「あれ、か・・・」
「いくらなんでも、やりすぎじゃない?」
「・・・・・・・」
「晴臣くん?」
「・・・・いや、どうだろうな・・・」
「私はやりすぎだと思う」
「オレは・・・・・、王様ゲームだから仕方ないと思う」
「でも・・・・・」
「美玖ちゃんの言いたいことはわかる。何故ならこうして追跡しているからな」
「・・・・・・あんなの・・・・・・」
「思うことがあるなら聞くが?」
「・・・・・・何でもない」
「王様の命令です―――」
ったく、日野の野郎・・・・。完全に職権乱用しようとしてやがんな。もしかすると一番王様になっちゃいけねぇ奴だったかもな。
んだよ、街を歩こうって?しかも俺とだけ・・・。ふざけんじゃねぇ、誰が好き好んで街なんか歩くか。
「・・・・言っても、しねぇと行けねぇんだけどな・・・」
めんどくせぇ・・・。美玖とでも行きゃいいのに、もしくは晴臣とか。しかもお天とさんは何考えてんのか、過ごしやすい天気にしやがって・・・。
「俺に何求めてんだ?」
告白しろとか言うんじゃねぇだろうな・・・。まさか、告白を受け入れろと!?んなわけねぇか、第一、アイツが告白するわけねぇしな。つか、させねぇ。
「すみませんっ、お待たせしてしまって」
「同じ別荘にいて、テメェはなんで遅れんだよ?」
「着替えに手間取ってしまって・・・」
着替えに手間取る?そんなラフな格好でか?
「どうですか?・・・似合いませんか?」
「似合う似合わねぇを俺に訊くのかよ」
「あ、・・・あの・・・」
涙は女の武器、なんて誰が言ったんだ!ったく・・・そんなしょぼくれんなよ。らしくねぇ・・・。
「似合わねぇことはねぇぞ」
「ほっ、本当ですか!?」
「ファンションなんて分かんねぇけどな」
まぁいいか、好感度を上げてから突き落としたほうが、希望もわかねぇってもんだ。
「で、どこ行きてぇんだ?」
「え?あ、・・ああ、とりあえず行きましょう」
・・・・・・決めてねぇのかよ。どうせ最初からそうなんだろうけど。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「井久さんは休日は何をしているんですか?」
「ゲームとか」
「そ、そうですか・・・・」
「・・・・・・ソワソワ・・・・」
「す、好きな食べ物は何ですか?」
「特にねぇよ」
「は、はぁ・・・・」
「・・・・・・・・・ソワソワ」
初デートかよっ!!!何さっきからソワソワしてんだ。別にテメェに何も期待してねぇんだよ。いつも通りにできねぇのか?
・・・・ったく、しょうがねぇな。
「おい」
「は、はいっ!?」
「なにテンパってんだよ」
「ふぇっ!?な、何言ってるんですか?」
「何って、さっきから落ち着かねぇじゃねぇか?」
「・・・あの・・えっと、男の人と一緒に歩くの・・・初めてなんです」
「ウブかよ・・・・。つか兄弟とかいねぇのか?」
「はい、一人っ子です」
「んだよ、しけてんなぁ。エリーゼみてぇな妹いねぇのかよ」
「いませんよっ、それに外国人の時点で血が繋がってないじゃないですかっ」
「まぁ、俺は妹より姉派だけどな」
「聞いてませんよ・・・。そういえば井久さんはシスコンでしたね」
「んだよ、知ってんのか」
「いつもそうブツブツ呟いてるじゃないですか。
というかそれって『変態』って言うんじゃないんですか?」
「ふざけんな!俺は姉ちゃんにやましい事してぇんじゃねぇ!!」
「・・・・それはそうでしょ、姉弟じゃないですか」
「俺は姉ちゃんのパンツを嗅いで健康状態を確認すんだよっ」
「変態じゃないですか!」
「毎日風呂を覗いて、健康状態を確認するんだっ」
「だから変態じゃないですかっ!!」
「そして、毎回すれ違うたびにお尻を触って健康状態を―――――」
「もう健康状態の確認を利用したセクハラじゃないですか!!!!
貴方はシスコンじゃなく変態ですよ!!!」
「おいおい、あんま女の子が変態変態連呼するもんじゃねぇぜ?」
「貴方が言わせてるんでしょう!!」
やっぱ日野じゃねぇと突っ込みにキレがねぇぜ。
「まぁ、結婚するなら姉ちゃんだけどな」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「おい・・・ツッコミは?」
「え?・・・あ・・すみません、ボケてたんですか?」
「間に受けんなよ、俺も一人っ子だっつーの」
「あ・・・そうなんですか、知りませんでした」
んだよ、その反応。シスコンの俺が悪いみてぇな空気・・・・。やめてくんねぇかな、俺はシスコンってことに誇りを持ってんだかんな。
「・・・・ったくしょうがねぇな、喉渇かねぇか?」
「え・・・ええ、渇いているといえば―――――」
「んじゃ、買ってくっからそこで待ってろ」
「え!?・・・あの!でしたらワタクシも一緒に!」
「いいから待ってろ!!」
うしっ!これでアイツもちっとは頭冷やすだろ。さっさと買って帰るか。どうせ何もプランなんざ考えてねぇだろうからな。
「オレンジジュースでいいだろ」
一番無難な飲みもんだしな、飲めねぇ奴はいねぇはず。
さてジュース買ってきたあと、どうフラグをへし折ってやろうか・・・。さっさと帰ろうとしても、引き下がらねぇだろうしな。王様の権限使われちゃ意味ねぇからな。都合よく雨降んねぇかな・・・・。
もしくは・・・・ナンパとか?
