機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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ウォーバードを包む翼

「レグナイト少佐、1機コチラに向かって来るモビルスーツがある…………とんでもないスピードだ。自分が相手をするので、少佐は戦艦を頼みます!!」

 

 黒いモビルスーツ…………漆黒のマグナ・マーレイのコクピットの中で、マデアはリガ・ミリティア所属と思われるモビルスーツの機影をキャッチしていた。

 

 F90…………ライブラリには旧式のモビルスーツの名が表示されるが…………戦場である筈の宙域を考えられないスピードで移動するモビルスーツの反応に、マデアは集中力を高める。

 

「マデア、相手はリガ・ミリティアの新型の可能性がある。F90に、この機動性はありえない!!」

 

 マデアは頷くと、迫って来るモビルスーツを迎え撃つ為にマグナ・マーレイのバーニアを止めた。

 

「敵機は、何故か一直線に向かって来る………少佐の部隊は、F90を迂回しながら戦闘宙域に!!この機体の側にいたら、ビットの巻き添えを食いますよ」

 

「相変わらずだな…………自信過剰なんだか、オレを馬鹿にしてるのか…………まぁお前の腕なら、新型だろうがガンダムだろうが相手にならんだろうが……………少しは気をつけろよ!!」

 

 レグナイトの部隊は、全機新型のゾロアットで編成されており、先頭にいる隊長機………レグナイト機のみ両肩にバインダーを装備しており、それ以外はスパイクシールドを装備する、後に前期型と言われるようになる機体である。

 

 そのゾロアット部隊の横を気絶したマイの乗る脱出艇が通り抜けたが、それを気に止める者はいない。

 

 レグナイトの部隊は、リガ・ミリティアの新造戦艦を叩く任務が与えられていたからだ。

 

 脱出艇に、時間を割いている余裕は無い。

 

 その脱出艇が黒いマグナ・マーレイの横を通り抜けた頃、レグナイト隊の横を閃光が走る。

 

「実際に見ると、信じられないスピードだな…………しかし、敵である我々を無視か…………あのモビルスーツは、何がしたいんだ??」

 

 レグナイトは首を捻りながら…………閃光と化したモビルスーツを目で追いながらも、戦闘宙域へと急いだ。

 

 

「脱出艇……………捉えた!!マイ、もう少しだ!!必ず助ける!!」

 

 ウォーバードのモニターは、脱出艇の小さなバーニアの光を表示する。

 

 それと同時に…………敵のモビルスーツを発見した時のアラームが、ウォーバードのコクピットに鳴り響く。

 

「ザンスカールの新型…………だが、今は構ってやる暇は無い!!相手をするのは、マイを連れ帰った後だ!!」

 

 ウォーバードの機動力なら、マイを助けて戻っても、敵を背後から叩ける………ニコルは、ウォーバードのスピードを信じていた。

 

 ウォーバードの…………ミノフスキー・ドライブのスピードに対応出来るモビルスーツなど無いのではないか…………

 

 そう思える程に、ミノフスキー・ドライブの力は絶対的だった………

 

 しかし、そんなウォーバードにビームが迫る!!

 

「うわぁ!!まぢかよ!!」

 

 ウォーバードのスピードを過信していたニコルは、突然の攻撃を咄嗟にビームシールドで防いだ。  

 

 その為、ウォーバードのスピードは一瞬で殺される。

 

「やはりF90…………しかし、見慣れないミッションパックを装備している…………あれが、超加速の正体か」

 

「って、バタフライ野郎がコッチにも…………ニュータイプ専用機って、量産出来んのか??」

 

 黒いマグナ・マーレイとF90W・ウォーバードが、互いにプレッシャーを与えながら向き合う。

 

「コイツ…………かなり強そうだけど、コッチは急ぎの用事があるんだ。通してもらうぜ!!」

 

 マグナ・マーレイとは、何度か戦っている。

 

 拡散ビームとリフレクター・ビットに注意しながら攻撃を避けて、脱出艇を追いかければ…………

 

