「リースティーア、動きが止まっているが……仲間が、人質になっている?」
リファリアはタイタニア・リッテンフリッカの猛攻を躱しながら、確実にビッグキャノンに近付いていた。
タシロが木星の部隊を良く思っていないのは、マデアからの情報で知っている。
そして、明らかにベスパの部隊がレシェフ部隊を攻撃している事実……
タイタニア・リッテンフリッカのパイロットが仲間思いなのは、仲間を撃とうとしたリグ・グリフに攻撃を仕掛けた事で分かっていた。
なら、それを利用しない手はない。
レシェフのパイロットの能力は高いが生粋の軍人ではなく、味方のマーカーが出ている機体を撃てないでいる。
その状況を黙って見ていられないアルテミスは、リファリアの思惑通り標的をリグ・ラングに定めてマグナ・マーレイ・ツヴァイから離れていく。
「良くも悪くも、お子様だな。だが、これでリースティーアの援護に行ける」
バーニアを全開にするマグナ・マーレイ・ツヴァイの目の前に、その行方を遮るようにリグ・ラングが迫る。
「量産機を多少改良したところで、ワンオフのマグナ・マーレイには勝てんよ。混乱しているレシェフと一緒にしてもらっては、困るな」
リグ・ラングの放つビームは、尽くマグナ・マーレイ・ツヴァイのIフィールドによって弾かれていく。
そして放たれる拡散ビームは、リグ・ラングに反撃の猶予さえ与えない。
更に、怒りに身を任せたアルテミスの駆るタイタニア・リッテンフリッカの猛攻に、リグ・ラングは為す術なく墜とされていく。
リファリアのマグナ・マーレイ・ツヴァイは混乱する戦場の中で、最短距離でリースティーアのF96アマネセルに向かって飛ぶ。
それでも、動きの止まっているアマネセルのコクピットに迫るエバンスの操るリグ・ラングのビームサーベルの方が早い。
「機体はそのままで、パイロットは死んでもらう! 悪く思うなよ!」
ビームサーベルのビームの粒子が、アマネセルのコクピット部分の装甲を焼き始めた……その時、リースティーアが動く!
アマネセルのアポジモーターが火を噴き、微かに機体を後ろに動かす。
「抵抗するなって言った筈だ! 貴様のせいで、仲間が一人死んだな!」
リグ・ラングの左手首に装備されたマルチ・ランチャーが、動けなくなったジュンコのガンイージに向けて放たれる。
「あら……残念ね。追い詰められたのは貴方の方よ。エバンスさん」
ランチャーはジュンコ機に直撃する直前、飛んできたビームシールドによって破壊された。
「ちっ、増援かっ! だが、まだやれる事はある!」
百戦錬磨のエバンスの思考は、常に先を見据えている。
予期せぬ事態が起きても、直ぐに修正案を導きだす。
傭兵として戦場を駆け抜けた経験が、その思考スピードを生み出していた。
エバンスのリグ・ラングは、ジュンコのガンイージに向けてバーニアを全開にする。
ランチャーの爆発で、ビームシールドに繋がるワイヤーが丸見えだ。
マグナ・マーレイ・ツヴァイとビームシールドを繋ぐそのワイヤーを、リグ・ラングのビームサーベルが斬り裂く。
「動きに無駄がない。この位置では、拡散ビームは使えんか……」
リファリアは、ガンイージに迫るリグ・ラングの動きを見て呟いた。
拡散ビームを撃てば、ジュンコのガンイージにも当たってしまう……リファリアはビームを放つが、単発のビームに当たるエバンスではない。
エバンスのリグ・ラングはジュンコ機の背後に回り込むと、胴体と左足だけになったガンイージを盾のように構えてアマネセルに向かって突っ込む。
武装を全て解除していたアマネセルは、完全に反応が遅れた。
直ぐに使える武装は、ビームサーベルとバルカンのみ……
「ゴメンね……アマネセル。ジュンコさんを救う方法が、一つしか思いつかないわ……リファリア、ジュンコさんをお願いね……」
アマネセルはフェネクスのパーツをパージすると、リグ・ラングの足元側へバーニアを噴かす。
Iフィールドを発生するフェネクスのパーツがあれば、確実にジュンコ機を盾にしたまま攻撃してくる。
ジュンコ機を放棄すればアマネセルを撃てる……そんな絶妙なタイミングで、アマネセルをリグ・ラングの下のスペースへ滑り込ませた。
エバンスのターゲットは、ビーム・マグナムを正確に撃てるアマネセル……その機体を撃てるチャンスを逃す筈がない。
リースティーアの思惑通り、自らの下方向に移動するアマネセルの動きに正確に反応し、ビームライフルの銃口が動く。
上方向であれば右腕でガンイージを持ち上げて、人質のジュンコごとアマネセルを狙ってきたかもしれない……
しかし、下ならば……
ガンイージごとビームを撃つとなると、ワンテンポ遅れる。
確実にアマネセルを撃つ為に、ガンイージを放棄するだろう……
だが、ビームサーベルが届く位置ならば、当然ガンイージで防御してくる筈だ。
そう……つまりアマネセルは、確実にリグ・ラングのビームに貫かれる……
放たれるビーム……スローモーションに見えるビームに、リースティーアは死を覚悟した。
ジュンコのリーダーシップは、これからのシュラク隊に必ず必要になる。
そして、何故か感じる……リファリアがいるという安心感……
訪れる衝撃……光の中に消えていく感覚……
リースティーアの乗るコクピットは、激しい衝撃に晒されていた……