「オリファー! ケイト! 奴の高出力ビームは危険だっ! 散開して叩く!」
「分かった! たが……時代遅れの重モビルスーツだっ! 高速移動しながら戦えば、勝気はある!」
オリファーのガンイージはバーニアを全開にして、アネモ・ボレアスの周囲を飛び回る。
飛び回るガンイージとは対照的に、アネモ・ボレアスは微調整をしながら様子を伺っていた。
アネモ・ボレアスのコクピットに座るティーヴァ・グリフォンも、瞳を閉じてサイコミュから感じられるプレッシャーに神経を集中する。
「動かないなら……コッチから仕掛ける!」
オリファーのガンイージが、動きを止めているアネモ・ボレアスにビーム・バズーカから収縮させたビームを放つ。
が……
アネモ・ボレアスの肩に装備された粒子加速器がアクティブ状態となり、ビーム・バズーカの高出力ビームを取り込む。
そして、粒子加速器の始点と終点を利用したビームがオリファー機に襲いかかる。
「くっ! 今のは?」
「オリファー! 迂闊に仕掛けるんじゃないっ! 相手の兵装も分かっていないんだ。慎重に戦え!」
ジュンコは叫ぶと、アネモ・ボレアスをモニターの中央に捉えた。
「姉さん、あのドーナツ・リング……あれが展開してから、高出力のビームを撃ってくる! 動きは鈍そうだから、あのドーナツを展開させなければ……」
「よし、3機同時に仕掛ける! 肩のドーナツが現れたら、散開して距離をとれっ!」
3機のガンイージは、タイミングを合わせながらアネモ・ボレアスにビームを浴びせる。
「奴は肩のドーナツを展開してなければ、バリアも使えないようだ。このまま、押し込むぞ!」
ビームライフルのビームをビームシールドで防御する姿を見て、オリファーは手応えを感じ饒舌になった。
しかし、そんな時間も長くは続かない。
直ぐにアネモ・ボレアスの肩に、光るリングが現れる。
「ちっ……流石に固いね! 敵の射撃は正確だ! 距離をとって、確実に回避するんだ!」
アネモ・ボレアスが粒子加速器をアクティブ状態にし、粒子加速器に内蔵されたビームを連射した。
アネモ・ボレアスの本体は大して動いていないが、それでもビームは正確にガンイージを捉えてくる。
ビームシールドを駆使しながら、ガンイージはビームの雨を巧みに躱す。
「ジュンコ! この状況はマズイ……」
ビームを躱す事に集中していた3機のガンイージは、アネモ・ボレアスの正面に集まってしまっていた。
「しまっ……たっ!」
「私が射線をズラします! 2人は回避をっ!」
ケイトのガンイージが、オリファー機とジュンコ機の前に飛び出す。
ケイト機の正面では、アネモ・ボレアスがボレアス・キャノンを構えている。
「ケイトっ! 無茶するんじゃないっ!」
「タイミング的に、誰かが高出力ビームを受けないと、あのビームに全機巻き込まれる! もう……これしかないっ!」
ケイト機はビームシールドの出力を最大にして、アネモ・ボレアスに近付いていく。
「無駄な動きね……モビルスーツ1機で、ボレアス・キャノンを防げる訳がない……」
ティーヴァは静かに言葉を発すると、トリガーになるスイッチを押す。
ボレアス・キャノンに粒子が集中し……そして、凄まじい閃光と共にビームが放たれる。
「うおおぉぉぉぉ!」
ケイトは叫びながら、瞳を閉じた。
目を開いたままだと、機体を回避したい衝動に駆られてしまうと思ったからだ。
回避したところで、間に合わない事は分かっている。
それでも……頭で分かっていても、反射的に逃げだしたくなる程の閃光だった。
バシュウゥウゥ!
ボレアス・キャノンが放たれた瞬間、更なる激しい光が戦場を照らす。
それによりアネモ・ボレアスの機体はバランスを崩し、ビームの射角は大きくズレる。
「あらあら……3対1なのに、何をしているのかしら?」
そう……アマネセルが放った高出力のビームがオリファー機とジュンコ機の間を通過し、ケイト機の脇をスレスレで抜け、アネモ・ボレアスの放ったビームと交錯した。
「まったく……来るのが遅いんだよ! しかし、出鱈目な射撃精度だね……つくづく、ヘレンにアマネセルを任せなくて良かったよ」
「あらあら……ようやく、私に感謝する気になったのかしら?」
ガンイージの横に飛んで来たアマネセルを見て、ジュンコは気持ちが落ち着いた気がする。
リースティーアに頼ってしまっている自分に気付き、ジュンコは少し苦笑した。
「姉さん、とんでもねぇビームが見えたが、大丈夫だったか?」
アネモ・ボレアス以外のザンスカール機が撤退した事で、ヘレン達もジュンコ達に合流する。
「ああ……しかし、この状況……どうなっているんだ? 敵の新型の実戦テストにしては、戦場が静か過ぎる……」
嵐の前の静けさ……ジュンコには、そんな気がしてならなかった……