機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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操られし者37

「マヘリア! 大丈夫か?」

 

「ペギー、来てくれたのね! クレナが敵に操られてるの……何とかしないと……」

 

 近付いたペギーとマヘリアのガンイージの間を割って入るように、ビームが放たれる。

 

「この荒々しさ……本当にクレナなのか?」

 

「ええ……でも、これで分かるでしょ? クレナは操られている。強制的に、私達を狙わせてるのよ……」

 

 ビームを放ってきたクレナ機は、左手にビームサーベルを持ってバーニアを全開にしてペギー機の懐に飛び込んできた。

 

「速い! カリーンにいた時は、手を抜いてたってのかい? けど、片手のモビルスーツにやられる程、落ちぶれちゃいないよ!」

 

 ビームサーベルが重なり合い、スパークが舞い散る。

 

「うわあああぁぁぁ!」

 

「確かに、声はクレナだね。こんな叫び声は、聞いた事は無かったが……」

 

 機体が触れ合う事で、お互いの声がコクピットに流れてきた。

 

「あ……ああ……ペギーさん……お願い……私を……殺して……自分じゃ、どうにも……出来ない……」

 

「何を情けない事を言ってるんだ! まだ……誰も、アンタを助ける事を諦めちゃいない! 助けられる側が、真っ先に諦めるな!」

 

 左手のみでビームサーベルを操るバランスの崩れたクレナのガンイージを、ペギーのガンイージが押し返す。

 

「そうよ、クレナ! 私達は、あなたを救いたいって思ってる! だって、クレナは私達の仲間でしょ? もしも操られていなくて、クレナが自分の意志で裏切っていたとしても、それでも私達はクレナを討たない! だって、クレナは私達の危機を何回も救ってくれた……沢山の笑顔を私達にくれた。だから、私達はクレナと一緒にいたいの!」

 

 マヘリアの言葉に、ペギーは仲間の大切さを実感する。

 

「そう……穏やかなクレナは、戦争をしている私達には貴重な存在だ。忘れかけてる優しさを思い出させてくれる……アンタの意志は関係ない。必ず、連れて帰る!」

 

 そして、再びビームサーベルが交錯した。

 

「う……あああああぁぁぁ!」

 

 クレナの意思は再び底なし沼に引きずり込まれる様に、深く深く沈んでいく。

 

「カネーシャ・タイプ……貴様ら、クローンの心を揺さ振るんじゃない! 心が崩壊してしまうぞ!」

 

 クレナの心の浮き沈みをサイコミュの力で察知したアーシィが、2機のガンイージに牙を剥く。

 

 バック・エンジン・ユニットとアネモ・ノートスが、2機のガンイージを挟み込む。

 

「墜ちろ! リガ・ミリティア!」

 

「やめろ、アーシィ! 心が壊れるんじゃない! クレナは、必死に戦っているんだ!」

 

 気迫……レジアのプレッシャーが、アーシィを襲う。

 

 サイコミュ兵器てあるバック・エンジン・ユニットが、ボロボロのトライバード・アサルトに反応した。

 

 弱々しくビームライフルを構えるトライバード・アサルトの姿に、アーシィは戦慄を覚える。

 

「どこまでも邪魔をする……そんな姿になってまで邪魔をするな! レジア・アグナール!」

 

 放たれるマルチプル・ビームランチャー……

 

 しかし、回避不可能のトライバード・アサルトの目の前に光の盾が現れて、バック・エンジン・ユニットから放たれたビームを四散させた……

 

 

「あんたがレジアを……そして、クレナを狂わせたのか!」

 

 ダブルバード・ガンダムから放たれたビームが、アネモ・ボレアスの脇スレスレを通過する。

 

「なんだ……こいつのプレッシャーは? ちっ、イライラさせてくれるじゃないか!」

 

 細かくビームを放ちながら、ダブルバード・ガンダムを牽制するファラだが、全く当たらない。

 

 それどころか、動きを予測されているが如く、動いた先にビームが待ち受けている。

 

「ふざけたパイロットだ! この私を墜とそうってのかい!」

 

「ふざけてるのはソッチだろ! 鈴の音で相手を幻惑させるなんて、姑息なマネをしやがって! けどな……レジアやリガ・ミリティアの想いが詰まったダブルバード・ガンダムに、そんな小手先の兵器は通用しない! 貴様を墜として、クレナを解放する!」

 

 ボレアス・ベースによって機動性が上がったといっても、ミノフスキー・ドライブによって加速するダブルバード・ガンダムを上回る事は不可能だ。

 

 高出力のビームによって、アネモ・ボレアスの機体は少しずつ焼けていく。

 

「もう誰も失わない……ジュンコさんと約束したんだ。レジアもクレナも、連れて帰る!」

 

 突き刺したビームサーベルは、アネモ・ボレアスの胸を貫いた……いや、貫く筈だった。

 

「はい、そこまで! ちょっと、この胸くそが悪い女……いや、人形を生かしておかなきゃいけなくなったんでね……悪いけど、引いてくんない?」

 

「なんだ、お前は?」

 

 右手に持ったビームサーベルでダブルバード・ガンダムのビームサーベルを防ぎ、左手のビームサーベルを振る。

 

 後方に弾け飛ぶダブルバード・ガンダム。

 

「またミノフスキー・ドライブ搭載型か……タシロの馬鹿がデータを盗まれたばっかりに、いい迷惑だわ。ま……それでも、私の方が強いけどねっ!」

 

 銀色の髪をかきあげ、アルテミスはダブルバード・ガンダムを視界の中央に捉える。

 

「マデア大佐とアンタ、どっちが強いかな? 興味あるけど、今は人形の回収が先かぁ……」

 

 タイタニア・リッテンフリッカのコクピットで、アルテミスは薄い笑みを浮かべていた……

 

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