TASこうぐらし!(二周目)   作:鬱とはぶち破るもの

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武器のチュートリアル~初日終了までです。


TASこうぐらし! part3

「安らかに…」

 

 引き金を慈の指が引く、硬貨を拾い上げるようなほんの僅かな力であるが動作になんの問題もなく銃弾は発射され、狙いをつけた額へ寸分違わず命中そこに詰まっていた物がへしゃげた銃弾と共に反対側へ吹き飛ぶ。

 慈は静かにコントロールを失いドチャっと地面に倒れ今度こそ永遠の眠りにつく“それ”への哀悼を呟く。

 薄く白煙を銃口から吐き出す銃のループレバーを操作し空になった薬莢を排莢、次の銃弾を装填しすぐに撃てる状態に。

 金色の空薬莢が金属音をたてるのを背景に慈は軽く息を吐く。

 警戒しつつ、後ろへ振り返り危険なところだった由紀(居ない)を気遣う表情を浮かべる。

 そんな彼女へ対し困惑と興奮の混じった声がどこからか響く。

 

「めぐねえ…すっごく射撃上手だよっ!」

 

「佐倉先生、でしょ?…こんな事に使っちゃイケナイのだけど…」

「とにかく!早く戻りましょう、二人とも心配してるはずよ」

 

「はぁーい」

 

 繰り返すが、駐車場には慈しか居ない。

ともかく彼女はどこかにいる何者かとの会話を終え、すぐさま再び車へ踵を返し銃を整備する為の道具、予備の銃弾、少々積み込んであった飲料水と食糧を持てるだけ持ち再び車をしっかりと施錠。

 車のキーとジュラルミンケースの鍵をしっかりと首にかけてから再び屋根の上に置いておいた銃をしっかりと構え、先程の何処からか湧き出た背広を着た“かれら”以外何も居ない駐車場とグラウンドを横切り再び校内へ全身の輪郭を微妙にブレさせながら先程の道順の逆を行き、屋上を目指す。

 その過程で動く“かれら”はその姿が射程内に収まった瞬間に脳漿と肉片を正確無比な銃弾に撃ち抜かれ、介錯されていく。

 

 

~~~

 

《はい、ミークンです》

《無事武器を入手したのでさっさと初日を終わらせましょう、本来は初日を終わらせて二日目から本格的に動く筈ですがドア判定と“先輩”を利用すれば校内に入れるバグが見つかったのでこうなりました》

《ちなみに“先輩”は正面玄関にぞんざいに放ってあります、グラウンドに出た時点でもう用済みですし、片手が塞がっては武器のウィンチェスターとその他物資が持てなくなりますので》

《その他物資はめぐねえカーで得られる武器以外の物です、本来はランダムで食料やその他重要な物があったりなかったりするのですが、今回は一番実りがいい物を出しました。物理的に実りが良いです、きっと昼休みにでも買い物に行ったのでしょう。》

《ではそろそろ、初日を終わらせましょう。初日を終えるには正面玄関に放ってある“先輩”の埋葬イベントを行う必要があります。それを発生させさえすれば次元のはざまに押し込んでも何故か戻って来ますので放置で問題ありません》

《このあとは屋上へ戻り、初日を終えるイベントを発生させるために“カサカサ歩き”もとい1F停止走法移動法で移動します》

《これは各キャラクターに設定されている“スタミナ”が関係しており、走ったり近接攻撃するにはスタミナのある程度高い状態を維持しなければならず、スタミナが切れると走れなくなります、回復するには立ち止まるか座るかしないといけないので、囲まれる→スタミナ切れで攻撃出来なくなる→噛まれ感染or餌、というゾンビ映画のよくあるワンシーンになります。かなりの数の彼女ら(胡桃85%美紀6%めぐねえ4%その他5%)の尊い犠牲が有りましたが、この技術の為の事です。割り切りましょう。》

《で。餌になるのを避けるためにはスタミナ管理に気を配らなければなりません。もちろん最大値を上げることも出来ますが運動と食事の両立…してその上で休息をしっかりとする必要(要は拠点の安全確保)があり、特にスタミナ最大値の低く、率先して動く必要のあるめぐねえルートの難易度が高い理由でもあります》

《が、それは通常プレイ時のお話。TASさん(及び一部の変態RTA勢)プレイにおいては誰であってもカサカサ動き回り“かれら”を屠る事に違いはありません》

《一瞬ダッシュし直後に停止、歩行を挟みダッシュし停止。これを1Fで行うとスタミナが減らさずに、かつ移動速度はダッシュとほぼ同じ、そんなカサカサ動く様は正しく漆黒の彗星です。普通にやると余計疲れそうな物ですが、彼女らにはそんな常識は通用しないので大丈夫です。》

《今後も多用しますが一周目と違いどんどん遠足(と言う名の遠征)して物資収集や生存者救助を行うので、その際にはまた別の方法を使用します、がまだ先の話なのでとりあえずは拠点になるこの校舎の掃除を行います》

《まずは屋上へ戻りさっさと初日を終わらせましょう》

《先はまだまだ長いのです》

《おっと、忘れる前に車にあった水を摂取しておきましょう。》

 

