機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

219 / 240
ラゲーン侵攻20

「なんだ? あのバカでかいモビルスーツは? ガンイージの倍はあるぞ? 以前、ヘレンが艦を守る為に持ち出したグスタフ・カールより大きい……」

 

 ミリティアン・ヴァヴに群がるモビルスーツを退けてくれたモビルスーツは、あまりに大きかった。

 

 艦長のスフィアは、感謝と絶望を同時に感じてしまう。

 

 たったの2機で、全方位からミリティアン・ヴァヴを墜とそうとするモビルスーツ部隊に対処する事は不可能である。

 

 密かに期待していた援軍は、旧時代の遺産であった。

 

 マデアと戦っていたリファリアは、リガ・ミリティアに協力していくれている。

 

 ならば、共に戦っているマデアが駆け付けてくれるだろうと勝手に思い込んでいた。

 

 マデアとザンスバインが来てくれれば、戦局は変えられる……変えられなくとも、逃げる事は出来るだろうと思っていたのに……

 

 しかし現れたのは、超巨大モビルスーツ……360度包囲されている中で、盾にすらならないだろう機体だ。

 

「大型モビルスーツのパイロットさん! その機体で戦場に出て来るのは危険です! 援護は出来ませんが、全力で戦線を離脱して下さい!」

 

「女性が管制官をやっているのか……まだまだ、私にもツキはありそうだ。キミ、私のモビルスーツに守られている宇宙艇を回収してくれ! キミ達の仲間の座標を知っている! そして、この通信をダブルバードのパイロットに繋いでくれ! 渡したい物がある。リファリアにケネスの名で確認してもらえれば、私の素性も分かる筈だ。急いでくれ!」

 

 電子ジャマーにより宇宙海賊の操るモビルスーツのOSを狂わせ、更にビーム・バリアーにより機体の生存率を高めている。

 

 それでも……モビルスーツ本体は47年も前の物を使っている為、各部が悲鳴を上げるのに、そう時間はかからなかった。

 

「艦長、どうします? ニコルと繋げてしまって良いのでしょうか?」

 

「命懸けで我々を守ろうとしてくれている姿もそうだが、ニコルに渡したいと言う物が切り札にならなければ、どのみち我々に明日は無い! 通信を繋げてやれ!」

 

 ニーナの問いに間髪を入れずに答えたスフィアは、視線をモニターに戻して操舵手マッシュに宇宙艇を回収するように指示を出す。

 

 確かに、このまま何も起きなければミリティアン・ヴァヴは墜とされてしまうかもしれない……そう思わせる程、宇宙海賊の攻撃は激しかった。

 

 宇宙艇に乗っている人物の知っている座標にクレナがいれば、信じても良いのだけど……

 

 一瞬そう思ったニーナは、首を横に振った。

 

 危険な賭けに間違いはない……何故かダブルバードの名前を知っていた人物を信用し、その人が守っていた宇宙艇を招き入れる。

 

 普通では考えられない……敵のスパイで、宇宙細菌が奪われたら……そう思うとゾッと背中に冷たいモノが走った。

 

 でも……艦長が一瞬で判断したという事は、時間をかけて考えている余裕が無いという事……

 

 宇宙細菌より、自分達の指命を優先したという事……

 

「ニコル、聞こえる? ミリティアン・ヴァヴを守りに来てくれた友軍のパイロットが、あなたに話があるみたいなの! 戦闘中に悪いんだけど、聞いてあげて!」

 

「なんだって? そんな余裕は……無いってのに!」

 

 ミリティアン・ヴァヴに近付くクァバーゼの両手を一瞬で破壊したニコルのコクピットに、ケネスの声が届く。

 

「こちら、クスィー・ガンダムのパイロット……ケネス・スレッグだ! ダブルバードのパイロット、今から送る座標にコイツを撃ってくれ! サイコミュ入りの特注ミサイルだ! 2発しかないが、それでやってもらうしかない」

 

「何だって? 悪いが、意味の分からない作戦に付き合っている余裕は無いんだ! って……まさか、クレナさんとマデアさんが、そこにいるのか?」

 

 送られて来た座標の方向に意識を向けた瞬間、ニコルの脳裏に感じるモノがあった。

 

「ニコルくん、やってくれるな? ザンスバインにクレナくんも乗っているから、マデア少佐は動けないんだ。だがバスターを届ける事さえ出来れば、一気に戦力が増える。クスィーの放つ弾幕にバスターを隠して射出してもらうから、無防備なバスターに直撃される前に、ミサイルで守るんだ!」

 

「たった2発で、何から守れって言うんだよ! くそっ、文句言ってる余裕は無いか!」

 

 飛んで来たコンテナを受け取ったダブルバードは、座標に向かって照準を合わせる。

 

 トライバード・バスターがミリティアン・ヴァヴから射出された瞬間、クスィー・ガンダムのシールドから、腕から、脚から……いたる場所からミサイルが放たれた。

 

「これに合わせろって事? 難しいけど、やるしかない! 敵に当てるんじゃない……バスターを守るんだ! 行け、ファンネル・ミサイル!」

 

 コンテナから、クスィー・ガンダムの放ったミサイルとほぼ同じ大きさのミサイルが、ニコルの意思を汲み取り放たれる。

 

 当然、宇宙海賊達はミサイルの群れに敏感に反応した。

 

「戦場で他に気を取られるとは……素人だな。指示・命令系統が乱れているから、そうなる」

 

 動きが止まった宇宙海賊のモビルスーツに、マグナ・マーレイ・ツヴァイのビームが的確に貫いていく。

 

「バスターもザンスバインも、これからの戦いに必要なんだ。海賊如きにくれてやる訳にはいかんな!」

 

 ミサイルを追い、クスィー・ガンダムは光となった……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。