃんは、その後で秋月さんと?」

「はい。華琳様に命じられて詠ちゃんと一緒に純一さんの侍女になりました」

 

 

あれー?予想外にも仲良く話してる。てっきり一触即発な雰囲気になるのかと思ってたんだけど。

 

 

「斗詩も侍女やってみる?学ぶ事が多いわよ」

「ふむ、その冥土服とやらも似合いそうだな」

 

 

詠と華雄も普通に会話してるし……あれ、俺の勘違い?なんか考えが先走り過ぎた?

ごくごく普通の女の子の会話だよ……なんかもっと殺伐とした雰囲気を予想していただけに驚きだ。

ともあれ、何事もないならそれはそれで良し。なんか肩透かしを食らった気分であるけど……

 

でもまあ……俺が見たかった光景でもあるんだよなぁ………争っていたとは言っても、いつかは手を取り合える世界。劉備もこんな世界を目指すとは言っていた気がするけど……大将からは『アナタと劉備では根本が違う部分がある』と言われた。

ま、これ以上は考えても仕方ないし、盗み聞きも野暮だな。

俺は店に茶代を払い、月達に見付からないように店を後にした。

ふと思ったが、この世界に来てから茶ばかりだから、そろそろコーヒー飲みたい……

 

この後、城に戻った俺は鍛練をしていた。新しい技の開発もそうだが、今は俺の中の気をコントロールする事が重要なのだ。

そして気をコントロールして放つ技がこれだ。

 

 

「ジャン……ケン……グーッ!」

 

 

俺は気を拳に集中して木にぶら下げた簡易サンドバッグを殴った。サンドバッグは俺の拳の威力に一瞬、宙を舞うが木に縛り付けられたロープによって引き戻される。

この簡易サンドバッグは俺が考えたもので、ずだ袋に砂を入れて上の口を縛った上で木に吊るしたものだ。

徒手空拳で戦う者の鍛練には最適だし、木とか岩を直で殴って自爆を防ぐためでもある(主に俺が)

 

さて、珍しく鍛練も無事に終わったので書類仕事に勤しむ俺。言っていて少し悲しくなったが周囲の認知もこんなもんなので最近は気にしなくなってきた。

 

 

「……ん?」

 

 

書類を纏めていく最中、気になる項目を見つけた。

『顔良を侍女として一時的に働かせる事について』なんだこりゃ?そういや、今日街で見かけた顔良も久しぶりな気がした。暫く、魏内部の様々な部署に顔を出してるとは聞いていたけど今度は侍女?そう言えば詠が侍女として働くか?みたいな事は言ってたけど……

 

 

「顔良のメイド服か……ヤバい超似合いそうじゃん。スカートはロングスカートとか似合いそう」

 

 

と言うか、あのビジュアルなら寧ろメイド服がマッチしすぎる。是非とも見てみたいな。

 

 

「って……そっちは兎も角。なんで顔良はここまで色々な所を回ってるんだが……」

 

 

見た感じ、警備隊・武官・文官・雑用と色々して最後に侍女の仕事を学びに来てるみたいだし……袁紹の所から離れて思うところがあるんだろうけど、ちっと不自然だ。でも大将が何も言わないって事は問題はないんだろうけど。

 

 

「と……そろそろ寝るか」

 

 

考え事をしながら仕事してたら結構な時間が経過していたのか窓から外を見れば、すっかり暗くなっていた。この世界には当然時計なんてないので、感覚的に時間を図るしかないんだが、恐らくもう寝る時間くらいにはなってる筈。んじゃこの書類を纏めたら寝るかな。

と思ったのも束の間。少々控えめにだが俺の部屋の戸がノックされた。

 

 

「はーい。鍵は開いてるよ」

「失礼します。純一さん」

 

 

部屋に入ってきたのは月だった。まだメイド服姿のままで、お盆にはお茶を乗せている。

 

 

「さっき部屋の前を通った時に部屋の明かりが付いていたので、まだ起きてると思ってお茶をお持ちしました」

「ありがとう……月」

 

 

優しく微笑む月に俺は思わず、泣きそうになる。月の優しさを1%でも桂花に移植できないかなマジで。

 

 

「ど、どうされたんですか?」

「ん、月の優しさを噛み締めてた」

 

 

俺は月からお茶を受けとると口にする。うん、昼間はコーヒー飲みたいとかボヤいたけど月のお茶があるなら、いいやとさえ思えるなぁ。

 

 

「そう言えば……純一さん。お昼頃にお茶屋さんに居らしたんですか?」

「ぶ……っ!?」

 

 

月の言葉に口にしたお茶を吹く所だった。なんでバレた!?