~~~

 

「こんなもの、かな?」

 

 慈が処分された“先輩”を抱えて腕一本が漸く差し込めるような隙間、そんな僅かなスペースからするりと校内に入り込んでどこかへ向かった後。

 残るように指示された三人であるが、先程までの悲壮感を完全にぶち壊し、さらにキチンと向き合うように諭していた当人である慈は当の“先輩”を、まるで人型の発泡スチロールを抱えるが如く軽々と小脇に挟んで消えてしまっていた。

 

 故に、泣くにも泣けず流れる筈の涙は引っ込んだまま出てくる気配もなく、扉を叩く“かれら”も気配を消しており。

 そんな状況に正直に言えば、彼女らは暇をもて余してしまったのだった。

 

 各々軽く自己紹介をした後——―慈を知る者はあんな人だっけ?と首をかしげつつ―――とりあえず何かしなければ、と悠里が発案したのは“先輩”の墓作りであった。

 

「えぇそうね、とりあえずここで眠りについてもらいましょう」

 

 胡桃は血を洗い流したシャベルで、悠里が指示した園芸用の畑を掘り返し、“先輩”の体がすっぽりと収まる穴を掘り終わり、ふぅと額の汗を拭い悠里に話しかける。

 目算が正しければこのくらいだった、と脳内で計算しつつ満足そうに頷き、視線をガラス張りの園芸部の道具置き場代わりに使っている温室前に居る由紀に向ける。

 

「由紀ちゃん、良さそうなものは合ったかしら?」

「えっと…ここをこうして…と、出来た!コレでどうだー!」

「うんうん、上出来よ」

「柵を使って十字架かぁー」

 

 穴から通路に戻った胡桃はシャベルを肩に載せ手摺に寄りかかり、以外に器用な由紀が組み立てた十字架を視界に捕らえ、感心したように呟く。

 素人目だが、ちゃんと十字に組まれ白い腐蝕防止のためのペンキも塗られていることも手伝い、かなり本格的な出来映えである。

 

「へへーん。この位ならどんとこーい、だよ!」

 

 自慢気な彼女に二人の顔も思わず弛む。

―――僅かでも良い、この外の有り様を忘れさせてくれるならば。

 

 一見和気藹々とした朗らかな雰囲気であるが、悠里と胡桃の二人はヒシヒシと感じる絶望に染まりかけていたのだった。

 もはや、悲鳴すら聞こえない。あるのは風音に…どこからか届く濃密な鉄錆の匂い。

 

 これからの事を考えざる得ない現実。

被害はどのくらいなのか?

この学校の周りだけの筈がない、もっと大規模な、それこそこの街が?

 

―—―或いはこの国、そのものが?

