「ブルー3、見えて来ました! ダミーバルーン、パージしますか?」
「いや、敵の動きを把握してからだ! ダブルバードとトライバード・バスターの出撃準備、急がせろ!」
ミリティアン・ヴァヴは、ブルー3コロニーをモニターで捉える事が出来る宙域まで移動していた。
隕石を模倣したダミーバルーンは、推進用のガス噴射装置が取り付けられ、操舵手の技術さえあれば隕石の自然な動きが出来る。
操舵手マッシュの腕は無骨だが、逆に繊細な動きの方が得意であり、本当に隕石が漂っているような動きを再現していた。
「付近に敵影ありません。あの……クレナから艦長に通信が入ってます。モニター、出します」
ヘッドセットを外しながら、ニーナは座席を回転させてスフィアに伝える。
「クレナ、どうした? 機体の出撃準備が出来るまで、身体を休めとくんだ。これから長時間、集中を続けなきゃいけない時間が続く……休む事も大切な仕事だぞ」
「はい艦長……でも、一つ提案が……私がブルー3に潜入して、内部の状況を探って来ます。上手くいけば、内部から崩壊させる事も出来るかもしれないし、無駄に命を奪わなくて済むかもしれません」
クレナの提案に、スフィアは艦長席のシートに身体を深く沈み込ませ、顎に手を当てて少し考え込んだ。
今回の作戦は、ブルー3コロニーを破壊する事を目的にしている。
民間人も、非戦闘員も、多くの人が生活しているコロニーを破壊しようとしていた。
ダブルバード、トライバード・バスター、そしてミリティアン・ヴァヴの高出力ビームの射撃で、初撃で3ヶ所はコロニーに穴を開ける事が出来る。
コロニーの動力部に直撃させれば、爆発させる事も可能かもしれない……
そしてビームを放った後に直ぐに転進し、迫って来る敵をダブルバードで迎撃、戦艦から離れてもミノフスキー・ドライブなら追い付ける。
ミノフスキー・ドライブは過剰粒子を排出してしまう為、位置が敵に分かってしまう可能性はあるが、ブルー3を破壊した後は敵の地球進攻を止める為に動く予定なので、追っ手を振り切れれば問題はない。
どのみち、位置はバレるのだから……
しかし、ミリティアン・ヴァヴのクルーは命の重さを知っている。
ニコルは地球で、クレナはレジアに、命を失う意味、命の大切さを学んだ。
だからこそ、命を無駄に奪いたくはない。
コロニーの破壊行為は、ザンスカールのビッグ・キャノンと同じ……どんな理由があれ、大量虐殺に変わりはなかった。
どんな理由があれ……そこで人の人権を奪うような兵器を開発していたって、やはり避けたい。
ザンスカールと同じ事を……自分達が嫌悪した事を、自分達が行う事を……
だが……代案が出る事もなく、ここまで来てしまった。
「クレナ……ブルー3は兵器工場じゃないかもしれないし、逆にベスパの駐屯地の可能性もある。どちらにしても、私達には時間が無い。侵入しても、時間になればブルー3を破壊するしかないんだ。人の心を奪う兵器……突拍子もないが、本当だとしたら開発させる訳にはいかない。人を生かしたまま殺す兵器……私達が、どんな汚名を着る事になっても、なんとしても止めなければいけない。長距離射撃の可能性を上げる為にも、クレナとバスターの力は必要だ」
「でも……私ならカネーシャ・タイプのクローンとして、憲兵の目を誤魔化す事が出来ます。時間になったら、撃ってもらって構いません。皆さんも、本当はこんな作戦したくない筈です。そして、それはブルー3の人達やビッグ・キャノンの関わっている人達も同じかもしれません。それが正義や平和の為だと思って、苦しみながらも関わっている人達がいるかもしれません。救える命は一人でも多く……そうでしょ? 艦長!」
クレナの言葉に、スフィアの心は揺れ動く。
ブルー3を残したまま、自分達が地球に戻れる可能性はあるのか?
地球降下作戦の部隊を少しでも叩かなければ、地球のリガ・ミリティアが危険に晒される。
V計画の工場が全て破壊されれば、リガ・ミリティアの勝利は無くなるだろう。
躊躇いなくブルー3を破壊し、地球降下作戦前に地球に戻り降下部隊を減らす……それがリガ・ミリティアにとっては理想の展開だ。
「だが……私達は人間だ。心を持った人間だ。そうだったわね、クレナ」
スフィアの言葉に、クレナは力強く頷く。
「ニーナ、作戦変更だ! 捕獲しているラングをクレナ用に変更、システムとデータを偽造する。関節部に小型爆弾を取り付けて、我々に追われて被弾しているように見せかける事は出来るか? 変更にかかる時間は?」
「60分でやります! 小型爆弾の設置は問題ありません。ニコルとクレナの腕なら、敵さんを騙す事は簡単ですよ!」
格納庫の返答を聞いたスフィアは、そのままモニターに映るクレナを見る。
「了解……艦長、ありがとうございます。私がブルー3に取り付いたら、直ぐに離脱して下さい。先程も言った通り、時間になっても私が戻れなかったら……その時は、艦長の判断に任せます」
「分かった。時間になったら、ミリティアン・ヴァヴを通信可能な位置に戻す。それで応答が無ければ……」
「はい。了解です、艦長。今、ミリティアン・ヴァヴとダブルバードを失う訳にはいきません。その時は……」
クレナの言葉に頷いたスフィアは、立ち上がった。
「ニコルには、私から説明する。クレナ……申し訳ないが、無理をしてくれ。そして、必ず生きて戻ってくれ。これ以上戦力を失うと、地球降下部隊を減らせなくなる……バスターを操縦出来るのは、クレナ……貴女しかいないのだから」
クレナは静かに微笑むと、モニターから消える。
この時、ズガン艦隊がブルー3に近付いている事に気付いている者はいなかった……