俺が大洗以外の学校に行くのはまちがっている?   作:@ぽちタマ@

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当然といえば当然のこと、比企谷 八幡は受け入れられない

 今日の授業も全て終わり、残すは最後のホームルームだけとなった。

 

 ここ最近の日課である、戦車道の練習風景を観察しにいくことだけしか考えてなかったのがいけなかったのか、なにやら教室が騒がしくなっている。

 

 ふと気づけば、なにやら上級生らしき人が我がクラスに来ていた。控えめに言っても美人なそのひとに男子はざわつき、女子はそんな男子を冷ややかな目で見ている。

 

 あれだからな?女子も男子も結局変わらない。もし、来ていたのがイケメンな先輩なら反応が逆になる。つまりはお前らは同類だ。同族嫌悪している暇があったら自分でも磨いてろよと言いたいね。

 

 しかし、なにやら話が難航している。遠目から話を聞く限り、どうやら件の美人の上級生は人を探しに来ているらしいのだが、担任は名前を聞かされてもピンとこず、今、必死に座席名簿とにらめっこしている。

 

 おいおい、もう一週間経つんだぞ?いい加減にクラスの生徒の名前ぐらい覚えてやれよ。そいつが可哀想である。

 

 そして、ようやくお目当ての人物が見つかったのか、担任はメガネをクイっと中指で押しながら言う。

 

「え、えーと。比企谷(ひきたに) 八幡、いたら返事をしなさい」

 

 おい、ひきたにくん、呼ばれてるぞ返事しろよ。

 

 しかし、呼ばれても、ひきたにくんは返事をしない。

 

 ひきたに?ん?……あれ?もしかしてこれって、俺なのかしら?いやいや、まさかまさか、担任が一週間経って顔すら覚えておらず尚且つ名前を間違えるとかありえないだろ。はっはっはっ、そんな、ねぇ?

 

「……もしかして比企谷(ひきがや)ですか?」

 

 恐る恐る聞いてしまった。

 

「ん?お、そうだな」

 

「……それ、俺です」

 

 ……あれ?おかしいな。目から汗が流れてきやがる。

 

 一週間も経って、名前も顔も覚えられていない可哀想な人物は俺だった。

 

 とりあえずあれだ。この担任は絶対にゆるさないノートに記入確定である。

 

「君が、比企谷 八幡か」

 

「え、えぇ。そうでしゅけど……」

 

 噛んでしまった……。おい、そこ!笑うんじゃねぇ!くそっ!今日は厄日だ!

 

「お、俺になにか用ですか?」

 

 落ち着け。こういう時こそCOOLになるんだ!あれ?KOOLだっけ?

 

「私の家に来てもらう」

 

 一瞬、時が止まったような気がする。教室が静まり返る。俺が噛んでしまった故に笑っていたクラスメイトも担任も全員。もちろん、俺も例外ではない。

 

「あの?西住さん?それはどういう……?」

 

「お母様からの直々の要望です」

 

 西住さんなる人がそう言うと、担任はそれで押し黙ってしまう。

 

 え?なに?西住さんの母ちゃんはモンペかなにかなの?なんで担任は、これ以上は私の手に余りますね、みたいな悟った顔してんの? おい諦めんなよ!俺がどうかなるだろ!……いや、どうなるかは知らんが。

 

「あの……えっと……?どういう?」

 

「話があるそうだ」

 

 え?終わり?もっとこうなんかないの?昨今、簡略化がいろいろと進んでいるからといって、これはちょっと簡略化しすぎじゃない?

 

 というか、もっと説明すべきことがあるでしょ!

 

「では、行こうか」

 

「あ、あの、ホームルームがあるんですけど」

 

「先生」

 

「え?あぁ、行っていいぞ、比企谷(ひきたに)

 

 おいおい、嘘だろ。この際、俺の名前をまだ間違えてるのは百歩譲ってやるとして、そこは教師として止める所じゃないんですかねぇ……。というか止めろ。

 

 俺に拒否権?そんなものがあったら、俺はこんなところには来ていないだろう。

 

 ―――西住流の総本山とも言えるこの場所に。

 

 あぁ、なんでこんなことに……。

 

 俺は一体どこでなにを間違えたのだろうか?熊繋がりで適当にここを選んだのが間違いだったのか?いや、ボコは悪くない。

 

「この先にお母様が待っている」

 

「えっと……、西住さんは行かないんですか?」

 

「私は呼ばれてない」

 

 つまり、この先一人で行けと。まじで?