 

 頭で考えれば考える程に、目の前の事象は絶望に満ちていた。

 

 故に、この珍妙でどこか調子外れにさせてくる由紀の存在は―—―とても有り難かった。

 

とはいえ―――。

 

パァン、パァン――——

パパパパパパパパパァン―――。

 

 徐々に近づいてくる、この炸裂音。

それの発生源であろう、人物には負ける事はだれの目にも明白であった。

 

「ねぇ、胡桃ちゃん。この音って花火だと思うかしら?」

「いーや、私の知識だと花火はこんなに連射できない、って告げてるな。」

「きっと、めぐねえだよ!趣味が射撃って聞いたことあるし!」

 

 校舎内から響くこの軽い炸裂音、一つ鳴り響く度に校舎内の“かれら”の数が減っていく。

勿論、抜群の射撃の腕を持つ慈が外すわけもなく、彼女が屋上に到達するまでに校内を彷徨っていた“かれら”は永遠の眠りに就く。

 屋上の扉を二回ノックしバリケードと扉をくぐる頃には初期配置されていた26体の“かれら”は綺麗に殲滅され一時的に校内は安全になっていた。

 当然のように怪我一つなく、山の様な大量の物資と見慣れない銃を入手し戻ってきた慈に対し、キラキラと輝く瞳で『めぐねえすごい!』と称賛する者と、呆れつつどこか引きつった笑いしかでない者に分かれたのは当たり前の事であった。

 

 

~~~

 

《掃除しつつ、屋上へ帰還しました。》

《初期配置の餌は完食しましたが、二日目には同じ“かれら”が復活するので一度で二度おいしいです。こちらも平らげましょう》

《なお、二日目分は完食しても復活しないので、レベリングは出来ません、正門から侵入してくるのをチマチマと狩る必要があります》

《とはいえ、どんどん遠足するのでレベリングには困りません。二日目になり次第遠慮なく殲滅しましょう。下手に残すと感染者が出ます。》

《ちなみに介錯後の遺体については初日分は自然消滅してくれますが、二日目以降分については消滅しませんので一つ一つ処置(校舎裏の超強力な焼却炉)でファイヤーする必要があります。》

《これも火葬のプロセスでメンタルダメージが入ります、ので放置したい所ですが放置しても腐臭と血、腐敗する人型たんぱく質のコンボでどんどんメンタルダメージが入ります。》

《延々と残る毒沼になるか、その場で中ダメージを受けるか…中々難しい問題です。》

《ですが勿論、これは通常のプレイする上の問題です。このプレイにおいては新たに発見された“次元のはざま”を利用すればこれらの悩み事は綺麗さっぱりに消えます。》

《3Dゲー特有のポリゴンの隙間というのは様々なプレイヤーや開発陣が直面する仕方のないバグと言えます。この作品においてはサバイバル、戦闘、クラフト、建設その他の要素がモリモリなので特に学園内の隙間は緩々です。》

《ですが、当然開発陣もその事は危惧しており破壊不能オブジェクトの設置により上手い事塞いでいますが、それは人の仕事。穴があります》

《3Fの教室の一室、掃除ロッカーにより塞いでありますが、介錯済みのゾンビを持ちながらと特定の角度でそれをぶん投げるとしゅるりん、とロッカーと壁の挟間に吸い込まれて消滅します。》

《本来であれば、放置により匂いなどで毒沼と化す遺体ですが、それは一定距離接近することにより発生する判定なので、次元のはざまに落とせば判定距離までキャラが接近することも無くなるので大丈夫です。》

《メンタルへのダメージも通常の処理するのと比較すれば本来ならば15体で限界が来るのが、次元のはざま戦法ですと計算上120体まで処理出来るほどまで抑えれます。》

《とは言え、他のがっこうぐらし!系列作品ですとそもそもこの死体処理関連のイベントが組み込まれていない事もある(自然消滅するタイプ)ので校内の安全確保までのタイムを考えれば人力さんの方が早い事でしょう。》

《さて、それでは無事屋上に戻りましたので埋葬~就寝まで流しましょう。先にも述べた通り“先輩の遺体”は正面玄関付近に放置されております。》

《現状、めぐねえはライフルとジュラルミンケース、それなりの物資を両手に握りしめておりますので先輩は影も形もありません。》

《散々射撃して多少集中が下がってしまいました、冷たい物で喉を潤しましょう。》

 

 

