咲「ミリオンダウト…?」   作:よくと氏

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[前回までのあらすじ]

私の名前は宮永咲。
liar gameという恐ろしいゲームにある日突然巻き込まれてしまいました。
そこで行われていたのはミリオンダウトというゲーム。

???「1枚100万円で超過分のチップは賞金になり、不足分のチップは負債となります」

咲「嘘でしょ…」

こうして私の人生を賭けた戦いが始まったのです。


2話目

目の前の扉にはスペードのマークが描かれていた。ここが私が選んだ第1ピリオドのゲーム会場だ。

 

咲「失礼します…」

 

恐る恐る中に入ってみると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

揺杏「おっ、咲ちゃんじゃん」

 

有珠山高校の岩館揺杏さんだ。このゲームに参加してるのはもしかして、麻雀部のメンバーだけなのだろうか…

 

咲「こんにちは…揺杏さんが対戦相手なんですか?」

 

揺杏「そうだよー。よろしくねっ」

 

私と違い、向こうは緊張して無さそうだ。

 

咲「揺杏さんもルールはもうご存知ですよね?」

 

揺杏「ルール?何それ?」

 

咲「えっ!?知らないんですか?」

 

揺杏「冗談だよ。チップ1枚100万円なんでしょ」

 

咲「もう…びっくりした…」

 

驚く私を見て彼女はケラケラと笑っていた。

元々こういう人なんだろうか…あまり私の好きなタイプではなさそうだ。

 

智紀「それでは、メンバーが揃いましたので第1ピリを始めさせて頂きます。先攻は宮永様です」

 

この人も麻雀部の人だ。けれどこの人は運営としてこのゲームに参加しているようだ。

新品のトランプを開け、慣れた手つきでカードをシャッフルし私たちに7枚ずつ配った。

いま目の前にある7枚のカードが私の命運を決めるカードなのだ。

お願いだから…強いカードがありますように…

 

咲手札:♡3、♧4、♤8、♧10、♡10、♡K、♤A

 

私にとってこの手札がどれぐらい強いのかわからなかった。初めてやるゲームなので戦略もわからない。

とりあえず勝つためにはどうすれば…

 

揺杏「よっし…」

 

手札を見たときから彼女はずっとニヤニヤしている。もしかして手札が良いのだろうか…

 

咲「それじゃあ…これで」

 

私が一番最初に出したカードは♧4だ。

これしか、出せるカードが見当たらなかった。

次順、彼女は裏向きのカードを出してきた。

もちろん、私はダウトをしない。ここで、3か4を出すなんてまず無いだろう。

その後、私は♤8を出し1ターン目が終わった。

 

ターン1:♧4→裏札→♤8 8切り

 

これで私の手札は残り5枚。

次の一手はどうするべきなのだろうか?♡3は最後まで余らせると11バックが来ない限り使えないだろう。1枚負けでも100万円失うことになるのだ。かと言って、相手の手札も強そうだから手番が取れるのも最後になるかもしれないし…

少し悩んだ後、♡3を出すことにした。

 

揺杏「あれ…8切りしたからもっと強いカードが来ると思ってたんだけどなぁ」

 

彼女はそう言って♢8を出した。これで8切りが成立し、私の手番は取られてしまった。

もし、私が弱気にならず10ペアや♡Kを出していれば…いろんな考えが頭をよぎる。

 

ターン2:♡3→♢8 8切り

 

揺杏「おっと」

 

彼女はミスを冒した。自分の持っているカードを落としてしまったのだ。♢のジャック。しかも絵柄の方が上になるという不運。私は見逃さなかった。

 

揺杏「見てた?」

 

咲「え、何がですか?」

 

揺杏「それならいいんだ…」

 

明らかにさっきより顔色が悪くなっている。きっと彼女も緊張していたのだろう。

その直後、彼女が出したのは裏札·♧5のペア。裏札には僅かだが折れ目が付いていた。

さっき落ちた♢Jを拾い上げた時に付いたものだろうか?そうなると、このペアは嘘出しと言う事になる。

 

