転生ですか?   作:灰の虚像

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転生ですか?間に合っています?

「こうならないために、生きてきたんだけどな」

 

 そう呟いた少年の周りは倒壊した建物や、未だ燻る木々に埋め尽くされた災害に見舞われたような態を現していた。

 少年自身、着ている衣類は、所々破れ、煤けた箇所、流れて色ずく血の跡が目立つ格好をしていた。

 災害に巻き込まれたのか?この質問には、疑問を感じさせる、確かに、辺りの惨状や衣類に残る血の跡を見てこの少年は被害者だといえるが、この少年の肉体自体は一切の怪我を負っていないのだ。

 実際、この事件を調べる者は答えにたどり着ける可能性は低いといっていいだろう。

 この現状を理解している少年、草薙護堂は、この日『カンピオーネ』になった。

 

 

 

 

 

       ・  ・   ・

 

 

 

 

 自分は、深い悩みがあった。

 それも、生まれてきた瞬間からだ。

 この世界に生れ落ちた瞬間には、自分自身に前世とも言える記憶を持っている事を理解した。しかし、それならば、第二の人生をと、考えたのかもしれなかったが、自身の名が『護堂』と名づけられ、姓が『草薙』と聞いた瞬間いやな予感が頭をよぎった。それが、核心に至ったのは、生まれてきた妹の名が『静花』と名づけられた瞬間ともいえた。

 この世界は、前世の世界にあったライトノベルの世界、そう、作り物の世界。

 ただ、知識があるかと聞かれたら、答えは『否』である。自身が知っているのは、アニメと、ライトノベルを少し見ただけなのだ。アニメに興味を持ち、にわかな知識しかない。

 しかも、この世界、その他の小説のファンタジーと同様に、魔術はある、騎士はいる。挙句の果てには、神様なんてチート臭い生き物が跋扈している世界なのだ。

 ならば関わらなければいいのではないかと言われれば、『是』と答えれる。実際、その他多くの一般の人々は、世界の裏側の事を知らずに生きていけてる。

 だが自身のには、そう言っていられない、この世界『カンピオーネ』の中で一番重要な主人公として生まれてきてしまったのだから。

 そう、理解してからの行動は早かった。学校での成績は優秀と言って間違いなく体を鍛えるために祖父の知り合いである剣道の道場に通うようになった。

 道場に通うとき一瞬頭によぎるのは、サルバトーレ・ドニ。『剣の王』。当代最強の剣士であり、イタリアのカンピオーネの事だ。

 実際才能の面で見れば、適わないのは理解している。だが、少しでも早くから戦う体を作ることを重点にしていたので別に問題は無かった。

 そんな幼少を過ごし、中学には剣道の大会では優勝を何度も経験し傍ら、生徒会長なんて大役まではたしてしまう。

 それもこれも、原作に巻き込まれたときの対応できるための体作りの一環、本音を言えば、原作に関わらず、このまま静かに過ごして生きていきたかった。

 

 だが、この世界は、そんな自分を逃がさなかった。

 

 高校入試の試験の日だ。前々から行こうかと考えていた剣道の有名校を第一志望に頑張っていたのだが、何の因果か当日高熱にうなされ試験を受けれず。第二志望で書いた。高校の入試では、途中の電車内で痴漢犯を捕らえ事情聴取、終わり時計を確認すると、時間がもうない。慌てて向かうが、何故か事件事故に巻き込まれ、試験を受けづに終了。そして、妹の通う中等部もある進学校で有名な私立城楠学院高等部、試験には合格、あれよあれよという間に、母親が入学手続きを勝手にしてしまい、私立城楠学院への入学が決まってしまった。

 

 なぜかと言えば、ここ私立城楠学院高等部は原作の主人公である草薙護堂が通っていたのだから…

 

 

 

 

      ・ ・ ・

 

 そして訪れた運命の転換期、プロメテウス秘笈をイタリアのルクレチア・ゾラへと届けなくてはいけなくなった。

 実際、気づいたら、イタリア行きが決まっていたのだ。頼んだ張本人である祖父は、いつの間にかに出かけてしまい、連絡が取れない状態になっていた。 

 だが、何とかウルスラグナとメルカルトの二柱の戦いの終わったタイミングで行けば、神殺しにならなくてすむかもしれない、そんな淡い期待を胸に、「それならば、世界が見たい」そう言って、母に事情を伝え、イタリアの前に中国へと行き先を変えるのだった。

 中国には、かの女傑がいる。もし、神様が出てきても倒してしまうだろうと安直な思いもあってのことだった。

 

「しかし、中国といえば三国志だよな」

 

 袁詔の本拠地として有名な冀州改め冀州市に来た。

 春休みの間だけなので有名な地を全て回ることはできないだろうけど、それでも、時間つぶしと趣味の両立で、旅足も軽い。

 

(もう少しで、二柱の戦いが始まるかな)

 

 インターネットで調べると、サルデーニャに嵐が近づいていることが書いてある。

 メルカルトの嵐である。

 これが過ぎれば、後は悠々と現地のルクレチア・ゾラへと届ければよいのだ。悩みが少し軽くなる気がしてあまり考えていなかった。

 辺りに霧が立ち込めてきたことに…

 

「まつろわぬ袁紹とか出てきたら、見てみたい気もするな」

 

 心にも無いことを呟いて、辺りを見渡してやっとで気づく、あたり一面霧が覆い隠していることに…

 

(やばい、嫌な予感がする)

 

 途轍もない嫌な気配が漂い始めると、意識を集中する。そして、自分の中の力に集中する。

 

(詰んだ)

 

 自分の頭浮かんだビジョンは何かと戦っている自分自身、何かは分からないが逃げられないことだけは理解している。

 

(諦めて、事の成り行きに任せよう)

 

 霧の向こうから近づいてくる何かを視界に納めて絶望と虚脱感に襲われるのだった。

 

 

 

 

  ・ ・ ・

 

「こうならないために、生きてきたんだけどな」

 

 そして冒頭に戻る。

 手元にはプロメテウス秘笈。すでに力を失ってただの石版と化していた。

 使い方自体は原作通りで安心した。

 いること自体知っていた天災とも言えるまつろわぬ神に対峙したときに、諦めと同時に、権能を盗み戦力がガタ落ちしたまつろわぬ神を、あの女傑か近くの魔術師にでも対処して貰おうと考えていたが、あれよあれよと言う間に事態は深刻化、いつの間にかなし崩し的に倒してしまっていたのだ。

 消えていくまつろわぬ神は、最後に笑い消えていく、それは、以後戦いの運命におかれた自分をあざ笑うかのように、称えるように光となって消えていった。

 そして、草薙護堂は『カンピオーネ』となった。

 

(もう、ウルスラグナとメルカルトの二柱の戦いもどうでもよくなったな)

 

 後に残るのは、早く日本に帰って家族の顔でも見たいとつまらない考えだった。

 

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