~~~

 

 

「さようなら、先輩…」

 

 菜園の一部を掘られた穴に介錯された“先輩”の体が最大限の敬意を払われながら納められる。

頬に一筋の涙を夕焼けに輝かせ、胸元で組まれた両腕の上に“偶然にも慈が購入していた花”が胡桃の手によって乗せられる。

 それが終われば、優しく慎重に土をかぶせて“先輩”は土の下に眠ることとなる。

軽く盛り上がりが出来ればそこへ由紀が制作した十字架が立つ。

 

「もし、解決して私が生きていたら…ちゃんとした所に移すから。それまで待っててくれよな。」

 

 その前に座り、胡桃は決意を述べる。

それを後ろで見守る三人もそれぞれ、冥福を祈る所作を行う。

 

(((どこから現れたんだろう…?)))

 

 めぐねえ以外の脳裏によぎる疑問符は雰囲気に流されてとても言い出せず、“先輩”の埋葬は終わりを告げた。

 

 

~~~

 

《はい、胡桃ちゃん決意イベントですね。この作品においては先輩の為に覚悟をキメて、やがて皆の為にと闘うシャベラーとして最前線に身を投じる、という流れになっております。》

《まぁ、残念ながら今プレイに関して言えば出番皆無ですが…。一週目さんざん酷使して道を切り開いたのでご褒美です。》

《その酷使具合が気になる方へ、一言でいえば常にボロボロ、シナヤス、発狂寸前、感染上等。の四本立てとなっております。何百回袖や服を掴まれたか数え切れません、カウンターをキメすぎて袖や服が残ってるか微妙なレベルというコメントが付くくらいでしたし。》

《なので!この周回においては衣装沢山、お風呂、食事豪遊、ふかふかベット、精神安定、未感染。という姫扱いします。100%クリア条件の要素収集も兼ねていますので問題ありません。》

《ある程度安定すればみんなを姫扱いできるのでそれまでは我慢です、めぐねえも贅沢出来るのできっと頑張ってくれることでしょう。》

《この後は、寝て起きるだけなのですが翌日の為の仕込みをしましょう。本来であればする事がないので寝るしかないですがこの場面はメンバー各々に指示を出すことができます。由紀ちゃんへの指示は簡単な小物製作関連、胡桃ちゃんへは援護して等の戦闘関連、りーさんへは食糧生産関連…と、得意分野を任せることができます。》

《勿論、他の仕事を任せることも可能ですが、例えば胡桃を食料生産係にしても効率と成功率にデバフがかかるので失敗ボイス収集以外で任せる意味は残念ながらありません。むしろ、食料入手できなくなる上にメンタルダメージが入ります、やめましょう。》

《それでここでお願いするのは勿論、りーさんにこの偶然めぐねえが購入していた野菜の苗、果物の苗を渡して植えてもらいましょう。なぜ国語教師であるめぐねえが苗を大量に購入していたのかは謎です。お昼休みにふと気が向いたのでしょう。》

 

《ここで一つ、小ネタを。今さっき終えた埋葬イベントの畑ですが初日に耕すことによってそれ以降畑として再利用することができるようになります。》

《むろんそんな事出来ないように制限がかけられる筈ですが、めぐねえシナリオでは埋葬イベント直後から動けるためにガード処置が間に合っていない為と考えられます。》

《なので、それを悪用すると…ゲーム中たまに墓参りをする胡桃ちゃんが向き合っていたのがスイカやらカボチャという光景になります。そんなネタ動画を出したことがありますが、問題なく進行するのが怖いですね。》

《ましてその時点で菜園管理を任せていると、今墓参りした畑を耕し「採れたてだぞぉ!」と振舞います。》

《…折角ですが、私は遠慮したいですね。》

 

《バグ技で問題なく進行しますが、リアルメンタルダメージ入りそうなのでそんな技は封印です。そもそもそんなバグ技を使う必要もすぐになくなるので、管理する畑が多くなる分逆にマイナスになります。》

《さて早速りーさんにお願いしましょう。》

《ちょっと気まずいので水を飲んで一呼吸して…と。》

 

