宇宙世紀0152年10月……
ザンスカール帝国は、地球の東ヨーロッパ地区に向けて大規模な降下作戦……地球侵攻作戦を開始した。
ベスパのイエロージャケットが中心となった今作戦は、地球上空にピピニーデン隊が展開し、ワタリー・ギラの部隊が地球に降下する事になっている。
この作戦を、地球連邦軍も指を咥えて見ていただけではない。
サイド2に駐屯する反ザンスカールの地球連邦軍の艦隊が、作戦阻止に動いたのである。
結果は、ピピニーデンの部隊が展開する地球直上の宇宙まで届かなかった。
サイド2を出た地球連邦軍の艦隊は、ズガン艦隊の返り討ちにあったのである。
アルテミス・シロッコの駆るタイタニア・リッテンフリッカとサイキッカーの乗るハイアームド・レシェフは、いとも容易く地球連邦軍の艦隊を喰らっていく。
その戦闘で、ズガン艦隊は1隻の戦艦も失わず、1機のモビルスーツも撃墜されなかった。
無敵のズガン艦隊……そう呼ばれるに相応しい戦いで、地球連邦軍に恐怖を植え付ける。
そして悠々と、ザンスカールの……ベスパの地球侵攻を許す事になった。
先行して地球に潜り込んでいたベスパの部隊と合流したワタリー・ギラの部隊は、ラゲーンにある飛行場を制圧すると、ヨーロッパ地区の制空権を奪っていく。
地球連邦軍による僅かな抵抗は、ベスパにとっては軍事演習程度の感覚だったのだろう。
まるで遊ぶかの様にジェムズガンを墜とし、何事も無かった様に軍事物資をラゲーン基地に運び入れた。
その時リガ・ミリティアは……シュラク隊は、大規模工場からヴィクトリーのパーツを分散して別々の基地へと運んでいた。
コア・ブロック・システムを採用されているヴィクトリー・ガンダムは、コアファイターにトップリム、ボトムリムと言う2つのパーツとドッキングしてモビルスーツ形態となる。
このドッキング・システムの構築を行う為に、1つの工場で調整する必要があった。
ザンスカールが地球に降りて来るまでの間に調整を済ませ、工場を移しても各パーツを作れる環境を整備する。
そのミッションは、ギリギリで完了した。
後は大規模工場を破棄して、必要なパーツや図面を各エリアの秘密の工場に移すのみ……
「地球連邦のクソったれ共め! もう少し抵抗らしい抵抗は出来ないのかい! ザンスカールの連中に、簡単に制空権を奪われやがって!」
「姉さん、そんな事を言っていても仕方ないよ。そんな事より、ゾロの部隊が来る。カミオンから離れて牽制攻撃を!」
上空から僅かに聞こえて来るヘリコプターの音に、ジュンコとペギーが反応する。
重力下での運用を目的としたザンスカール帝国のモビルスーツ、ゾロ……
トップ・ターミナルとボトム・ターミナルと呼ばれる2つのパーツで構成されるゾロは、ヘリコプターの様な姿のトップ・ターミナルからのミノフスキー・コントロールにてボトム・ターミナルを無線誘導している。
トップ・ターミナルにはヘリコプターのプレードの様なモノがビーム・ローターにて模倣されており、その為にブレード・スラップ音が発生してしまう。
「嫌な音だが……そのおかげで、敵の位置をある程度把握できる。ペギー、敵さんの背後を取るよ!」
「了解!」
ガンイージ2機がヴィクトリー・ガンダムのパーツを運ぶカミオンから飛び、森の中でホバリングをしてから静かに着地した。
「レジアがいなくなって、連邦軍は露骨に無関心を決め込んでいる。私達がやられたら、次は自分達がザンスカールにやられるってのにね!」
「いざとなったら、いつでも帝国を叩けると思っているんでしょ? ま……レジアがいなくても連邦のケツくらい私達が拭いてやれるってトコ、見せてやりましょ!」
ペギーの言葉にジュンコは一瞬だけ口元を緩めるが、直ぐに真剣な眼差しに戻る。
「軽口はここまでだ! ゾロの部隊をカミオン隊から引き離す!」
カミオン隊が離れて行った事を確認すると、ジュンコとペギーはガンイージのバーニアに火を入れた。