「撃ってきた! コロニーの中で平気でビーム兵器を使うって事は、リースティーアか?」
「ああ……射撃のエース。それに、あのF90はL型のミッションパックを装備している。距離を詰めないと、一方的に叩かれるぞ!」
リゼル改とリファリアのF90は、エネルギーを絶妙にコントロールされたビームを辛くも躱し、距離を詰めようとする……が……
「今度は、ミサイルかよ!」
「S型のクルージング・ミサイルだ! くそっ、やはりフォルブリエも一緒かっ!」
モビルスーツの形態情報を認識し誘導してくるミサイルは、破壊しない限り追ってくる。
「ちっ、どうにもならねぇ! とりあえず、迎撃するぞっ!」
プロシュエールは、リゼル改を向かってくるクルージング・ミサイルに向け、ビームを放つ。
「ダメだっ! L型から視線を離したら……」
リファリアの言葉が終わらぬうちに、ビーム・キャノンを内蔵するシールドを装備した左腕が落とされた。
F90Lタイプのロングレンジ・ライフルから放たれたビームが、リゼル改の左肩を貫通し、破壊したのだ。
「なんて奴だっ! こうもピンポイントに、ビームが当てれるモノなのか!」
「くっ……どうであっても、前に進むしかない! L型に背中を向けたら、背後から貫かれる……」
リファリアは、後退する危険を感じとっていた。
下がったところで、加速性能も相手の方が上……
ロングレンジ・ライフルの射程外に出るまでに、確実にビームの餌食になってしまう。
「あら……後退しないのね。意外と頭の良い連中なのかも……蜂の巣に出来ると思ったのに……」
「確かに……下がってくれりゃ、楽だったんだがな……」
そこまで言って、フォルブリエは首を傾げた。
「いや……だがよ……このまま戦えば、確実に俺達が勝つ。奴らが、命懸けでザンスカールだかベスパの為に戦うかね?」
「あら、そうね。最初から機体性能のハンデがある上に、腕も差がある。私達と戦うのに、性能の劣ってる機体で、数も同数で戦うなんて不思議ね……」
サナリィのテスト・パイロットの中で、リースティーアとフォルブリエを知らない者はいない。
それぞれ射撃とサポートはトップクラスの腕を持っているが、総合値でも他のテスト・パイロット達を圧倒していた。
同じテスト・パイロットと言っても、リースティーアとフォルブリエは新兵器を使う側、他のテスト・パイロットは、その兵器で倒される側……
その為、リースティーアとフォルブリエは、他のテスト・パイロット達の事はよく知らない。
だからこそ、疑問に思った。
普段から2対10ぐらいで戦っていても勝てない相手に、2機で勝てる筈もない。
「捕まえて、話でも聞いてみるか? 俺達の知らない情報を持ってるかもれんし……」
「あら、そうね。でも、罠の可能性もある。慎重にいきましょう」
リースティーアはロングレンジ・ライフルの弾をペイント弾に変更すると、突っ込んでくる2機のメイン・カメラに照準を合わせる。
「じゃあ、やりますか。慎重に……な!」
フォルブリエは2連ミサイルポッドから2発のミサイルを発射すると、そのままバーニアを吹かす。
クルージング・ミサイルではないが、先程の記憶が過ぎったリファリアとプロシュエールは、回避行動が大きくなる。
「あら……固まっててくれれば、楽なのに……まぁ、いいわ」
回避行動をとって隙の出来た2機に対し、F90Lタイプから放たれたペイント弾が、それぞれのメイン・カメラに直撃した。
「くっ! ペイント弾だとっ!」
「プロシュエール、パニックになるなっ! 寧ろ、話し合いが出来る場を与えられたのだからな……」
この状況でのペイント弾……リファリアは助かったと感じていたが、プロシュエールは焦る。
得体の知れない女性を、コクピットに乗せているのだから……
その女性は、プロシュエールの目を見て頷く。
「リースティーアとフォルブリエが、話の分かる奴なら良いんだがな……それと、リファリアっ野郎も信用出来ない。あの時、クローンの顔を見られていたら……」
しかし、最早どうにもならない。
メイン・カメラを潰されて、画質の落ちたサブ・カメラで戦う事は困難である。
「あんた、名前は?」
「私……私達クローンは、名前はありません。感情を持った私だけがオリジナル・カネーシャと呼ばれていましたが、後はカネーシャ・タイプと……」
それを聞いたプロシュエールは、ロケット・ペンダントの中の写真を思わず見ていた。
「クレナ……クレナの名前を貰ってやってくれないか? 宇宙海賊をやっていた頃、生き別れになった恋人の名前なんだ……今は、それしか思いつかん。名前が無いと、余計に怪しまれるしな……」
「クレナ……クレナ・カネーシャですか……良いのですか、そんな大切な人の名前を頂いても……」
プロシュエールは何も言わずに頷き、F90Sタイプの放った電子ネットにリゼル改を委ねた……