~~~

 

「悠里さん、今大丈夫かしら?」

 

 埋葬を終え、菜園を見渡せるいつもの位置に自然と体が動きこれからの事を考えていた悠里に慈が声をかける。

彼女の両手にはどこから持ってきたのか大量の苗が持たれており、彼女の細められた瞳が見開く程に驚きを表す。

そんな悠里の様子にそこまで気遣っていない慈は、その苗を悠里の足元に優しく下ろし軽く額の汗をぬぐいう動作をして

 

「ふぅ、探索していたら見つけたの、恐らく食べれる物だから育ててもらえないかしら?」

「お疲れ様です、わぁ。沢山ありますね、これなら色々な物を作れそうです。一度には育てきれないので植えれない分は預かりますね。」

「ふふ、楽しみにしているわ。」

 

 胡桃と由紀が驚きの表情を浮かべる。

流石の由紀もあの量の苗をどこから見つけて来たのかについては全く見当が付かなかったのである。

勿論、胡桃同様に何てこともなく当たり前に対応する悠里の様子にも驚いていた。

 

(……私、どうしたんだろう?)

 

 当然、悠里自身も畑の空きスペースに苗をテキパキと植えていく自分に困惑する。

しかも見た所、すぐに実がなり食べれそうな野菜や果物系が多くまた、黒い園芸用のポットに多少の土と栄養土が付属しているのもありがたかった。

 畑は植えれば植えるほど痩せていくのだ、これまでであれば栄養たっぷりの土を購入してくるという手法がとれるのであるがこの環境だとほとんど不可能に思えてならない。

 故に、ほんの僅かでも外部からの栄養補給でもとても有難い物なのだ。

…一瞬、先ほどの埋葬を行った畑に視線を向けたがすぐに戻す、それはしてはいけない事なのだ。

悠里はそれを気取られていない事を祈りつつ目の前の作業に集中することにした。

 

~~~

 

《はい、そうです。畑の作物を植えてもらうという作業です。本来なら遠征に出るかランダムで配置される種や苗を入手してから、となる行程ですがめぐねえが購入していたので省けます。》

《作物を植えてから食べれるようになるまでには当然タイムラグがあるので、植えるのが早ければ早いほうが良いです。めぐねえシナリオだと立ち上がりが困難な理由です、現時点では食用可能な作物が僅かしかなく、後は売店や教室の机やロッカー、鞄に入っている食力をかき集めるしかないのです。》

《少しでも早く多く食事安定を図る必要があるので初日から植えて貰います。ついでに寝床も整えておきましょう、すでに掃除完了しておりますが生徒会室に行けませんので初日は屋上で眠る必要があります。》

《ただ横になればいいという話ではなく、少しでも暖かく柔らかい所が推奨されております。ここでは温室+めぐねえの物資の中に毛布と枕があるので温室を少し整理して初日限定の寝床にしてしまいましょう。》

《それくらい自分でやればいいと思うかもしれませんが、めぐねえは食事の用意をするので手が空いていませんし、すぐ終わるので胡桃ちゃんと由紀ちゃんに指示を出してお片付けしてもらいましょう。姫扱いはって?お姫様だって食事位は自分で摂取するはず》

 

《ところで、この枕と毛布はなんなのでしょうか?…お昼寝グッツでしょうか?これとライフルは確定でめぐねえカーに積み込まれていますし、謎です》

 

《おっと、そうこうしている間に作業を終えた面々が集まってきましたね。本当なら菜園の野菜丸かじりですが物資に余裕があるので“ライスですよ”とお湯で作った“味噌汁”です。お肉を連想させる食品だとメンタルダメージ入ってしまうので注意しましょう》

《食欲もないと思うでしょうが、モリモリ食べています。最新のがっこうぐらし!ゲーだと状況に合わせた食欲具合らしいので管理が大変です》

《この作品は最初の日をすぎればステーキなんかも平気で食べだしますし、メンタルダメージ増大で人間関係がちょっと険悪になろうとも肉やらを食わせれば何とかなったりします。》

《逞しいのかそうじゃないのか…。ともあれ食事をするのを見届けて川の字になって眠りましょう、これにより屋上で固まって眠るより翌日のパフォーマンスが大体30%位向上してかなり楽に校内を取り戻せるでしょう。》

《めぐねえもこの先暫くまともに睡眠をとるチャンスがなくなるのでここはガッツリ寝ましょう。どうせ明日の朝までゾンビが湧くことはないですし、屋上にはちゃんとバリケードも張ってあります。狩り損ねていたとしても大丈夫です。》

《そして火の傍に居たので喉が渇きました、お水。》

 

