「ちくしょう!!地球に近付いているのに、なんで追っかけて来るんだよ!!」
ゼータガンダム・リファインは、全速力で地球に向かっていた。
地球に近付けば、当たり前だが重力に捕われてしまう。
モビルスーツの推力で離脱できない程の重力に捕われる…………つまり、地球に近付く程に、モビルスーツは大気圏に落ちるリスクが高くなる。
その為に、ニコルは地球に近付きさえすれば、追撃は緩まると思っていた。
「だーっ!!これじゃ、大気圏へ突入する進入角の計算も、大気圏に突入する方法も見れないぞ!!」
地球に向かって飛ぶゼータガンダム・リファインの後方から、止むことの無いビームが降り続く。
明らかに、追撃の手は緩まっていない。
いや……………ゼータガンダム・リファインが大気圏突入のリミット・ラインを越えた瞬間、ベスパのモビルスーツ隊の足が止まった。
「ようやく止まった…………こっからマニュアル見て、間に合うのか………これ??」
追っ手が止まる…………つまり、ニコル達にとっては後戻りの出来ないチャレンジの始まりを意味している。
「ニコルなら、やれるよ…………私は信じてるから」
マイの妙に落ち着いた言葉に、ニコルは冷静さと自信を取り戻す。
「そうだな…………マイを無事にレジアの元に届けなきゃいけねーし、皆にも生きて会わなきゃいけないし…………弱音を吐いてる暇はないっ!!」
ニコルはマニュアルを見ながら、機体の制御を開始する。
ニュータイプのセンスと言うべきか……………ウェーブライダーは、大気圏による摩擦熱を軽減するように姿勢を整え始めた。
「こいつ…………単独で大気圏突入が出来るように作られてる…………凄い…………だからレジアさんは、この機体を托してくれたのか!!」
「ニコル!!安心した所に悪いんだけど、ベスパのモビルスーツも突っ込んでくるよ!!」
感動しているニコルの横で、マイが大きな声を上げる。
モビルスーツで大気圏に飛び込むなんて無謀…………と言いつつ、自分も今やったトコだけど…………
ニコルは半信半疑で後方を確認すると、確かにゾロアットが3機、ウェーブライダーを追うように迫って来る。
「って……………オイオイ、まぢかよ!!オレはウェーブライダーの形状を見て、ひょっとしたら行けるかもって思ったけど…………普通のモビルスーツじゃ、絶対ムリだって!!」
そんなニコルの気持ちを知ってか知らずか…………ゾロアットはビームライフルを構えて、そして射ってきた。
「くそっ、射ってきた!!コッチは、もう重力に捉えられてるのに!!」
摩擦熱によって、モニターが仄かに赤くなっていく。
それでも、ウェーブライダーは大気圏内での行動が可能だ。
「そのままじゃ、機体がもたないぞ!!そんなんじゃ…………ただの犬死にだろっ!!なんで突っ込んで来たんだっ!!」
ゾロアットの赤い装甲も、摩擦熱によって更に赤くなっていく。
ただ、そんな事は構いやしない…………そう言っているかのように、ビームを撃ってくる。
「ニコル、私達にビームが当たったら、コッチが燃え尽きちゃう。反撃してっ!!」
「やるしか…………ないのか…………こんな、戦う必要の無い戦闘をっ!!」
マイの言っている事も分かる…………ビームが掠めただけで…………少しバランスを崩しただけでも、大気圏突入は困難になるのだ。
ウェーブライダーが反転して、ゾロアットを照準に入れる。
機首から飛び出るように装備されたビームライフルが、ゾロアットを捉えた。
「そこだっ!!」
ゾロアットから放たれるビームを躱し、ニコルはビームを放つ。
先頭のゾロアットが、狙われたゾロアットの射線上に移動し、ウェーブライダーから放たれたビームの餌食となった。
損傷したゾロアットは、分解されながら摩擦熱によって溶かされていく。
「今の動き…………この動きは…………」
仲間をフォローしながら戦うスタイル…………最近まで供に戦っていたパイロットの動きに似ていた。
しかし、ニコルに考える余裕を与えないと言わんばかりに、ゾロアットが攻撃を仕掛けてくる。
命を犠牲にして…………決死隊のように特攻を仕掛けても、大気圏ではウェーブライダーの起動性に追い付ける筈もない。
1機…………2機と…………ウェーブライダーが放つビームの餌食となった。
コクピットは撃ち抜けなかった…………だが、コクピットを撃ち抜かれた方が幸せだったかもしれない。
バランスを崩したゾロアットは、バラバラになりながら燃え尽きて、大気圏に同化していく。
「なんで…………なんでなんだ…………こんな意味のない戦いに、なんで挑んだんだよ!!」
ニコルはコンソールに拳を打ち付けた…………そんなニコルの姿を、マイは無表情で見つめていた…………