咲「さっき…見てたんですよ」

 

揺杏「えっ?」

 

咲「落ちたカードって♢Jでしたよね」

 

揺杏「ち、違うよ!そもそもカードは裏向きに…」

 

咲「私、目がいいんですよ」

 

揺杏「っ!!」

 

咲「ダウト」

 

私はダウトを宣言した。

彼女も完全に動揺している。これでもう一回私に手番が…

 

智紀「宮永様がダウトを宣言されましたのでカードのチェックを行います」

 

運営の人が彼女の出した裏札に手を伸ばしゆっくりと裏返す。

表に返されたカードに書かれていた絵柄は♤5。

 

咲「えっ?」

 

ということは…

 

???「ペアが成立していたのでダウト失敗となります。岩館様は宮永様に渡すカードを選んでください」

 

ターン3:裏·♧5→ダウト[♤5·♧5] ダウト失敗 揺杏→宮永[♤5·♧5]

 

揺杏「それじゃあ…全部渡そっかな」

 

先程まで動揺していた彼女は、すっかりもとに戻っていた。私には理解できない。さっき落ちたカードは確かに♢Jだったのに…どうして…

 

揺杏「私があんなミスすると思った?」

 

咲「え…」

 

揺杏「するわけないじゃん!もしかして宮永さん本当に信じてたの?」

 

揺杏「宮永さんって、ほんとに馬鹿だよねぇぇぇ!!」

 

静かな部屋に彼女の声だけが響いている。完全に私の考えは読まれていた。見事なまでに…

 

揺杏「今の軽率な判断で200万円失ったんだよっ!残念だったねぇ!」

 

揺杏「どう?私の作戦、完璧だったでしょ?宮永さんも使っていいよ!だけど、あんなので騙されるのなんて宮永さんしかいないけどね!」

 

咲「何で…何で…」

 

もう逃げ出したかった。こんな事になるのなら…

私の手札はこのミスにより6枚に増加した。それに対し相手は3枚…

 

揺杏「それじゃ、これはどうかな?」

 

場には裏札と♢Kが出された。これで彼女の手札は残り1枚。もちろん私は出せるカードがない。嘘出しすることもできるが通る気がしなかった。

 

咲「パスで…」

 

揺杏「本当にパスでいいのー?このままだったら600万円失うことになるよー?」

 

咲「いいんです…出せるカードが無いんで」

 

揺杏「あっそ…」

 

ターン4:裏·♢K パス

 

彼女が最後に出したのは折り目が少し付いた♢J。あの時落としたカードだ。私の見た情報は全て正しかった。それなのに私は負けてしまった。まんまと騙されて…

 

ターン5:♢J ゲームセット

 

智紀「勝者は岩館様です。今回のゲーム結果により、宮永様から岩館様にチップ6枚の移動が発生します」

 

私はチップの入った袋からチップを6枚取り出しテーブルに置いた。

 

揺杏「いやーいい勝負だったね」

 

テーブルの上のチップを回収しながら彼女は言う。きっとそんな事1ミリも思ってないだろう。どれだけ人を馬鹿にすれば気が済むのだろうか。

彼女は退室した後、堪えていた涙が溢れてきた。自分の不甲斐なさ、相手への憎しみ、その全てが涙へと変わった。このまま勝負を続けるなんて、もう無理だ。今すぐ逃げ出したい。

 

智紀「これ使いますか…」

 

差し出されたのはティッシュだった。先程から泣いていたのだが、完全にもう一人居ることを忘れていた。

 

咲「ありがとうございます」

 

智紀「あの…その…あんまり私が言うのもあれなのですが…」

 

咲「?」

 

智紀「このゲームは確かに残酷です。大金がかかっているから人の本性が見えてしまいます。でも、その中でもきっと貴方を救ってくれる存在が…きっと…」

 

咲「…慰めてくれてありがとうございます」

 

智紀「私にはこんなことしか出来ませんが…」

 