~~~

 

 それはスーパーで売っている5個で300円もしないレンジや湯煎用のパック白米と、お湯を入れるだけできる実に簡易な味噌汁のレトルト品であった。

だというのに、鼻孔を擽るこの匂いはなんと食欲をそそるのだ、主張する空腹は段違いに暴れ出してしまいそうだ。

 あれだけの惨事を見たのに、今も街の方に目を向ければ何が起こっているか簡単に想像出来るというのに、それでも目の前に一人一つ置かれた白米と湯気を立てる味噌汁。

 かつて自宅で年末に祝った豪勢な食事に勝るとも劣らない食事だと、悠里は感じた。

 

 慈からお願いされた作業を終えて、手を洗う。

 ふと彼女の方を見れば温室で何かの作業を胡桃達にお願いして、一人離れてなにやらゴソゴソと物資を見ていたかと思えば、鍋に水を入れてガスコンロに点火し、ものの五分でこの二品を作りおえていた。

 出来合いだけどね、と疲れが見えるが恥ずかしさの混じった笑みで言われてもそれは昼から何も食べておらず今後まともに食事ができる保証のなく、精神的につらい現状に温かい物はとて沁みるたのだ。

 

 プラスチックのスプーンを使い、はふはふと熱さを逃がしながらそれを口に入れていく。

 咀嚼をして、味噌汁で喉奥へ流し込む。

ごく当たり前の事だというのに、なぜこんなにも嬉しいのだろうか。

 

 見れば胡桃も由紀も同様に、やや品なく夢中で食べていた。

誰かが言っていたが食は命。

火を使い、白米を頬張り、味噌をベースにして、その上で旨味が溶け込んだ味噌汁。

それは今を、周りの絶望を忘れさせるとても甘美な幸せを与えてくれているのだ。

 

 太陽が沈み、辺りに闇の帳が降りる頃には全員が食べ終わり、言葉は少ないがけして険悪ではない良い雰囲気の中簡易的な寝床へ向かう。

 温室内の園芸道具を端に寄せて、保温用のビニールを寝具マットのように地面にひき、その上に4人が川の字になり、その上から毛布を重ね横になる。

 ビニールの上で、おまけに制服を着たまま寝るという初めての経験であるが、この大惨事の中で得る初めての睡眠にしてはそう悪い物ではなく。

 

「では皆さん、おやすみなさい。今日は忘れる事の出来ない沢山の事がありました。だけど、私たちは生きています。…だから、今は眠りましょう。明日も、明後日も。みんな一緒に居るために、がんばりましょうね。」

「ふぁぁぁぃ…おやすみなさい、めぐねえ」

「佐倉先生、でしょう?明日も早いのだから、寝ましょうね。おやすみなさい。」

「はいっ!そーでしたー」

 

