「くっ……ボレアス・ベースが無いから、少しの衝撃でバランスが崩れる! それに、あの機体……私の撃ったビームに当てた……」
ティーヴァは、かなり距離のある場所から放たれたであろうビームの射撃精度に驚いていた。
確かにボレアス・キャノンは、構えてからビームを放つまでに時間がかかるし、粒子加速機に光の輪が出来る為に、射撃タイミングは読まれ易い。
「まだまだ、改良が必要な機体……と、いう事か。ノートスの方はどうかな?」
スクイード1から出撃したアネモ・ノートスのバックエンジンユニットから放たれる光点をモニターに映しながら、ティーヴァは耳に付けた鈴型のピアス……サイコミュ増幅装置を指で叩いた。
「私達のオリジナル……アーシィ大尉が乗っているのか……なら、トライバードも来るな。この戦場で、決着をつける!」
アネモ・ボレアスは、カイラスギリーの方へ近付きながらアネモ・ノートスに寄っていく。
「また新型……そして、また大型のモビルスーツだ。ザンスカールは、一体何を考えている?」
オリファーは近付いて来る新型のモビルスーツ、アネモ・ノートスをモニターに捉え、疑問を口にする。
「機体が大きくても、性能は高いだろう。何らかのテストをしている様だしな……長距離射撃と同様に、あの馬鹿でかいバックパック・ユニットには、用心した方がいい」
ジュンコは、迫って来るモビルスーツに警戒を強めた。
「あらあら……敵の新型なんだし、新しい装備なら用心するのは当たり前よね……それより、あの機体にはニュータイプが乗っているわ。この子がデストロイ・モードになりたくて、ウズウズしているの」
「へぇ……そんな事まで分かるのかい? けど、私達は引く訳にはいかない。相手が新型だろうがニュータイプだろうが、あの巨大なビーム兵器が次に撃つ前に、必ず仕留めるんだよ!」
ヘレンの気合いの入った言葉に、シュラク隊の面々が頷く。
「それに、私達のエースも合流してくれた。大丈夫……必ずやれるわ! 私達なら……シュラク隊なら、必ず!」
クレナの言葉は終わらないうちに、白いモビルスーツ……トライバード・アサルトが、閃光を身に纏いながらシュラク隊の前に踊り出た。
「遅くなった! 特攻してくるモビルスーツに手間取ってしまった……が、どうやら仕切り直しのようだな」
「レジア、無事だったんだね! じゃあコッチも、全戦力が揃ったってコトで……一気に敵を叩いちゃいましょ!」
マヘリアのガンイージが、ビームライフルを構え……そして、アネモ・ノートスに向けてビームを放つ。
そのビームを皮切りに、シュラク隊のモビルスーツが散開する。
「ベスパの新型が2機か……タシロがスーパーサイコ研究所と繋がっているのは、間違いなさそうだな」
「方向性は良い……だが、パイロットの脳波コントロールが大変そうな機体だな。タシロと言う男の目標はザンスパインなんだろうが……まだまだ時間がかかりそうだな……」
2機のアネモ・シリーズの後方から現れたモビルスーツ……ザンスバインとマグナ・マーレイ・ツヴァイ。
背後をとったと思った矢先、その背後にもモビルスーツ……
「混戦になりそうだねー! ま、その状況は得意だわっ! タイタニア、飛び込むわよっ!」
カイラスギリーを護衛していたレシェフを10機引き連れて、タイタニア・リッテンフリッカも現れる。
「なんだ? 次から次へとアンノウン機が……全機、警戒を怠るなっ! おそらく、強力な機体ばかりだっ!」
レジアは、額から放たれる汗の粒を拭った後にバイザーを閉じた。
量産機に混じって、明らかにワンオフ機がいる……
ワンオフ機……優秀なパイロットの為に、そのパイロットの専用機として造られた機体……
レジアのトライバード・アサルトも、レジアの為のチューンアップされている。
だからこそ、スペック以上の強さを見せていた。
ワンオフ機の強さを身に染みて感じているレジアは、危機感を強める。
ハイコストのワンオフ機を与えられているパイロットが、弱い訳がない。
新世代のモビルスーツ達が、ついに同じ宙域で刃を交える事になる……
壮絶な戦いの火蓋が、ついに切って落とされた……