再び部屋に静寂が訪れる。そろそろこの部屋を出ないと、迷惑かもしれないと思った私は最後にもう一度お礼を言ってこの部屋を後にした。

 

 

○ ○ ○ ○ ○

 

 

部屋に戻った私は、少し軽くなったチップ袋を見てまた不安な気持ちになった。

私はただの強がりなのだ。人と一緒に居るときだけ自分の弱い部分を隠すことができる。けれどこうやって1人になってしまえば…

 

咲「助けてください…誰か助けてっ!!」

 

私の声が部屋に響き渡る。返事なんて帰ってこない。

 

 

私はいつの間にか眠ってしまっていた。時計を見ると午後7時を示していた。あと5時間で次の戦いが始まってしまう…

お腹が空いた私は食堂に向かうことにした。

 

 

○ ○ ○ ○ ○

 

 

ゲームルームがある大広間の近くに併設されている食堂は私の想像以上に豪華なものだった。細部まで装飾が施され、宛ら高級レストランのようだった。見た目だけでなくサービスも充実していた。この食堂にはメニューがない。注文すればどんな料理でも出てくるのだ。

 

咲「すみませーん」

 

純「はいよっ」

 

出てきたのはこれまた見覚えのある人だった。もしかして、このゲームは龍門渕によって運営されているのでは無いのだろうか…

 

咲「冷やし中華頂けますか?」

 

純「いいけど…そんなんでいいのか?もっと豪勢な料理も作れるけど」

 

咲「冷やし中華を食べたい気分なので…」

 

純「そこまで言うなら…まぁちょっと待っといてくれ」

 

彼女は不思議そうな顔をして厨房に戻っていった。

 

 

共用の食堂なのだが他の参加者の姿は確認できなかった。時刻は7時30分、1人や2人ぐらい居るものだと思ってたが…

 

純「お待ちどおさん、こんな感じでいいか?」

 

咲「ありがとうございます」

 

純「えーっと…マヨネーズとかかける?」

 

咲「あっ、いいです」

 

純「また、なんか食べたくなったら呼んでくれ。一応24時間対応だから」

 

24時間対応って言ってたけど、このゲーム5日間もあるのに体が持つのだろうか…

 

 

冷やし中華は今まで食べた中で一番おいしいものだった。具材はシンプルなものばかりだったが、その一つ一つが主役になりうるほどの美味しさだった。きっと最高級の食材が使われてるのだろう。

こんなに美味しいものが出てくるのならデザートも頼もうかな…

 

美穂子「あら…宮永さん?」

 

声がする方を振り返ってみると、美穂子さんがいた。やはり、参加者には麻雀部のメンバーしか居ないのだろうか…

 

咲「こんばんは…美穂子さんも今から食事ですか?」

 

美穂子「えぇ。お隣いいかしら?」

 

咲「いいですよ」

 

料理を頼むと、積極的に私に話しかけてきた。ゲームに参加するきっかけや第1ピリオドの話、そしてこれからの話。私の話を彼女は親身に聞いてくれたし、慰めてもくれた。こんな優しい人もゲームに参加してるんだ…

彼女は食事を終えるとある提案をしてきた。

 

美穂子「宮永さん。今から少しゲームをしない?」

 

咲「ゲームですか?」

 

美穂子「そうよ。でも別に何も賭けないから気軽に楽しんでね」

 

咲「はぁ…」

 

彼女がポケットから取り出したのはトランプだった。もしかしてミリオンダウトをするつもりなのだろうか…

 

美穂子「別に、ミリオンダウトをやるわけではないわよ」

 

私の心の中を見事に読まれた。そんなに表情に出ていたのかな…

 

美穂子「今回はこの2枚のトランプを使うわ」

 

そう言って見せられたのは、ジョーカーが描かれたカードと両面とも裏がプリントされたカード。両面裏のカードは製造の工程で発生した不良品らしい。ぱっと見た感じでは違いはわからなかった。

 