 調子っぱずれなそんなやり取りを聞ききながら、思いのほか快適な寝床に呻き声一つない校内の静けさ。

すでに眠る誰かの寝息に誘われ、鉄扉のような重さの瞼に逆らえなくなった悠里が寝息を立てる。

 ぴったりくっついてくる由紀を感じながら全員眠ったことを確認した慈も、すぐに眠りに落ちた。

 

 街は日が沈めば明かりは殆ど残らず、そのかわりに満点の夜空と月の光がじんわりと辺りを照らす。

たった1日で様変わりした悪夢のような世界で、名も知らぬ虫が人間の代わりに音を立てる。

 

~~~

 

《はい、これにて初日終了です。》

《パンデミック初日を生き延びました。なんとか助かりました。》

《ところで、このゲームだと原作キャラの何人かが救助不可能キャラとか未出演なのですよね、放送局のお姉さんとか、チョーカーさんとか…こうした不満の声が救助可能やプレイアルキャラ化に至ったのでしょう》

《名字だけのモブの救助対象キャラの仲間はいるのですが…それなら原作キャラを出してくれればよかったのに》

《これ以降の作品ですとゲーム版限定のオリジナルキャラや主人公のキャラクリエイト機能など追加されているらしいですね、スキル組み合わせを考えるだけも楽しいでしょう》

《この作品は連載最中に製作、販売されたゲーム故に展開が原作からかなり逸脱しており、例えば卒業せずに自給自足して学校が要塞化なんてエンドもあるのであえて、この作品でやっていきたいと思います。》

《勿論、そんなグッドエンドがあればバッドエンドも存在するのですが…これらの収集は100%クリアには含まれませんので収集は行いません。》

《各々、各キャラクターによって共通の物もあればそのキャラクター専用の物もあるので興味ある方はやってみたらどうでしょうか?》

《汎用のバッドエンドですと黒背景に赤文字で、空腹で動けなくなった場合は『おなか、すいた』と表示され、アニメと同じ声優さんが入魂の演技で読み上げてくれます。》

《由紀の『みんないっしょだよ』胡桃の『先輩』りーさんの『空へ』みーくんの『現実』めぐねえの『しょくざい』メインの5人の各々のバッドエンドは文字通りのBADなので閲覧には注意です。》

《めぐねえBADの『しょくざい』が一番来ました、とても辛かったですね。》

《解放条件はみーくん除く初期学園生活部メンバーで、めぐねえ以外感染、発症により発生するBADです》

《ある教室の中で手を伸ばす見覚えある三人、彼女らは鎖により拘束されている姿が手前に配置され、奥の教卓には服もぼろぼろで髪には乱れ、擦り傷は手当すらしていない状態の疲れ切った様子のめぐねえが、瞳孔がん開きのアカン顔して教卓に立っていて『これが私のしょくざいです』》

《後悔と諦め、謝罪と疲れすべてが混じった声優さんの演技、ぞわっとします。》

《その後はゆらゆらと覚束ない足取りで、猛獣の様に動きを制限された三人に自分から近づき、変な帽子をかぶったピンク髪の“かれら”が大口を開いてめぐねえの肩口に食らいつこうとした瞬間に画面が暗転。悲鳴もなく齧られるSEが響き『しょくざい』ENDです。》

《食材と贖罪をかけたシャレですね。国語の先生らしい(?)ENDです。》

《今プレイではあり得ない光景なので絶望のゾンビワールド成分の摂取が必要の方は適度に摂取してください。》

《では二日目。校内清掃(ゾンビ編)~新車レンタル~買い物100%OFF~新入部員加入です。やる事が沢山あるので早速街へ遠征するのでめぐねえが言ったように早起きするのでよろしく願いします。》

 

 

 




お久しぶりです(9年2ヶ月ぶり)

以前執筆していた端末でエラーが頻発して書いてたデータが消えてモチベ消失してました。
で、そのあと続きを投稿しようとしていましたが暫くアカウントへのログインも忘れてて放置していました。
そして、すっかり作品の雰囲気もがっこうぐらしの空気感も飛んでいるので、データが残っている分を投稿します。
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