機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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タシロの思惑

「アーシィ大尉、相変わらず戦果が上がらんな。ニュータイプ専用機を使っても、結局リガ・ミリティアの新造戦艦を取り逃がす始末…………大尉の今の地位を守るのに、私も結構苦労するんだよ。まぁ………なんとかしてやれなくは無いがな…………」

 

 相変わらずタシロの視線は、アーシィの身体を舐め回している。

 

 マデア少佐とアーシィ大尉は、今回の作戦の総指揮官であるタシロ・ヴァゴ中佐に報告に来ていた。

 

 当然、タシロからは労いの言葉は無く、開口一番アーシィの批判を始める。

 

 しかし…………アーシィを自分の思い通り動かしたいという、男の願望がハッキリと見てとれた。

 

「なるほど…………オレも、新造戦艦を取り逃した戦いに参加していた。って事は、オレも降格かな??」

 

 少し目にかかる前髪の奥から、鋭い眼光でマデアがタシロを睨む。

 

「ふん…………当然だな。女王マリアから信頼を得ているとはいえ、作戦行動中は軍の規約に従ってもらう。貴様もニュータイプなら、戦艦1つ墜とすなど簡単だったろうに…………マリアも落胆しているだろうなぁ」

 

 その眼光に物怖じせず、タシロは嫌らしい笑みを浮かべる。

 

「少佐…………作戦を完遂出来なかった原因は、最後に損傷した私にあります!!だから、あまりお立場を悪くするような言葉は…………」

 

 マデアを信頼し、本当に心配しているアーシィの言葉と表情は、タシロの感情を逆撫でした。

 

「ちっ………こんな男の何がいいんだかな。女王もお前も、男を見る目が無さすぎる…………」

 

 小声で呟いたタシロは、踏ん反り返って座っていた椅子から、徐に立ち上がる。

 

「マデア少佐が、今回の作戦指揮をとっていたな。とりあえず、その責任はとって頂こうか」

 

「そんな…………少佐はガンダム・タイプの撃墜に1度は成功しています!!それに、レジア・アグナールの乗る新型のガンダム相手では、少佐が戦ってくれなければ全滅していた可能性もあります!!その辺の考慮も…………」

 

 タシロの言葉に、マデアより先にアーシィが反応した。

 

 アーシィがマデアを庇うその姿に、再びタシロの顔が曇る。

 

「なるほどね…………現場で指揮していたオレは、当然責任をとるべきだろう。で、今回の作戦の総指揮官であるタシロ中佐殿は、どのような責任をとって頂けるのかな??」

 

 タシロの言葉に呆れたマデアの視線は、先程の鋭さから普通に戻っていた。

 

 表情には、タシロを少し馬鹿にしたような笑いも入っている。

 

「貴様…………上官である私に、何と言う言葉を!!」

 

「いや、指揮官ってのは責任が伴うモノだろ??それとも軍ってのは、作戦の指揮をしていても現場に出てなきゃ責任とらなくていいのか??随分と楽な仕事だな。羨ましいよ」

 

 今度はタシロからの強烈な睨みを、ふざけた口調でマデアが返す。

 

「き…………貴様達2人とも、2階級以上落ちるのは覚悟しておけよ!!それが嫌なら、今すぐ謝れ!!」

 

 顔の血管が浮き出る程の怒りを見せながら、タシロは吠えた。

 

 マデアという男は、入隊当初から気に入らない。

 

 女王マリアの推薦でベスパに入隊してきたニュータイプ…………その圧倒的な力で、一瞬で少佐の地位を手に入れた。

 

 まるで大人の社会の構図を知らない若者のくせに…………である。

 

 そして、何故か女王マリアの信頼を得ている事も気に入らない。

 

 やはりというか…………タシロは怒りの全てをぶつけた筈が、涼しい顔をして頭を掻くマデアの姿があった。

 

「まぁ…………オレは階級とか、どうでもいいんだが…………それよりも中佐殿は、簡単にリガ・ミリティアの戦艦を墜とせるんだな。凄く自信がおありのようだ。是非、その戦いを拝見したい。オレ達の処分は、その後でいいだろ??まさかとは思うが、中佐殿も戦艦を墜とせなければ、オレ達の力不足では無かったという事になるだろ??」

 

「ぬぐっ!!」

 

 その瞬間、タシロは何も言えなくなる。

 

 このマデアという男…………女王マリアの信頼を得ているだけでも厄介だが、軍の中でも信頼されており、その発言力は絶大だ。

 

「ふん…………まぁいい、分かった。次は私が仕掛けよう。貴様達の処分は預けといてやる!!」

 

 そう言うと、タシロはマデアとアーシィに退室を命じる。

 

 2人が出て行った事を確認すると、タシロは信頼している副官を呼んだ。

 

「アーシィのデータは、揃ったな??ベースの脳へのデータ移行を急がせろ。次の作戦で使う。そのデータが揃えば、次は完全体のクローンの作成だ…………楽しみにしていろよ…………」

 

 タシロの瞳は、怪しく輝いていた…………

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