美穂子「宮永さんは、光と闇ならどちらがいいかしら?」

 

咲「えーっと…光で」

 

美穂子「それじゃあ、ルールを説明するわね。今から袋の中にこのカードを2枚入れて、宮永さんに1枚引いてもらうわ。そのカードを裏返して表の面が出れば光が宿るということで宮永さんの勝ち。裏の面のままだったら闇が宿るということで私の勝ちね。袋から取り出した時にジョーカー…つまり表の面が見える状態で引いたら私の勝ちが確定してるから、その場合はもう一度やり直しましょう。これを繰り返して先に10勝したほうが勝ちね」

 

咲「はい」

 

美穂子「あと、何も賭けてないけど公平にするために私はカードは引かないわ。宮永さんが全て引いてくれるかしら」

 

咲「分かりました」

 

美穂子「さぁ、始めましょう…」

 

こうして、彼女とのゲームが始まった。

別に、何かを賭けてるわけでもないしカードを引いて裏返すだけのゲームだったので気が楽だった。

 

咲「えいっ」

 

最初に取り出したカードを裏返すとジョーカーの絵柄が現れた。これで私の1勝だ。

その次も私が勝った。これで2勝。

 

美穂子「宮永さん中々強いですね…」

 

しかし、3戦目以降はやり直しを含めて3連敗。あっというまに逆転されてしまった。その後もいくらか勝つことは出来たが、7対10で負けてしまった。

 

美穂子「どうします?もう一回やりますか」

 

咲「はいっ!次は負けませんよ」

 

勝率は50%、せめてミリオンダウトで負けたのだから、このゲームぐらいは勝っておきたかった。

だが、2回戦も8対10で負けてしまった。私には運も無いのだろうか…

 

咲「もう一回いいですか?」

 

美穂子「んー…もう8時だからラストにしましょうか」

 

最後くらいは勝ちたかった。私は今まで以上に慎重に袋の中からカードを選んだ。

 

咲「よしっ…これで5対2…」

 

3回戦は今までにないほど有利に進んでいた。あと5回勝つだけでいいのだ…

 

美穂子「今回は調子がいいですね」

 

咲「このまま勝たせてもらいますよ」

 

私は意気揚々と袋の中に手を伸ばした。裏返して出てきたのはジョーカー。これで6対2…

この勝負で私が裏向きのジョーカーを引けたのはこれが最後だった。

 

美穂子「これで10勝。私の勝ちね」

 

6対10。結局最後も勝つことができなかった。

 

美穂子「序盤は良かったけど残念だったわね」

 

咲「私って勝負に向いてないんですかね…」

 

美穂子「どうかしら…」

 

彼女は明確な回答はせずにその場から立ち去った。

 

 

○ ○ ○ ○ ○

 

 

ミリオンダウトだけでなく美穂子さんとの勝負すら勝つことができなかった私のメンタルはボロボロだった。何をやっても勝てない、私は弱い。負のイメージで私の体は覆われていた。

 

咲「このゲームが終われば…私は死ぬんだろうな…」

 

きっと、このゲームが終わる頃には負債が1000万円を超えるだろう。そうなったら生きていくよりいっそ…

誰もいない部屋で虚ろな目をした私は楽しかった過去を思い出していた。今の私にとっては走馬灯みたいなものかもしれない。

 

咲「皆で楽しく麻雀をして…遊んで…美味しいものを食べて…」

 

自分に言いきかせるように口から言葉が漏れていく。私の人生もあと4日なのかぁ…

 

わたしがおわるまでにできることってなんなんだろう…

 

まーじゃん?いましょうぶごとなんてしたくない。

 

あそぶ?ここではできない…

 

おいしいもの?

 

咲「あ…」

 

そうだ、これなら食堂にいけば…それに、さっき勝負をしていて忘れたがデザートを食べるんだった。

私は再び食堂に向かうことにした。




次回予告

「この勝負に勝つために欠かせないものって分かる?」

「あらあら…」

「僕的には面白いよ」

to be continued…
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