事実は小説よりも奇なり・・・・ってのは、なかなかいい言葉かも知んねぇな。実際、身近な人間が『交通事故』っつうモンにあってんだから。世の中ってもんはホントに分かんねぇな。ったく、俺自身もわかんねぇ。
「なんで俺が位の一番に病院に駆けつけてんだ・・・・?」
親らしき人は見当たんねぇし、兄弟も親戚もいねぇ。学校側も親族に連絡ぐらいしてるだろうに。それでも来てねぇってのはどういうことだ?
まぁここでは俺が素早く駆けつけたことに疑問を抱くべきだな・・・・。
「えっと・・・・・お前・・・・誰?」
ん?誰だあいつ。親―――――ってわけではなさそうだな、若ぇし。・・・・そういや明美には兄がいたっけか?
「俺は、明美の友達です」
「友達・・・・ねぇ」
彼氏にでも見えたか?もしそうなら兄として許せねぇってか?生憎、そんな心配はいらねぇぜ。
「はぁ・・・・ったく、何事故ってんだよ・・・・金掛かんだろうが・・・・」
おいおい、自分の妹だろうが、金の心配してる暇はねぇだろ。
「あ~あ、いっそ死んでりゃ保険で金が入ったってのに!」
「病院で大声出さないほうがいいっすよ?」
不謹慎にも程があんだろ。何怪我人の前で「死」とか発言してんだ。つか、わざとらしいぞ。
「だいたい、誰が食わしてやってると思ってんだ?学費だって―――――」
「失礼っすけど、仕事は何やってんすか?」
「夜の仕事」
まぁ服装見て大方予想ついてたけどな。着崩したスーツに金髪でジャラジャラネックレスつけてりゃな。
「チッ、全部コイツが持って行っちまうのかよ・・・・・ったくいい身分だぜ!!」
「バイトとかさせないんすか?」
そんな愚痴るぐらいなら明美にも稼がせりゃいいだろ。
「バイト?あー無理無理、あいつに仕事とかできるわけねぇだろ?トロいし間抜けだし馬鹿だしよ?」
ホントにコイツが兄貴なのか?学校での明美を知らねぇのは無理ねぇけど、幾らなんでもデタラメ言い過ぎじゃねぇか?
「兄として、そんな奴を社会に出してやるわけにゃ行かねぇわ。世の為にもよ」
「一ついいっすか?」
「あ?」
「ホントにそう思ってます?」
「・・・・・は?」
言葉だけ聞きゃ、悪人に聞こえんだけどなぁ。人相は悪人に見えねぇだよなぁ。俺は別に人の顔を見てどうのこうの言えるようなスキルは持ってねぇけど、何故かコイツは悪人に見えねぇ。只の見間違えかもしれねぇけど。
「いや、なんでもねぇっす」
「と、とにかく、退院したらお仕置きだな・・・・こりゃ―――――」
「―――――ふざけるなっ!!」
・・・っ!?晴臣?胸ぐら掴んで・・・切れてんのか?お前が?つか、すげぇ剣幕。初めて見た・・・・。
「貴様っ、今何と言ったっ!!!」
ってか、美玖までいやがるし・・・・。
「今、学校なんじゃないのか・・・・?何サボってんだよ・・・・」
「それはイックンも同じでしょ?それに今はそれどころじゃないし・・・」
「お前が明美の彼氏か?」
「違う、オレは友達だ!」
「おいおい、晴臣それくらいにしろって?ここは病院―――」
「止めるな!例え井久であっても、オレは殴りかねないぞ?今ならな!?」
喧嘩もろくにした事ねぇ奴が何言ってんだ。
「んだよ?仲良くお友達ごっこか?明美も随分と図々しく育ったもんだ。
兄の俺を差し置いて」
「貴様っ!!」
「晴臣くん!!」
「・・・・・!!?」
あっぶねぇ・・・・・、コイツマジで殴ろうとしてやがった・・・・。俺が止めてなきゃ当たってたぞ?
