俺の目の前に天使が舞い降りた。
それは、おかしくなった頭が起こした幻覚じゃない。
欲望に打ちひしがれた、妄想でもない。
――――――現実だった。
と、まぁ小説風に語ってみたが・・・・・。
「おにぃちゃん、こんにちはっ」
「うん、こんにちは。エリーゼちゃん」
まさに目の前には天使こと、エリーゼがいる。
満天の笑顔なんて見せちゃって、俺をどうしたいんだ?コノヤロー。
「おにぃちゃんは、お料理しないの?」
「ん?ん~・・・。しないよ」
「どうして?」
「だって、エリーゼちゃんとお話したいからね」
「エリーゼのことすきなの?」
そうきたか・・・。そんなことを直球で聞けるなんてな。下手をしなくても将来が不安だな・・・・。
「ん~~~・・・・」
くそっ!!!どう答えても犯罪臭しかしねぇぞ!!!
・・・いやいや、俺はロリコンじゃねぇんだ。シスコンだ!!
「好きだな。妹であるエリーゼちゃんが」
「???」
そりゃ意味分からんわな・・・・。言った本人も分かんねぇ。
まぁここは、話題を変えるに限る。
「エリーゼちゃんはお姉ちゃんのことは好き?」
「すきっ」
「そっか、どういうところが好き?」
「えっと、いつもエリーゼとあそんでくれるとこっ」
「そうなんだ、お姉ちゃんは優しいんだね」
「うんっ」
イメージが湧かねぇけど、多分ゲームとかで遊んでんだろうな。くれぐれも変な道にだけは進ませんじゃねぇぞ。
「そういえば、エリーゼちゃんは日本語上手だね?」
「ううん、まだまだ下手」
「けど、お姉ちゃんより上手だよ?」
「そう?」
「うん、エレーナ―――お姉ちゃんは、少し苦手っぽいけどなぁ」
「ぜんぜんっ。だってお姉ちゃん、ゲームのことばなら、スラスラいえるよっ?」
「そうなんだ」
そっか、アイツはゲームを日本版でやってんのか。
だったら、はっきり喋りゃいいのにな。それとも、何かのキャラを真似てんのか?・・・っつか、中二病なのか・・・アイツ?
「エリーゼちゃんはどこで日本語を習ったの?」
「パパからっ」
「お父さんは日本人なの?」
「ううん、でも、にほんでおしごとしてるから、じょうずなのっ」
「じゃあ、エリーゼちゃんはお父さんといっぱいお話してるんだ」
「うんっ」
「そっか」
――――――ポンポン
「・・・・・・・・はうっ・・・・」
よっしゃ!!天使にナデナデ成功っ!!
あくまでも自然に、さりげなく。ミッションコンプリート!!!
「井久、すまないが食器を運んでくれないか?」
「ああ、わかっ―――」
――――――クイックイッ
「おにぃちゃん」
「ん?どうしたの?」
「・・・・呼んでみただけ~」
――――――――――――キュゥゥゥゥウウゥウウンンンンン!!!!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どこいくの?」
「ち、ちょ、ちょっと・・・トイレにね?」
やばいやばいやばいやばい!!!何だあの娘!!?本当にエレーナの妹かよっ!!?小悪魔すぎるぞっ!!!!!
・・・・何とか正気を保って、晴臣特性営業スマイルで誤魔化したけどよ。
んだよ「呼んでみただけ~」って!!!!!
ぶち殺す気マンマンじゃねぇか!!!
スーーーハァーーー、すぅーーーーーーはぁーーーーーー。
・・・・・俺はシスコン俺はシスコン俺はシスコン・・・・・。
深呼吸したら何とか落ち着いたぜ。
そういや、説明すんの忘れてたな。
今はフランチェスカ一家の別荘に居るわけだが、両親は仕事があって留守にしてる。
しょうがねぇから、俺たちで飯を作る羽目になったんだが、あのメンツで作れるのは俺以外の奴らだったわけだ。
これまたしょうがねぇから、出来上がるまで天使と会話してたってのが今までの流れだ。
質問あるか?
・・・・・・ねぇな?俺の口調にツッコんだやつは、飯抜きだ。
「そろそろ、戻るか」
にしてもさっきから日野が居ねぇんだよな。・・・・まぁ物思いにでもふけってんだろうけど。
「あれ?イックン、明美は?」
「さぁな、知らねぇのか?」
「井久はずっとここにいたんだろう?見かけなかったのか?」
「あ?あ、ああ、まぁ、エリーゼの面倒見ねぇとさ?」
―――わぁ・・・カレーだっ。
―――・・・・・・エ、・・・リーゼ・・・・ぎょ、・・・うぎ・・・わる・・・い。
姉妹の絡みってのも、なかなかいいもんだな。ご飯が進むぜ。
よしっ!ここはアイツに任せよう。
「俺たちは先食ってっから、美玖探してこいよ」
「え?私?」
「親友だろうが」
「わかった・・・・。じゃあ食べ終わったら、流しに入れといて?」
「心配はいらないぞ、あとはオレが伝えておく」
「よろしくねっ」
「・・・・・行かなくてよかったのか?」
テメェはいつも藪から棒だな・・・・。
「テメェの言いてぇことがわからねぇな」
大体、俺が行くのはお門違いだぜ?リア王さんよぉ・・・。
それに目の前のオカ――――――光景を見逃すわけにゃいかねぇぜ。
「・・・・・ふむ・・・そうか」
やけに、あっさり引くじゃねぇか。まぁいいけどな・・・・・。
舌に痺れる香辛料を味わいながら、一日目の海旅行の夜が更けていった。
可愛い天使の思わぬ一撃に心を乱されはしたが、間一髪踏みとどまる。
・・・・いいか、決して、決してっ!!
俺はロリコンじゃねぇからな!!声を大にしてでも言ってやる!!
俺は!!!シスコンだぁぁぁぁああ!!!!!!
「明美、どうしたの?海なんか眺めて」
「美玖さん・・・・・」
「ご飯できたよ?一緒食べよ?」
「・・・美玖さんは」
「ん?」
「井久さんのこと、どう思います?」
「・・・・・・」
「好き・・・・・ですか?」
「全然っ!!」
「だって、イックンたらこっちの気持ちなんて全然分かってくれないし。優しくないし。
イックンは私に告白したって言ってたけど、きっとあれは嘘だよ」
「・・・・どうし―――、そ、そうなんですか?」
「うん!明美は、駆けつける前の話を知らないかもしれないけど、酷かったんだからっ」
「・・・・・・」
「『俺がお前を好きじゃねぇんだ』って言われてさ・・・・」
「・・・・・・・」
「私ね?イックンのことが好きだったの」
「けど、イックンは私のことが好きじゃなかったみたい。
・・・・酷くない?私の好意を知っててずっと弄んでたんだよ?」
「それは・・・・」
「だけど・・・・もういいんだっ。・・・・・・・・あ、諦めたから」
「・・・・・・・・・諦めきれてないじゃないですか・・・・・・・」
「ん?何か言った?」
「いいえ」
「・・・・もう、井久さんのことはどうでもいいんですか?」
「え・・・・・?」
「どうでもいいんですかっ?」
「・・・・・・・・・・・」
「だったら・・・もし・・・・・井久さんに」
「か、彼女が出来ても・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「構いませんよね?」
「・・・・そ、それって・・・」
「ワタクシ、井久さんの事が気になって仕方がありません」
「―――っ!」
「ですが、その感情が『恋』なのかはわかりませんけど・・・・」
「美玖さんは構いませんよね?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・行きませんか?」
「・・・・・・・・・・」
「では、先に行ってます」