「くそっ!!なんで親父は死ななきゃいけなかったんだ!!」
何が描かれているのか…………見ても分からないモビルスーツの設計図面を見ながら、レジアは後悔の言葉を吐き出す。
ただ【Double Bird】【Evolution Funnel】【Minovsky Drive】という単語だけは読み取れた。
このデジタルの時代に紙の…………しかも、コピーもしていない図面が存在するのか…………それだけの機密で、それが大切な物だという事は理解出来る。
それでも命を懸ける必要がある代物だと、レジアはどうしても思えなかった。
「そのモビルスーツは、レジスタンスの……………世界の希望になる機体なの。その設計図面は、命に代えても守らなきゃいけない物なの」
走りながらも荒くなる息をなんとか整えながら、レジアの考えを見透かしたように、母レイナは諭すように言う。
「命より大事な物があるかよ!!親父も母さんもおかしいよ!!だいたい、自分達で作れた物なら、また作り直せばいいだけだろ!!なんで……………」
レジアには自分の両親が何故、必死に…………命を懸けてまで、モビルスーツの設計図面を守らなければいけないのか分からなかった。
「さっきも言ったけど、私達は無理矢理モビルスーツを作らされた。ガチ党が政権与党になれば、サナリィは完全にガチ党に制圧されて、自由にモビルスーツ開発なんて出来なくなるわ……………」
「確かに、サナリィはガチ党に牛耳られるかもしれない。でも、経済格差とかで自治権を求めるコロニーの混乱で何も出来ない連邦政府より、マリア主義を推奨してるガチ党に統治してもらった方がアメリアの為だ!!父さんを殺したのも、連邦のジェムズガンだよ!!」
そう言いうと、レジアはジェムズガンの足で家が潰れていく瞬間と、その中で父が炎に包まれていく映像を思いだし、気分が悪くなった。
「ここまで来れば、少し落ち着けそうね…………少し休みましょうか…………」
レイナはそう言うと、胸を押さえながら深呼吸をする。
気分が悪くなっていたレジアだったが、母はもっと辛いはず…………そう思い、自分を奮い立たせた。
レジアも母を真似して深呼吸すると少し気分が落ち着き、周りを見る余裕が出来始めた。
アメリア市街地から少し郊外まで来たこの場所は、モビルスーツの姿は少なくなっている。
しかし戦争の音は近くで生々しくレイナの耳に飛び込み続け、その度に夫を失った悲しい記憶が蘇ってしまい、レイナの瞳には涙が溜まっていく。
それでも、息子の前で…………まだ使命の途中で泣く訳にはいかない…………そんな気丈な態度をとる母の姿に、レジアはやりきれない思いだった。
「くそっ!!今まで平和に暮らしてたのに、なんで戦争を持ち込みやがったんだ」
レイナは悲痛な叫び声を上げるレジアを悲しそうな瞳で見つめながら、しかし意を決して再び歩き始めた。
シェルターの方角ではない方向に歩き出す母に、レジアは慌てる。
「母さん、シェルターにも避難しないでどこに向かってんだよ!!早くしないと、この辺りもすぐ戦場になる!!」
「宇宙港に行くわ。私はサナリィに行って、皆を助けないと………………」
どんどん先に歩いていく母の姿をレジアは追いかけながら、両親が命懸けでガチ党に逆らっている理由を考える。
(無理矢理モビルスーツを作らされたからって、そこまで逆らう必要あんのか………………分からねぇよ……………親父)
そんな事を考えながら歩いていると、背後から戦闘の音が近付いている事に気付いた。
その方向に視線を向けると、ラングとジェムズガンが低空で争いながら、確実にレジアの方に近付いてくる。
少し宙に浮いて移動するラングに対して、バーニアで浮いては落ちを繰り返しながら戦うジェムズガンは明らかに押されていた。
「ミノフスキー・フライトを持つラングに、ジェムズガンで空中戦なんかやっては………………簡単に落とされる!!」
レイナの予想は、あまりにアッサリと的中する。
ガンッッ!!
跳んだ後の落ち際を狙われてコクピットを蹴られたジェムズガンは、周囲の建物を薙ぎ倒しながら、無防備なレジア達の目の前まで迫り止まった。
「母さん!!大丈夫か??」
ジェムズガンが迫ってきた風圧で少し飛ばされたレジアは、しかし直ぐに立ち上がり、薄黒い土埃で視界が悪くなる中を手で必死に掻き分けながら、母のいたであろう位置まで必死に走る!!
「母さん!!無事なら返事してくれ!!」
しかし母からの返事は無く、機械が軋むような異音がジェムズガンから響いてくるのみである。
土埃が地に落ち、ようやく視界が確保されると、レジアから少し離れた場所にレイナが頭から血を流し倒れていた…………