 

 もうここまで来てしまったが故に退くに退けない。できれば退きたかった。退きたにくんになりたかった……。

 

「し、失礼します」

 

 そこには、西住さんをいろんな意味でグレードアップさせた人物がいた。

 

「座りなさい」

 

 俺は言われるがまま腰かける。もちろん正座である。ほら、あれだよ?畳だからね。別に相手の威圧感にびびったとかそういうんじゃないんだよ?

 

「あの……、それで?俺に話というのは?」

 

「あなたには、我が黒森峰の戦車道に入ってもらいます」

 

 もらいますって、もう決定事項かなんかなの?いやそれより戦車道って……。

 

「俺、男ですよ?」

 

「それが?」

 

 うわーお。あって間もないのに、この人と西住さんが親子なんだと痛感させられた。

 

 なんていうかあれなんだよな。我が道を突き進むというかなんというか。突き進み過ぎてまわりがついてくのが難しいレベル。

 

 別にそれが悪いとは言わないが。

 

「……じゃあ、なんで俺なんですか?」

 

「彼女の言葉の真偽を確かめる為」

 

 彼女?一体誰のことを言ってるんだ?俺の知り合いのなかで西住流の知り合いなんて……。あっ。

 

「もしかして、千代さんからなんか聞いたんですか?」

 

「………」

 

 名前がわからないから、母住さんと仮称するが、母住さんは俺の質問に沈黙で答える。否定をしないということはそういうことなのだろうたぶん。

 

 千代さん……、一体なにをこの人に話したか知りませんけど、そのせいで俺の高校生活から安穏が絶賛夜逃げ中ですよ……。

 

「もしも、俺が戦車道に入らないと言ったらどうするんですか?」

 

「あなたの妹に頼まれたの」

 

 唐突になんだ?妹?小町のことか?

 

「兄を戦車道にいれてもらえませんか?と」

 

 ちょ、小町ちゃん?なにやってるの?あなたは俺に地獄に突き進めとでも?

 

「だから頑張りなさい。いつか共に戦車に乗るために」

 

「………」

 

 あぁ、まじかよ。あいつがどこまで話しているかは知らんが、やるしかないってことか。

 

 つまりこれは、小町がくれたチャンスなんだろうな。

 

「……わかりました」

 

 それで話は終わり、俺は部屋を退出した。

 

 

 ーーー

 

 ーー

 

 ー

 

 回想終わり。ということで、俺は黒森峰の戦車道に入ることになった。

 

「私は納得いきません!」

 

 一人の女子が、西住さんに食って掛かる。たぶん、他の女子生徒も同じことを思っているだろう。

 

「よりにもよってなんで男なんかをいれるんですか!」

 

 まあ、そうですよねー。不満がありますよねー。たぶん、俺が逆の立場だったら同じことを言っている。

 

「お母様からの指示だ」

 

「い、家元の……。い、いえ、それでも納得がいきません!」

 

 元気いいなあいつ。なに?なんかいいことでもあった?

 

「あれが西住流の、黒森峰の戦車道に必要とはどうしても思えません!」

 

 あれって……。気持ちはわからんくもないが。なぁ、もうちょっと言いかたがあるだろうよ……。

 

「ふむ。なら、必要だとわかれば納得するのか?」

 

「え?あ、はい」

 

「なら、今から練習試合をしよう」

 

 西住さんは唐突にそんなことを言い出す。

 

「模擬戦をやってもらう。それで彼の実力を確かめろ。彼はあの、比企谷 小町より強いとのことだ」

 

 その一言で全体がざわつき始める。え?なに?なんでみんな小町で反応してるの?あいつは確か中等部だよな?なんか関係あるの?

 

 というか、それはどこがソースなんですか?西住さん。

 

「それは誰が言ったんですか?まさか……」

 

 そういって、先程の元気のいい女子が俺を睨んでくるんだが、それは違うな。だって俺には話す相手がいないからな。必然的にありえない。

 

「小町本人が言っていた」

 

「た、ただのでまかせでしょ……」

 

「それを確かめる意味での模擬戦だ。チームは私が振り分ける」

 

 そんなこんなで俺は模擬戦をやることになったんだが、どうなるんだ?

 

 でも、ちょうどいいのかもしれないな。戦車に乗るために今まで頑張ってきた成果がわかるのかもしれない。

 

 別に俺は勝つ必要はない。ようは俺が戦車道をやるに十分な実力を持ってればいいってことだからな。なにも気負わなくていいはずだ。

 

 あれ?ちょっと待て。これって女子と一緒に戦車に乗るの?

 

 …………前言撤回。もう既に帰りたくなったきた……。

 

「チームを発表する―――」

 

 一人乗りの戦車とか置いてないかなぁ。いや、置いていても戦車動かしたことないから無理か。




次でいったん、黒森峰編は終わります。

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