「ニコル達は無事で良かったが…………マイの感情の欠落…………そんな事をして、ザンスカールに何の意味があるんだ??」
「ただ感情を抜き取ったとは、考えづらいですよね…………その感情を、何かに利用しようとしてるんでしょうか??」
手を顎に当てて考え込むレジアを見ながら、クレナも首を捻る。
「レジアにとっては残念なお知らせだったんだろうが、コッチもあんまり余裕ねーぞ!!ケイトの持って来た情報だと、月近くの宙域で長距離レーザーの建造が進んでるんだろ??そいつを叩かねーと、地球にいるニコル達も、ミューラも死んじまうぞ」
ヘレンの言う長距離レーザー…………その情報は、ケイトがアメリアを離れる時にアーシィから託された物だった。
Zガンダム・リファインがいなくなった事で、太陽光ハイランドをベスパが易々とが占拠した…………その為、その電力供給を受けて長距離レーザーは開発スピードが早まっている。
「しかし、そのレーザー…………地球を直接攻撃出来るんだろ??ザンスカールのモビルスーツ開発が大して進んでないのも、コレが原因なのかもな…………」
「けどさ…………そいつを叩くにしても、この艦だけで攻撃するんだろ??ベスパのモビルスーツが大した事ないにしても、いくらなんでも無謀じゃないのかい??」
オリファーとジュンコが、長距離レーザー…………カイラスギリーの情報を見ながら疑問を口にする。
「ニコル達もそうだが、ダブルバードの開発でミューラさんも地球にいる。エルネスティさんの協力で、地球連邦の一部が開発に協力してくれているんだ。それにダブルバードはサナリィとアナハイムの技術が正式に融合した最初のモビルスーツになる。その機体の開発を邪魔される訳にはいかない」
「あらあら、ジュンコさん弱気ねぇ…………私達は、ずっと無謀な戦いしかしてないから…………今更な感じだけどね」
レジアとリースティーアは、ジュンコの言う通り無謀な作戦である事は理解していた。
それでも、やるしか無い事も分かっている。
そうであれば、弱音を吐いている余裕は無い。
「レジア達の言う通り、長距離レーザーを地球に撃たせる訳にはいきません。情報によると、護衛艦2隻によるエネルギー補給が必要らしいから、その艦を一隻でも墜とせれば…………」
「そう考えると、結構やれるかもね!!サナリィでの戦いみたいにニュータイプ専用機とか出てくるとキツイけど、そのニュータイプ達も長距離レーザーには否定的みたいだし…………」
艦長のスフィアの言葉に、マヘリアも同調して笑顔を見せた。
「ザンスカールのニュータイプ…………アーシィもレジアも悪い奴らじゃない。それに、マリア・カウンターとベスパは違う。マリア主義を掲げる人間が、大量殺戮平気を容認する訳がない」
アメリアに潜入し、実際にアーシィやレジアと接触してきたケイトの話は説得力がある。
「まずは月の基地、ホラズムで補給してから作戦を開始します。リースティーア、F90の新しいミッションパック…………Nの文字を与えられた力…………NT-Dの能力を持った機体を月基地で換装します。身体への負荷は強いケド…………」
「あらあら、私は結構頑丈よ。心配しなくても、使いこなしてみせるわ」
リースティーアの答えにスフィアは頷くと、艦首をホラズムに向けるように指示を出す。
「ダブルバードも完成目前だ…………ザンスカールが長距離レーザーの照準を合わせるとしたら、リガ・ミリティアの基地がある北欧を狙うに違いない…………だからこそ、今回の作戦は失敗出来ない」
「そうね…………それに地球が打撃を受けたら、せっかく協力的になってきた地球連邦軍も弱気になりそう…………今の連邦に、骨のある奴は少ししかいなそうだし…………」
レジアとマヘリアの言葉に、一同は気を引締める。
戦力差はあるが、そもそもレジスタンスになった時から、そんな戦いが続く事は皆分かっていた。
長距離レーザー…………カイラスギリーを叩く作戦が始まろうとしている。
その先に待ち構える悲劇がニコルの心境を変化させる事に、この時は誰も分からなかった……………