「井久・・・・?」
「・・・ったく、ここで怪我させてもすぐ治療できるかも知んねぇけどよ。
明美にどのツラ下げて会うつもりだ?」
「・・・・イックン」
「ほら、友達の兄貴だぞ?離してやれよ?」
まぁ殴りたくなる気持ちもわからなくもねぇけどよ。時と場所を考えろ。あと、相手もな。
「チッ、せいぜいそのベットで幸せな時間でも過ごしてな?」
「・・・っ!!」
「晴臣!」
「・・・・わ、分かっている・・・・・分かっているが・・・・・」
落ち着けっての。何盛ってる動物みてぇに体が動いてんだ。にしても、わざわざ寝てる明美に向かってそんな言葉を言うなんてな。相当恨まれてんだなぁ、ドンマイ明美。
「私、もう少しここにいるけどみんなはどうするの?」
「オレは・・・・帰らせてもらう」
「ああ、テメェは帰って頭でも冷やして来い」
「イックンは?」
「俺も帰るわ。親友と二人きりの方がいいだろ?」
「・・・・・ありがと」
まぁ、ちょっとお兄さんと話つけてこねぇといけねぇってのもあんだけどな。
「じゃあな」
「うん、また明日」
夕暮れに差し掛かりつつある病室。
二つの人影は返しのないキャッチボールを繰り返していた。そんな折、もう一つの人影は病院の入口付近にあるソファで返しのあるキャッチボールを繰り広げていた。
「あー・・・・えっと、ども・・・」
「・・・またお前かよ」
「大変っすね、仕事?」
「お前に何が分かんだよ・・・・?」
「あぁ・・・・まぁ・・・なんつーか、分かるんっすよ」
「っざけんな、お前みてぇなガキに分かってたまっ―――――」
「兄妹を思う気持ち」
「・・・・・・は・・?」
「もし、俺が虐待してる親だとしたら、他の人にそのことを知られないようにするんすよね」
「・・・・・何が言いてぇんだ・・・?」
「何隠してんすか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「明美の親も来てないですし、親戚すら居ないんすよ?」
「・・・・・・・・・・・」
「どうなってんすか?」
「・・・・・・・・っ、・・・」
「俺、あんま人の事情に首突っ込むのはしたくないんすけど、こんな状況なんで知っておく必要があると思うんすよね?」
「・・・・お、親は・・・・死んだよ」
「・・・・・・」
「親族がいねぇのは・・・・・誰も連絡する奴がいねぇからだ・・・俺以外にな・・・」
「なんで言わないんすか?」
「・・・言えるわけねぇだろ・・・?虐待してんだぜ・・・?」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・正直・・・なんで、こうなったのか・・・・わかんねぇんだよ・・・・。
気づいたら・・・手ぇ挙げてて・・・・・そんであいつ・・・謝ってんだぜ・・・・?
ごめんなさいって―――――
普通、謝るのは手を挙げた俺の方だってのに・・・・」
「でもそこで俺は思ったんだ。二度と兄貴に会いたくなくなるぐらいに、嫌な思いをさせてやろうって・・・・・」
「でも、明美は何も変わらなかったんすか・・・・」
「あいつが成長していくたびに・・・気持ちまでもが大人になっていって・・・・気遣うようになっていきやがったんだ・・・・・。
わかるか!?表に出さない程度に一歩後ろに引いて見守られる気持ちが!?」
「・・・・っ・・・・・」
「あなたは忙しいから、しょうがないから、っつって生易しく見守られ続けて、俺
がどれだけ殴ろうとも、どれだけ罵ろうとも、明美は・・・・嫌な顔一つしねぇ・・・・・・・」
「やめようとは思わなかったんすか?」
「思った・・・・思ったけどさ・・・・ダメなんだ・・・・・俺なんかと居ちゃ・・・・。
あいつは・・・・俺よりも幸せになるべきなんだ・・・・こんな汚れ切った俺なんかより・・・・・」
「でも、明美は―――――」
「分かってる・・・・あいつは俺と一緒に幸せになるつもりでいる。
自分と同じくらい、それ以上に幸せになることを望んでる・・・・・。
けど、俺はここからの巻き返しなんてありえねぇくらいに堕ちてんだ、幸せなん
て不可能だ」
「・・・・・なんとか・・・ならないんすか?」
「それをするのはお前らの仕事だろ・・・・。いや、ここは一つ頼みてぇんだ?」
「・・・・・・・・・・」
「友達の中にいたあのイケメン。アイツの所に明美を居させてやってくれねぇか?
」
「・・・イケメンって・・・・晴臣か・・・?」
「あいつは金を持ってそうな顔をしてやがった。夜の仕事してっとそういうのがわかるようになんだよ・・・・・嫌な能力身につけちまったけどよ・・・・・なぁ、頼む!!アイツの所に明美を―――――」
「・・・・それはともかく、明美にはどう説明するんすか?」
「・・・・・っ・・・・」
「多分、冗談抜きで明美は兄と一緒に住むって言いますよ?」
「・・・それについては考えてある・・・・だから・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・っ・・・・・・」
「左腕と右足の打撲で・・・確か二ヶ月だっけか・・・・?」
「・・・・?」
「何とかその間に話ぐらいつけとくんで、入院費とかその他もろもろ、お願いしま
すよ?」
「・・・・・・・・ありがとうっ!!」
さて・・・・これからどうすっかだな。
二ヶ月。俺は晴臣のとこに明美を連れてく手立てを考えねぇと。
もし、二人をくっつけちまうとあいつ(エレーナ)が殺人起こしそうだしな・・・・。
・・・・・どうしたもんか・・・・。