 マグナ・マーレイのスピードでは、ウォーバードに付いて来れない筈だ。

 

 今は別に、倒す必要は無い。

 

 そう割り切ると、ニコルはF90ウォーバードのミノフスキー・ドライブに熱を入れる。

 

 が…………加速しようとするウォーバードの目の前に、ビームが飛んで来た。

 

「うわあぁぁぁ!!絶妙なタイミングでビームが………こりゃあ、簡単に突破出来ないか??」

 

 加速する前に動きを止められたウォーバードに、マグナ・マーレイが迫る。

 

 リフレクター・ビットでバリアのように機体を覆いながら、ビームサーベルを持ってウォーバードの懐に飛び込んで来た。

 

 リフレクター・ビットは、それぞれが意思を持っているのかの様に動き、その球体が直接ウォーバードに攻撃を仕掛けて来る。

 

 リフレクター・ビットに囲まれたウォーバードは、ビットの攻撃を避けながらマグナ・マーレイからの直接攻撃にも対処しなければならない。

 

 ニコルはビットに囲まれないように後方に下がってしまい、脱出艇との距離が開いて行く。

 

「このままじゃ…………なんとか前に出ないと!!」

 

 ニコルの焦りを感じているのか…………黒いマグナ・マーレイ…………マデアは、ゆっくりと攻撃を仕掛ける。

 

「F90のパイロット…………腕はいいが、何か焦っているようだな。マグナ・マーレイの後ろに出たそうだが………ならば、その状況を利用させてもらおう!!」

 

 リフレクター・ビットが、壁のようにF90ウォーバードの前に立ちはだかった。

 

「なろっ!!オレに恨みでもあんのか??コッチは幼なじみを助けたいだけなんだ!!邪魔すんな!!」

 

 ニコルはウォーバードをリフレクター・ビットの中に飛び込ませる。

 

 最早、それしか方法は無い。

 

 脱出艇を見失う訳には、いかなかった。

 

「やはり…………このパイロット、焦っているな。ならば!!」

 

 リフレクター・ビットの中で、F90ウォーバードとマグナ・マーレイのビームサーベルが交錯する。

 

 鍔迫り合いの中、上と下からリフレクター・ビットがウォーバードを挟むように飛び込んで来た。

 

「うわぁぉ!!」

 

 変な声を出しながら後方に下がったウォーバードを見て、マデアは間髪を入れず攻撃に移る。

 

「自慢のスピードが殺された状態で、避けれるか??墜ちろ、ガンダム!!」

 

 展開されていたリフレクター・ビットが、いつの間にかウォーバードの周囲に凝縮されていた。

 

 そこに、拡散ビームが放たれる。

 

 密度の高いビットの森…………そこにリフレクター・ビットによる物理攻撃と反射されるビームのオールレンジ攻撃…………

 

「コイツ…………強い…………ゴメンな………マイ。オレはココで終わりだ………」

 

 回避する事など不可能…………ビットを押し退ける事も不可能…………

 

 絶望的な状況の中、ニコルは操縦桿を無意識に引いていた。

 

 その瞬間、ミノフスキー・ドライブが反応する。

 

「わぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 

 光に守られたウォーバードが、とんでもないスピードで後方に飛ばされた。

 

 リフレクター・ビットも反射されたビームをも無効化した光が、ウォーバードを守っている。

 

「何が起きた??確実に仕留めていたタイミングだった筈だ………」

 

 後に【光の翼】と呼ばれるミノフスキー・ドライブから発生する過剰粒子が、ウォーバードを守ったのだ。

 

 しかし、それを想定していないウォーバードも被害は甚大である。

 

 関節が悲鳴を上げ始め、ミッションパックからも異変を告げるアラームが鳴り響く。  

 

「なんとか助かった…………のか??でもマイが…………離れて行っちまう…………」

 

 改めて対峙する黒いマグナ・マーレイ相手に、ニコルは勝てる気がせず、そのプレッシャーの中で身体が震えていた。

 

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