「ねぇねぇそこのカワイ子ちゃん?今お暇ですかぁ?」
「暇だったらさ、俺たちと遊ばない?」
ん?おいおい!!んだよ運が俺に味方してんのか?こんな都合よく来るなんてなぁ!!まさかドッキリ?いやいやありえねぇな。
「・・・・いえ、連れがいますので」
「なになに?彼氏?」
「いいじゃんいいじゃん!どうせ冴えないやつだろ?」
少なくともテメェらよりはマシな人間ですけど?・・・・シスコンだけど。
「・・・本当にすみません。もうすぐ帰ってくる頃ですから・・・・」
「もうすぐ?もうすぐってどっかにいるの?」
「この子の彼氏さ~んどこですか~?・・・・・ん?」
やっべ!!目が合っちまった!!!
「おい、あれ・・・・」
「んあ?」
げっ!!ガッツリマークされちまった!!!目を逸らさねぇと・・・。
「バカ何言ってんだあんなネクラなわけあるかよ」
「だよな、いくらなんでもこの子に釣り合わねぇもんな!」
・・・言いたいこと言ってくれんじゃねぇか。確かに俺は晴臣みてぇにイケメンじゃねぇさ。けどなぁ、ネクラでもねぇだよ。
・・・・・いやいや、落ち着け。情に流されんな、何事もないように立ち去ればいいんだ。
そうすりゃアイツも俺に希望なんて―――――
「あッ―――――」
―――――ドスッ
「いだっ!!」
おいおい・・・運が味方してんじゃねぇのかよ!!んだよ、石につまずいて半ばタックルするって!!!
「ああぁ!おいてめぇ!何しやがんだ!!?」
やめてくれ、喧嘩なんざ小学校以来だぞ!?早く逃げねぇと―――――
「井久さん!」
「あぁ!!まさかこのネクラやろうが彼氏だぁ!!?」
バカ野郎!!火に油注いでどうすんだ!!!
「あ・・・あの・・・・俺は・・・・」
「もしかして目があったときビビってたの?」
「自分の彼女も助けられねぇのに彼氏気取ってんの?」
「・・・・・・・・・・・ったくよう」
「あぁ?」
「・・・だから嫌なんだよなぁ、こういうの」
「はぁ?何言ってんの?頭沸いてんの?」
「ネクラだからしょうがねぇよ」
何かねぇか?ポケットには小銭と財布と・・・・なんだこれ?
「・・・・おいテメェらリョナニーって知ってっか?」
「は?やっぱ沸いてんぞこいつ」
「さっさとどけよ―――――」
―――――シュッ
「な、・・・こいつ」
「俺はよう、ちと変質的な性格してんだよ・・・・ヘヘヘッ」
「お、おい落ち着けよ」
「カッターなんて・・・・危ないだろ?」
「何ビビってんだよ?クヒヒヒッ・・・・心配すんな、自分でも信じられねぇような悲鳴を聞かせてやっからよう・・・」
「お、おいコイツヤベェぞ・・・・・・?」
「に―――――」
「テメェの血は何色だァァァアア!!!!」
「にげろーーーー!!!」
ったく見掛け倒しじゃねぇか・・・・。
「つか、俺そんなヤベェ顔してんのか・・・?」
ただ目ェ見開いてカッターの刃を舐めただけだぜ?・・・・いてっ・・・切れちまったか?
「・・・・い、井久さん」
「あ?んだよ」
失望したか?そりゃそうだよな、助けたとはいえ見過ごそうとしたんだからな。早く現実を知って―――――
「ありがとうございますっ」
―――――ギュッ
は?・・・・・・は!?・・・・・はぁぁああ!!?
「すごく怖かったです・・・・でも助けに来てくれたときはすごく安心して・・・・・・グスッ・・・」
あ・・・あれ?
「お、おい俺はお前を助けようとしたわけじゃ―――――」
「いいんですっ!わかってますから・・・・・」
いや、わかってねぇから・・・・。
「・・・・わかってますから・・・・・・もう少し・・・・だけ・・・・・」
んだよそれ・・・、なんかマジで俺が悪いみてぇじゃねェか。
「・・・・・はぁ・・・わぁったよ。けど、落ち着くまでな?」
「・・・・・・・・・・・・・はい・・・・・・」
最高のデート日和―――――もとい、散歩日和は幕を閉じる。
その後、俺の服を涙でグショグショした日野は王様の権限を破棄した。理由は不明だが、恐らく罪悪感からだろうと思う。どうでもいいけど。
まぁ別荘に戻ったあと、晴臣が尊敬と呆れ顔が混じったような表情をしていた理由も不明だったりする。
そうそう、カッターがポケットの中にあった理由も不明だった。あとはエレーナがリョナだったことが幸いしたことを本人に伝えると、微笑んだことは言うまでもないな。
さて、そろそろ閉めるか。
俺は変態じゃない、シスコンだ!!