機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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宇宙の十字架5

 心の中に、光があった。

 

 心を失った時と同じ、赤い光……

 

 私は……私の心は、反射的に光を拒む。

 

 赤い光に晒された時、自分の感情が吸い取られた。

 

 大切な人を思い浮かべても何の感情も湧かなくなった……あの瞬間に、目の前にあった光……

 

 拒まずには、いられない。

 

 でも……ザンスカールの戦艦の中で浴びた光とは、何かが違う。

 

 機械的で無機質な感じがした光……人を愛する感情を奪っていった光は、そんな感じだった。

 

 でも……今、目の前にある光は……

 

 感情的で温かさを感じる光……

 

 同じ赤い光なのに、こんなに違う感じがするものなのだろうか……

 

 その赤い光が、少しずつ心の中に流れ込んでくる。

 

 その瞬間、突然視野が広がった。

 

 視野が広がった……という表現が正しいか分からないが、心で感じるエリアが広がった……そんな感覚。

 

 心が感じるエリアが広がった事で、見えて来たモノがある。

 

 心の奥底で、暗闇に囚われる白い光……

 

 あれが、分離してしまった私の心の欠片なのだろうか? 

 

 そして、私の心は落ちて行く。

 

 次に意識が戻った時、私は暗闇の中にいた。

 

 何も見えない暗闇の中……だけど、今までと違う……

 

 今までは、心の一部が欠損していたから自由だったのだろう。

 

 私が落ちた先は、きっとさっき見た白い光……

 

 暗闇に囚われている……でも、恐怖は無い。

 

 それは、心が満たされているから……

 

 けど……今までとは違い、焦り始める。

 

 早くこの暗闇を抜け出して、大切な人に会いたい……

 

 とにかく上に……浮上を試みるも、暗闇が方向感覚を狂わせる。

 

 慌てないで……心を落ち着けて……

 

 何故だろう……クレナさんの言葉が心に入ってくる。

 

 そして、クレナさんの言葉を思い出す。

 

 暗闇の中で仲間の声を聞いて、そして手を伸ばしてくれた……

 

 私は焦る気持ちを抑えて、耳を澄ます。

 

 聞こえてくる……今までは聞こえなかった仲間達の声……

 

 ニコル……クレナさん……トライバード・アサルトを修復しようとするメカニックさん達の声……

 

 ドクン……ドクン……

 

 心が、脈を打ち始める。

 

 レジア……レジアは……

 

 どんなに目を凝らしても、見えるのは闇……

 

 それでも私は、必死に手を伸ばした。

 

 私は何をしていたのだろう……大切な人が……命より大切な人の命が消えそうなのに……

 

 振り回す腕に、何かドス黒いモノが触れる。

 

 私の心を奪った時に、私の心に入ってきたザンスカールの情報の一部……

 

 エンジェル・リングから放たれる赤い光……私の心を奪った赤い光……

 

 その光が地球に降り注ぐ映像が、心の中で再生される。

 

 争う心を無くさせて、平和な世の中にする? 

 

 違う……強制的に造られる平和なんて、誰も望んでない……

 

 人は、心を操られる事を望んでいない……

 

 心の欠片に触れるまでは、何も考えられなかった……何も感じないようにされていた。

 

 でも、心の欠片に触れた今なら分かる……心を取り戻した時、大切な事に気付く……

 

 心を失っていた時の自分の行動に対する嫌悪感……それが全て。

 

 助けて……助けて! 

 

 心の中で、叫ばずにいられなかった。

 

「マイ! オレの声が聞こえる方に向かって、手を伸ばせ!」

 

 懐かしい……世界で一番大切な人の力強い声に、涙が出そうになる。

 

 私は躊躇わず、その声に向かって手を伸ばす。

 

「マイさん……自分の心に逆らわないで……心の動きに身を任せて……仲間達の声に耳を傾けて……大丈夫、私達が必ず引き上げるから」

 

 静かだけど、私の事を本当に心配してくれているのが分かる。

 

 クレナさんも、こんな感覚だったのかな……違うね、もっと辛かった筈……無理矢理、大切な仲間達と戦わされていたんだから……

 

 でも、とても優しい……元のクレナさんだ。

 

 クレナさんの声を聞いていると、自分も心を取り戻せる……そんな勇気が湧いてくる。

 

「マイ、レジアが待ってる! チンタラしてんじゃねぇ! とっとと戻って来い!」

 

 ニコルの声と共に、赤い光が道標のように天から伸びて来る。

 

 そして、その光を浴びた時に仲間の……大切な人達の心を感じた。

 

「レジア、クレナさん、ニコル!」

 

「マイ、もう大丈夫だ! オレ達はここにいる! そして、マイの心も!」

 

 力強いレジアの声……クレナさんも、ニコルも感じる事が出来る。

 

「マイさん……よく頑張って……」

 

「マイ、このまま引き上げる! しっかり掴まってろ!」

 

 皆の声に身を委ねると、身体が浮上していくのが分かる。

 

 赤い光が濃くなっていく……そして、光に飲み込まれていった……

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