「とにかく、真っ先にF90・Oタイプを搬入してくれ!!Nのミッション・パックは取り付けるだけじゃ駄目だからな!!」
「トライバードのデータも抽出しなきゃならん!!V計画の機体の開発も佳境にきている!!戦闘データと機体データは大至急メイン・コンピュータにコピーするんだ!!」
月基地ホラズムに到着したミリティアン・ヴァヴは、固定された瞬間にメカニックや作業員達に占拠された。
元々はサナリィの基地だったホラズムに、地球連邦軍の要請でアナハイムのメカニック達も派遣されている。
リガ・ミリティアに賛同したアナハイムのメカニック達は、NT-Dのデータを持ち込んでいた。
サナリィの技術者だけでは開発出来なかったニュータイプ・ドライブと呼ばれるシステムは、アナハイムの技術と融合し、ついに小型モビルスーツに搭載出来るようになる。
F90オフィサー・タイプは、周囲の戦場の把握と情報伝達の為にサイコフレームは搭載されていた。
しかし、ムーバブルフレームと呼ばれるモビルスーツの内部骨格に更なるサイコフレームの増量が必要である。
そして、NT-Dをサポートする為のミッション・パックを取り付け、運用実験までを短期間で行わなければならない。
「凄い熱量ですね………前にホラズムに来た時は、レジアさんとマヘリアさんとニコルがザンスカールの部隊を追い払って、歓喜に溢れていたけど………マヘリアさんは負傷していたし、喜びの中にも不安が感じられた。でも今は、サナリィとアナハイムは手を携えて………皆、前しか見ていないですね」
「ホントねー。前より人員も増えている気がするし………トライバードの活躍やザンスカールへの反発が、人々を動かしているのかもねー」
以前ホラズムに来ていたクレナとマヘリアが、その時とは違う人々から感じる熱量の多さに驚く。
「ザンスカールがサナリィの技術者達に作らせているのは、大量破壊兵器か低コストの量産機だ。だが、我々の為に開発してくれているのは、サナリィとアナハイムの技術の融合だ。俺達が、その科学反応の結果を見せてくれると信じているんだろう………責任重大だな」
ホラズムのモビルスーツ・デッキに搬送されていくトライバード・ガンダムとF90オフィサー・タイプを目で追いながら、レジアは床を蹴る。
「さて、メカニック達だけに仕事をさせる訳にもいかない。俺達も、やれる事をやろう」
「あらあら、そうね。私も、F90・Nタイプの換装の手伝いと、操作方法を勉強しておくわ。焦っちゃいけないけど、敵は私達の準備を待ってくれる訳じゃないしね」
レジアとリースティーアは、自分達のモビルスーツに向けて動き出す。
「皆は、ミリティアン・ヴァヴの補給とフォーメーションのチェック!!ガンダム・タイプだけにいい恰好させる訳にはいかないぞ!!ガンイージ隊も、しっかり戦えるとこを見せてやろう!!」
レジアとリースティーアの背中を目で追っていたクレナとマヘリアの背後から、オリファーが発破をかけるように手を叩く。
「そうですね………悔しいですけど、お2人に比べたら私は弱い………それでも、皆で連携して戦えば………」
「私達で、ガンダムより結果を出せばいいんだろ??やってやろうじゃないさっ!!」
クレナの肩を軽く叩いてウィンクしたマヘリアは、そのままミリティアン・ヴァヴのモビルスーツ・デッキに向けて動き出す。
「さて、オリファー隊長。私達は、カイラスギリー艦隊攻略の作戦立案をしなきゃな。地球を直接狙うビームなんて、絶対に撃たせちゃならない!!」
「ああ、分かってる。電力の供給を絶てればいいんだが………ハイランドに被害が出てしまう。やはり、制御している艦を墜とすのが一番なんだろうが………」
ジュンコに促されたオリファーは、基地の中に流れる熱量に危機感を感じる。
もちろん、希望もあるのだろう………だが、どんなに考えても、絶望的な戦いだ。
ホラズムのリガ・ミリティアのメンバーも、それは分かっているのだろう。
だからこそ、ほんの少しでも作戦が成功する為に…………いや、この作戦が失敗しても、次に繋がるように必死に作業しているのだ。
「地球の基地に、ピンポイントでビームを撃たれたら最悪だな………協力的な地球連邦の少数派も、意気消沈するだろうからね。今度の戦いは、勝ち負けよりも………」
「ああ………分かっている。シュラク隊が結成早々全滅しても、レジアとリースティーア、それにミリティアン・ヴァヴさえ生き残って、制御艦を1つでも墜とす………それだけでいい………そうしたら、次に繋げられる。その為に………」
ジュンコに言葉をかけながら、オリファーは眼鏡の奥で、その瞳に決意を表す。
「私達の代わりはいるが、あいつらの代わりはいない。レジアの操縦センスとリースティーアの射撃センスは、練習でどうにかなるもんじゃない」
ジュンコの話を聞きながら、オリファーは天を仰いで大きく息を吐く。
命を散らして希望を繋げて………それを何回繰り返せば、戦争は終わるのだろう…………
だが、希望を託せる人間が自分達の信頼に足る人物である事に、オリファーは少しの幸せを感じていた………