 

 

「じ、実は華雄さんが純一さんが居たと言っていたので……」

「あー……そっか」

 

 

月の言葉に思わず納得した。今の華雄なら気配を察する事は容易いだろう。にしても簡単にバレるとは……

 

 

「私や詠ちゃんや華雄さんを気にしてくれてたんですよね?斗詩さんが居たから……」

「うん……まあ。でも普通に会話してたから驚いた」

 

 

そう。昼間も思ったのだが顔良は袁紹の……

 

 

「純一さん……私、今の生活が好きなんです。確かに反董卓連合の時に名を無くしました。今までの私を全て消し去ってしまった戦い。でも……純一さんが私を救ってくれた」

 

 

月は俺の右手に手を重ねてくる。俺の右手には、あの時、月を止める為にした行動の爪痕が残されていた。

 

 

「その時の私と斗詩さんが重なって見えたんです。斗詩さんは袁紹さんの命令にしたがって都に攻め行ったけど……その結果全てを失った。君主も友達も……」

 

 

そっか……月の言葉でやっとわかったかも。月と顔良は立場が逆転してしまったから今の顔良の気持ちがわかるんだ。自害しようと自暴自棄になった自身と重ねて。

 

 

「でも最初は大変だったんですよ。詠ちゃんやねねちゃんから斗詩さんには近づくなって言われたり、華雄さんは顔良さんと決闘しようとしたり……」

「その光景が目に浮かぶよ。でもどうして、その状態から真名を交換しあう仲に?」

 

 

元董卓組としては袁紹配下の者を取り入れるのは反対ってのはよくわかるんだが、どうして真名を交換できたのやら。

 

 

「私は少しずつでしたけど……斗詩さんとお話しするようになったんです。そして分かったんです。斗詩さん……魏に来てから今までの自分を後悔してるって」

「後悔してる?」

 

 

月の言葉に思わず聞き返してしまう。

 

 

「袁紹さんの言いなりで色々な事をして……反董卓連合も劉備さんの時も……」

「あー……自分の意思は其処に無かったって事か」

 

 

自身の意思は其処になくても、やった事は罪。もしかして大将はその事を顔良に学ばせる為に?

 

 

「はい。斗詩さんとお話をする内に斗詩さんが自責の念に押し潰されそうなのを見ちゃったんです。泣いて……董卓への謝罪も聞けました」

「その事を会話の中から察した詠や華雄も参加してお昼のお茶会か」

 

 

なんとく察しは付いた。顔良が本気で反董卓連合の事を悔いている事を悟った月や詠達は自身の事は明かさなかったけど、顔良の謝罪を受け入れたんだ……董卓の名は既に死んだ。だから月個人として月は顔良を受け入れたんだ。

全てを否定するんじゃなくて、かと言って全てを水に流す訳でもなく……少しずつ歩み寄る事を決めたって事か。

 

 

「月達が……それに納得したなら良いんじゃないか?まだギクシャクはするだろうけど……」

「クスッ……この事は純一さんが教えてくれたんですよ」

 

 

俺の言葉に月は面白そうにクスクスと笑う。はて、何故俺が?

 

 

「月……それって」

「純一さんは……無自覚ですから……」

 

 

月は座っていた椅子から立ち上がると俺の隣に立つ。スッと俺の首に腕を回して……

 

 

「好きです……大好きです純一さん」

 

 

そう言った月の言葉と共に俺の頬に、とてつもなく柔らかい何かが押し付けられていた。それと同時に感じる女性特有の良い匂い。

月は俺の頬に自身の唇を当てていた。

 

 

「え、あ……」

「お、おやすみなさい!」

 

 

俺が呆然としている間に月は俺から素早く離れてしまう。

そして顔を真っ赤にしたままパタパタと走って部屋から出ていってしまった。

 

 

「あー……完全に不意打ちだったな」

 

 

なんて口では言うものの俺の心臓はヤバいくらいにバクバクと活動を活発にしている。

と言うか今さら、頬にキスされた程度でドキドキしている自分にも驚いてはいるのだが。

 

 

 

 

 

 

だから俺は気づかなかった。開いた扉の影から今の俺と月の一部始終を見ていた奴が居た事に。

 

 




『ジャジャン拳』
『ハンターハンター』主人公ゴンの念能力。
『グー』拳に集中させたオーラで相手を殴りつける。
『パー』掌に集中させたオーラを相手に向かって撃つ。
『チー』手に集中させたオーラを剣に変化させ相手を切り裂く。







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