旅行初日。
まだ初日なんだよなぁ・・・・。美玖が妙なことを口走りやがった後なんだよなぁ・・・・・まだ。
まぁ部屋に入って荷物やらなんやらを置いて一休みしてっけど。
「悪ぃな、折角計画してくれたってのによ」
「気にするな、オレは別に最後に笑っていればそれでいいからな」
「・・・・・・ホントにいいのか?」
「どういう意味だ?」
・・・・・・ったく、んなことも分かんねぇのかよ。リア王だろうが。
「薄っぺらな笑いでもいいのかよ?」
「取り繕うという意味か?
何故、取り繕う必要があるんだ?」
「何でって・・・・・・」
片方が笑ってるってことは・・・・・・・・片方が悲しむからだろうが。
「井久、一つ聞きたいんだが?」
「何だ」
「先ほど、美玖ちゃんが『夜弥姉』がどうのと言っていたんだが?
井久はシスコンではないんだろう?」
「ああ、それは俺も疑問なんだ」
何であの場で姉ちゃんが出てくんだ。俺はシスコンじゃねぇし、姉ちゃんもブラコンじゃねぇ。むしろお互い嫌ってるってのに。
「美玖ちゃんには伝えてないのか?」
「いや、ちゃんと言ったぜ?」
「そうしたら?」
「・・・・・・・キスされた」
「なる程、そう言っていたな・・・・美玖ちゃん」
畜生・・・・・思い出したら顔が熱くなっちまう。
「しかしそれは、本人の言う『証明』では無いのか?」
「・・・・知らねぇよ、ったく」
「・・・・・・・井久も大変なんだな」
「黙れリア王・・・・・」
「しかしだな、井久。どうするんだ?」
「は?何が?」
「これはつまり、美玖ちゃんを好きかどうかの問題だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「井久はどうするんだ?」
「・・・・・・・・・」
美玖を好きかどうか。
アイツは幼馴染みで、今まで一緒にいたんだ。嫌いなわけねぇ。
でも、恋人として好きか。異性として好きかと言われりゃ――――――
「・・・・・・俺は・・・・・・」
「お食事の用意が出来ました」
「うむ、分かりました。今行きます」
そういや、もう七時じゃねぇか・・・・・・。
「井久、行こうか?」
「・・・・・・・・・・あぁ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ったく、どうすりゃいいんだ。
「なぁ、晴臣」
「ん?どうしたんだ?」
リア王のコイツに訊いても意味ねぇかな。
「・・・・・・・お前なら・・・・・・・どうすんだ?」
「ん?」
「いや、なんでもねぇよ・・・・」
一人で解決しねぇとな。
「井久、ちょっと待った」
「んあ?何だよ・・・・」
こっち振り返って何する気だよ・・・・・。気持ち悪ぃぞ。
「肩に力が入りすぎているぞ。
もう少し楽にして、周りをよく見てみたらどうだ?」
「―――――――――っ」
「気を張れば張るほど、相手にも伝わってしまうぞ?
答えを決めるのは井久自身なんだ。
―――好きに選べ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何励まされてんだ、俺。みっともねぇ・・・・・。
「ったく、カッコいいのは顔だけにしろよ。
どんだけモテてぇんだよ、このリア王が」
「・・・・・・井久」
「やっぱテメェはホモなんか?
やめろよ、俺は女が好きで女しか愛せねぇ」
「シスコンじゃねぇ、只の男なんだからよ」
苦悩。すれ違い。思い。
それらが渦巻くメンバー達の中で、二人、友情という絆を深めた。
それは歪んだものではなく、正常な、純粋な、絆だった。
「晴臣」
「どうした、井久?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「ありがとな、少し気が楽になった」
「・・・・・・そうかっ」
「おい」
「何だ、井久っ?」
「いい加減、肩から手ェ離せ」
「お、すまん」