転生ですか?   作:灰の虚像

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転生ですか?急ぎます?

 万理谷祐理にとってカンピオーネは鬼門でしかなかった。

 幼い頃、高い媛巫女の力を持ってまつろわぬ神の召喚しようとしたカンピオーネであるヴォバン公爵の下に差し出され、一歩間違えば死んでいたであろう凄惨な経験がある事から、カンピオーネと言う言葉自体にトラウマのような感情があった。

 

 万理谷祐理は、今日あった青年の顔が頭の中に浮かんでは消えていた。

 

(お礼も言えませんでしたが、彼の中に会った霧は何かが…)

 

 頼りになる後輩のお兄さんと言う、今まで男性との接点が少なかった祐理とって、身近な知り合いの異性というのは、それだけで警戒心を少なくしていた。

 それも、祐理自身が幼くして媛巫女として大事に育てられ、私立城楠学院に入っても高瀬の花として男性との接点が少なかったことも原因だが、一番は異性との話した経験が少ないことだったのだが、今は一人の異性をずっと考えているのだ。

 それが恋慕なら、周りが騒ぎになるだろうがかわいい理由として済ませるが、今の祐理にとってその考えは一度も浮かんでこない、それよりも、荷物持ちを手伝ってもらったのに御礼もできなかった事にたいする、生真面目な祐理の性格からくるのと、何故か、初めてあった瞬間にかってに霊視を見てしまった、普通の人にはありえない反応をする力にである。

 

(どうしましょうか、今の私には考えがまとまりません。お母さんにでも聞いてもらいましょうか)

 

 祐理の母親自身には、祐理のような力事態は無いものの、やはり相談相手としても母親としても尊敬している相手に聞いてもらうのは幾分か、考えも纏まるかも知れない。

 相談相手としてもう一人、仲の良い媛巫女の顔が浮かぶが、彼女は相談相手としては少し頼りなく感じてしまう。

 そんな、失礼な事を考えながら帰路についたのだが、家に近づくにつれ何か神聖な気を感じるようになっていく。

 

(この方角は…)

 

 間違いなく、自分の自宅のある七雄神社からこの気が漂っているのだ。

 内心、家にいる母親と妹などの顔を思い浮かべながら、急ぎ足で石段を登っていく、そうするとこの気が家の中から発生するのがわかった。

 

(お母さん、ひかり)

 

 普段しないような顔をして、急ぎ足にこの気の発生源である。七雄神社の敷地内に立つ自宅に向かう。

 毎日上り下りしていた階段が今だけ恨めしく思うが、立ち止まる事無く登り切り、神気を感じるままに、『自宅の居間』の襖を開ける。

 そこでは、今日御礼のできなかった相手と、母親、そしてまつろわぬ神がお茶をしていた。

 

「あっ、祐理おかえりなさい」

 

 母親は、心配するこちらの気も知らずに、湯呑を置いていつものような笑顔を向けていた。

 

 

 

   ・ ・ ・

 

「いや、しかし、神殺しである御主と、まつろわぬ神のわしが神社でお茶をいただくのも乙なものよ」

 

 そうしみじみと呟いて出されたお茶をいただいている。

 

「しかし、すみません。カンピオーネ何て言って上がり込むような事をしてしまって」

 

 護堂の謝った相手は、万理谷の母親であった。

 最初あったとき、自己紹介で娘の通う学校の制服を着た青年とあり、警戒が少し和らいでいたが、自己紹介の後に出た言葉に肝が冷えた。いや、またか…と思ってしまった。

 

「万理谷祐理さんの同級生の草薙護堂です。今回は祐理さんにお願いがありまして、実は自分カンピオーネなんです」

 

 間抜けな挨拶しているなと、護堂自身内心思ったが気にしなかったことにする。

 しかし、カンピオーネ、その単語は、万理谷親子にとっては鬼門、娘にとってはトラウマのようなもの、母親である自分は、昔、後ろ盾が無く、泣く泣く娘を死ぬかもしれない儀式の生贄としてカンピオーネに差し出してしまった後ろめたい後悔の念が浮かぶ、あまりよろしく、いや、もう一生関わりたくないものであった。

 だが、今目の前に現れた青年と老人は、いったい何なのであろう。どちらも巫女としての力の無い自分でも分かるほど気を撒き散らし始めたではないか、それを感じてからは早かった。

 勢いよく頭を砂利にこすりつけ、仰々しい言葉を並べていた。

 当たり前である。

 カンピオーネと呼ばれるものは、神を殺しその権能をもって君臨する覇者のことだ。

 自分の対応が気に食わなければ、東京という都市が無くなるのかも知れない。

 そう思ってやったのに、かけられた言葉は意外なものだった。

 

「すみません。あまりいい思い出の無い言葉かもしれませんが、万理谷さん、いや、祐理さんには害のあることをしませんから、頭を上げてください」

 

 それにと、隣の老人が塩昆布を渡してきた。

 

「お近づきの印に神様特製の塩昆布です。ずうずうしいですがお茶にしませんか?」

 

 そう言った、青年は申し訳なさそうに頭をかいていた。

 その姿を見て、毒気の抜かれたのか、いつの間にかに消えている気配もあって、普段のように上品なしぐさで笑い居間にあげるのだった。

 その後は、たわいの無い話になり、娘の学校での生活内容などを聞いたり、昆布茶が異様なうまさをしていたことに驚きながら、いつしか警戒心の無くなった。普段の笑顔で話を聞き、娘の帰りを待つのであった。

 

 

 この異様な光景、成立させたのは間違いなく、草薙家に流れる人たらしの血で間違いないであろう。

 祖父が数多くのあまり褒められた内容で無い偉業をなしていたことは知っている護堂にとって、近頃、祖父に似てきたといわれるのは苦痛でしかなかった。

 しかし、妹の静花に言わせれば、間違いなく祖父以上のものを護堂から感じると答えただろう。

 しかし、今この場では人たらしの血が、万理谷の母親から警戒心を無くさせていた。

 その事をあまり考えないように、神様特製の塩昆布茶を飲みながら、ゆっくりしていると、万理谷祐理が息を切らしながら、居間に顔を出した。

 

「あっ、祐理おかえりなさい」

 

 母親からかけられた言葉に、今の現状を見て、学校では見せない気の抜けた顔を万理谷はしていた。

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